18、絶望の流れる河・・・Kの本領。
18、絶望の流れる河・・・Kの本領。
「はっ!!」
ミュウの投げた三日月型のブーメラン“ムーンワッシャー”が、離れた先のオークを倒して戻る。 受け取ったミュウは、オリビアを背にして周りを窺った。
森に木々が、サイクロプスが倒された事で無残に何本も薙倒されて広い切れ間を生み出している。 Kの言った通り、Kの倒したモンスターの死体に違うモンスターが腹を満たす為に集まって来ていた。
「えいっ!! たあっ!!」
ポリアが地獄の番犬ヘルバウンドの後ろ足に斬りかかり、ヘルバウンドに炎を吐かせない様にとマルヴェリータが飛礫を生み出してぶつける。
「どおおりゃ!!」
ゲイラーがヘルバウンドの土手ッ腹に大剣で斬り込めば、ダグラスも顔正面から一撃必殺で頭を狙いに行く。
だが、ひとたびヘルバウンドが暴れてしまえば、皆は警戒して間合いを計らないと噛まれそうになったり、蹴飛ばさそうになったり。
Kが、昨日の朝に南の祠で瞬殺した黒い象の様な犬のモンスターは、ポリア達では総出で立ち向かって互角である。
オリビアは、離れた所で襲い来るモンスターの屍の山を築くKから、視線を外せずにいた。
オウガ・ヘルバウンド、キマイラ、黒い一角馬のドレイカクコーン他。 龍の種類でドラコエディアよりずっと大きく凶悪な、“ゲルドレックス”と云う赤い鱗をしたドラゴンですらも、Kの前には成す術も無いままに斬り倒される。
自分達が驚く程に苦戦して、戦う事すら躊躇われるモンスターを一呼吸の間も無く倒されるのは、信じ難い光景だ。
「ミュウ・・・彼は神の化身でしょうか・・・」
モンスターより、Kに恐れを抱く思いのオリビアは、冷汗に額を濡らす。
ミュウも、周りを警戒しながら。
「私達、世界を股に駆ける自信を失いそうね。 あんなに強いのに、名前が知られて無いなんて有り得ない。 でも、あの若さであんなに強い冒険者なんて聞いたことが無いわ」
これが、Kの最大の謎である。
「神聖なるフィリアーナ様の加護よ~、私の仲間を守る力をくださいな~」
システィアナが、杖を手に念じれば。 ヘルバウンドと戦うポリア、ゲイラー、ダグラスの体に聖なる白い光りが降り注ぐ。
Kは、遠めから。
「それ。 守りの祝福がモンスターの攻撃のダメージを軽減するぞ。 三人で、早く倒してみな」
と、傍観体勢で言う。
ポリアもゲイラーもダグラスも、全力でヘルバウンドに斬りかかった。
ポリアが、ヘルバウンドのライオンの尻尾のような先端の赤い尾を斬り、ダグラスとゲイラーが必死でヘルバウンドの頭に剣を突きたてて、漸く倒した。
Kは、見ていて。
「そうだ。 戦う時にダメージを考えるようでは甘い。 一撃一撃が全てだ、もう皆の実力は、ヘルバウンドなら倒せる処に来ている。 後は、如何に恐れを振り払い、集中するかだ」
「はあ、はあ・・・」
ポリア達三人は、お互いを見合う。 ポリアが一番息が上がっているが。 ゲイラーやダグラスも真剣そのもので、顔に汗を浮かべている。
Kは、辺りのモンスターの気配が消えたのを感じて、
「さて、行こうか。 この先が問題の“屍渓谷”だ」
ポリアは、マルヴェリータやシスティアナが集まって来たのに合わせてKの元に。
Kは、先頭に立ってまた森に分け入って行くのだが・・・・。
森に入って、大して歩かないうちに、辺りに薄っすらと靄が掛かり出した。
オリビアは、向かう先から怨念の放つ絶望を含んだ瘴気の波動を感じ始めて。
「皆さん、そろそろ近いですよ」
と。
ポリアも、マルヴェリータなども、生唾を飲んで緊張した。
だが、Kは、いきなり歩みを止めると、振り返る。
オリビアは、何かあったのかと緊張して。
「どうしたの?」
と訪ね返すと。
Kは、オリビアと、システィアナを見て。
「いいか、屍渓谷には怨念が渦巻く。 普通なら、僧侶は立ち入るべきではない。 だが、二人居るなら、アレが使えるだろう? 戦う必要は無い。 皆を守りながら後を着いて来い」
その言葉にオリビアはハッとして、Kが二人も僧侶を連れた訳が解った。
システィアナは、右手を挙げて。
「は~い、“レクイエムソング”の契りをつかいま~す」
オリビアは、システィアナに。
「解ってたの?」
システィアナは、ニッコリと。
「は~い」
オリビアは、歩き出したKの後ろを見て。
「では、行きましょうか。 皆さん、私とシスティアナさんの傍から離れてはいけませんよ」
と、言う。
ミュウは、意味が解らずに。
「オリビア・・・何のこと?」
歩き出すオリビアは、説明をしだした。
僧侶は、神を信仰する代わりに加護を得る。 一つは、神聖魔法。 二つは、歌。 三つは、怨霊や死霊などのアンデットモンスターやゴーストに対する鋭い感知能力。
今回、Kが言うのは二つ目の、歌。
歌と言っても、種類もそれぞれ。 信仰する神によって多種に分かれる。 どの僧侶に共通するのは、レクイエム(鎮魂歌)なのだが。 この鎮魂歌という歌の使用用途は、使い方次第で様々な応用が利くのだ。
基本は、浄化したい怨念の事を思って歌うと、ゴーストやアンデットモンスターを塵にして成仏させる。
しかし、仲間を思い守る気持ちで歌えば、怨念の波動を寄せ付けない守りの障壁を張ることも可能なのだ。
オリビア、システィアナが、声に出して鎮魂歌を歌いだした。 神に仲間の無事を祈り、博愛の精神を保ち続けなければならない。 二人の柔らかく優しい歌声が響くと、間近に居るポリア達の周りを白く光るベールのような半透明のカーテンが包み出した。
Kは、歩きながら。
「いいか。 無条件で俺を信じろ。 でなければ、レクイエムカーテンは消滅するぞ。 集まるモンスターは、全て俺が倒す」
周りを包む靄は何時の間にか霧に代わり、深く濃くなる霧の帳は視界を遮った・・・。 もう、カーテンに包まれる一行は、Kの背中が見えない。 オリビア、マルヴェリータ、システィアナの三人が、感じる波動でKを捕らえているだけだ。
そして・・・・ついに。
“カラっ”・“パキっ”っと、乾いた木の枝でも踏む音がしたと思ったポリアが下を向くと・・・・。
「あ゛っ!!!!!」
思わず、大声が。
ダグラスも下を向いて、
「げっ!!! ガ・・・ガガガガガガガ・・・・骸骨だっ!!!!」
そう、皆が歩いている足の下は、人のしゃれこうべ。 頭蓋骨や肋骨の集まりが敷き詰められている。
するとKの声が飛んで来る。
「黙れっ!!!!!!! 僧侶の集中を邪魔するな馬鹿者っ!!!!!!!」
その鋭い声に、
「ゴメンっ」
「はっ、ハイっ!!!!」
二人は謝る。
ゲイラーとミュウは、パッとシスティアナとオリビアをそれぞれ見た。
笑顔で歌う二人。 優しく、慈しむ気持ちに必死ならしい。 額には冷汗が流れ、掲げている杖を持つ手が震えていた。
ゲイラーは、グッと真剣にみて。
「システィ、大丈夫だ。 俺もポリアも居る。 システィなら、必ず大丈夫だ。 俺は信じるぞ」
マルヴェリータも、
「そうね、Kが一緒だもの。 大丈夫ね。 私もシスティを信じてるわよ」
システィアナが頷いた。 汗に濡れる顔が蒼褪めているようにも見えたが。 その声に笑顔が自然になって、生色がみるみる甦る。
信じる心は、僧侶の心の絆。 愛する心は、僧侶の精神の支柱。
ポリアも、オリビアに。
「お腹の赤ちゃん守って、サーウェルスを助けるのよ。 私も、その事を信じて二人を信じるわ」
ミュウも、オリビアに、
「オリビア、サーウェルスを迎えに行こう。 私は、死んでもオリビアを信じる。 貴女なら、絶対に出来る」
オリビアの心にサーウェルスの顔が浮べば、愛の想いが溢れて自然と震えが止まって来た。
Kは、前から声だけで。
「そうだ、信じろ。 守りたい者、助けたい者。 いいか、“生は死よりも強い”。 立ち向かう想い、慈しむ心、愛する絆。 信じる力は、前進して蟠り滞る闇も怨念も寄せ付けない。 光りとは、諦めぬ者が見る意思だ。 希望とは、絶望の中で誓う信念だ」
力強い声が響いた。
ポリアは、薄っすらと霧が晴れだして行く中で、前のKを見つけた。
「あ・・あああ・・・ウソ・・・・煌いて・・・る」
ダグラスも、見た。 全員が見た。 あたり一面の広がる骨の骸の河の上に、金色の煌きを足元から滔滔と緩やかに湧き上がらせて。 右手におぞましき亡霊のモンスターの顔を鷲掴み。 左手には短剣で刺したレヴナントを引き摺りながら消滅させるKの姿が・・・。
ゲイラーは、
「な・何でだ? 僧侶でも無いのに・・・アンデットやゴーストを消滅させられるのかっ?!!」
そう、Kの体を取り巻く金色のオーラに触れたアンデットやゴーストなどのモンスターは、燃やされた灰のように塵に変わって行く。
しかし・・・Kの前方に、様々な種類のモンスターが何百と集まっていた。
「なんて・・・・なんて数よっ!!」
ミュウは恐れ戦き怯え上がった。
見て解るモンスターも居る。 紅い炎に包まれた亡霊・・・前の仕事でクォシカを醜い蛇のモンスターに変えた“ジェノサイス・ホロウ”であろう。 黒ずんだ光り中に、仄蒼い亡霊で苦しむ人の顔が憎憎しい様に変化する骸の姿をしているのが“アビレイス・インフェルノ”
そして・・・。
馬の歩く音が響いた。 首の無い黒毛の馬に、高貴な者が好む刺繍派手やかな丈の長い上着を着て、白いスカーフをネクタイ代わりに巻く貴族の将校が跨っている。 しかし・・・・首が無い。 しかも、服を着る肉体はどす黒いオーラを纏った骸なのだ。 右手には、刃渡りの長い長刀が握られ、左手には・・・・。
ポリアは、そのモンスターを凝視出来ない。 怖くて怖くて、左手に抱えるモンスターの頭は、干からびていながらも狂気を渦巻くギラギラした瞳を持って居る。
ダグラスは、立ち竦む足の震えを堪えながら。
「あ・・アレが、噂の“デュラハーン・ロード”(首なし公爵)・・・恐えぇ・・・う・動けねぇ・・・」
流石は、死霊・亡霊モンスターの最強の中の最強だ。 誰も、動けない。 体に暗黒の恐ろしいオーラを感じる。 システィアナとオリビアのレクイエムベールが無ければ、もう発狂しているだろう。
オリビアも。
(なんて夥しい数と恐ろしいオーラなの・・・・声が・・・出無くなりそう・・・アノ人のオーラが・・・私達を・・・守ってる・・・)
そう、オリビアとシスティアナは解る。 Kの体から溢れている金色に煌くオーラが、自分達とモンスターの狭間で流れて来る暗黒のオーラを緩和しているのだ。
Kは、モンスターの大群にも恐れていない。
「おうおう、無駄に集まってるじゃないか・・・そんなに滅びたいか?」
と、口元をニヤつかせる。
曇る空と垂れ込める霧でこの渓谷全体が暗い印象すら受ける。 古代戦争の再来すら彷彿とさせそうな只ならぬ気配が辺りに満ち始めていた。
刹那、デュラハーンロードの長い剣が振りあがる。 いきなり、紅い血の黒ずんだようなスケルトンや、真っ黒い血肉の腐りながらもこびり付いたスケルトン。 青い皮膚のゾンビであるレヴナントが何十体・・・いや百体以上を超えて進撃し出したではないか。
だが此処で、遂にゲイラーもポリアも皆、Kの本領の片鱗を垣間見た。
パッと消えたKが、先頭のモンスター達の群れに立ちはだかった瞬間、小気味良い破裂音が皿を割れるかのように鳴り響く。 四・五体のスケルトン達が頭蓋骨を破裂させて、金色のオーラに首の骨から侵食されて塵に変わる。
「すげえ!!!」
ダグラスが思わず声を上げた。
Kの振り込む拳が見えないが、当たっているのであろう。 レヴナント数体が、土手ッ腹を金色のオーラに突き抜かれてぶつかるように飛ばされた。 空中で、全て塵に変わる。
もう、一騎当千などと云う次元では無い。 Kが駆け抜けて、数十体のモンスターが次々と塵に散れば、引き抜いた剣から放たれた金色のオーラを纏った衝撃波がモンスター達をぶっ飛ばしながらも塵に変え。 止め様と立ちふさがったデュラハーン・ロードと似た姿で、騎士の様な甲冑姿の“デュラハーン”にぶつかった瞬間に、辺りのモンスターを巻き込んで落雷が落ちたかのように光を天に巻き上げてモンスター達を消滅させてしまった。
もはや、成す術無く倒されるのはモンスターであって、誰もその絶対無比の力が炸裂する戦い方に声など出ない。
Kが姿を消して、何体か居るアビレイス・インフェルノとジェノサイス・ホロウの間にいきなり現れた上に、
「滅しな」
と、言ったのと同時に煌くオーラに体や頭を撃ち抜かれて消滅してしまう。 もう、此処まででモンスターの群れの半分は消え去った。
Kは、辺りを見回して。
「コラ、全滅したいだろう? どいつから消えたいか? 前に出ろ」
ミュウは、見ている中でモンスターがKに向かうのを躊躇しているかに見える。
「凄いわ・・・モンスターが躊躇ってる。 初めて見たわ・・・」
ゲイラーも、本音で。
「二度と見れない・・・かもな・・・。 こんな現実・・・」
“カシャンカシャン”と・・・。 なんと、ある紅いスケルトンが後退りを。 だが、その瞬間に、Kはフワリと消えた。
そして、
「おい、逃げんのか?」
と、その紅いスケルトン、“ブラッディー・ロア”の肩に手を回した。
“カクン”と音を出して横を向いた紅いスケルトンの左肩から、煌くオーラが侵食して行く。 前に歩み出しながら激しく苦しんで倒れて、紅いスケルトンは塵に・・・。
何より見ている皆に信じられないのは、Kの体に湧く煌くオーラが、弱まるどころかどんどん強く煌く事である。 丸で、強い金色の光りを放つ火の粉が舞い上がる様だ。
さて。 モンスターの中で、腐った血の色をした肉の塊が浮いている。 大きさは、大型のブタぐらいなのだが、その体の表面には苦しむ阿鼻叫喚に悶える人の顔が無数に浮かび上がる。 “レギオン”・・・恐るべきモンスターの一種で、長年存在し続けたレギオンは、最強の死霊と同じく、人の命を瞬時に奪う“デットエンド”(死の訪れ)と云う呪いを使える。 前に、クォシカをモンスターに変えたアデオロシュが死に際に使った死神召喚の邪術だ。
「あ゛」
ポリア達は、声を上げたり。 息を呑んだり・・・。
レギオンやアビレイス・インフェルノやジェノサイス・ホロウが一斉にあの邪術を唱え始めたのだから。
しかし、Kは、ユラユラと立っているだけ。 亡霊達が大きく開いた口より、大鎌を携えたズタボロのマントを着た骸骨が次々と現れる。
―キエエエエ!!!!―
十数体は召喚されたか。 気味悪い奇声を上げて死神達は群れてKに襲い掛かった。
「ケーーーーーーイっ!!!!!!」
動かないままのKだから。 驚いたポリアの声が響き渡った。
大鎌がKに振り込まれる。 死神の大鎌は、何も斬れない。 しかし・・・命の灯火だけが例外なのだ・・・。
ポリア達が見張る視界の中で、Kの体を大鎌が幾つも通った。
一瞬、歌う声すら止んだ。 全ての時間が停滞したように思えるのだが・・・。
「おい、インチキ手品師か?」
Kは、その死神達を見回して声を出す。
「あ゛・・・生きてる」
信じられない一同。
「あ~・・・」
オリビアもシスティアナも、驚きつつも歌を続ける。
Kは、高笑いすらして、
「雑魚が寄り集まって、骨の寄り合いか? 暇つぶしにもならねえな~。 そろそろ、目障りだよ・・・お前等」
瞬間、Kの体から一瞬だけ爆発的にオーラが広がって、周りに集まった死神達を滅ぼした。
―ナニモノダ・・・キサマ・・・―
くぐもった不気味な声で、デュラハーン・ロードの左手の顔が喋った。
Kは、不敵に笑って。
「テメエ等を滅ぼす為に参上した。 ホンモノの・・・死神さ」
近くのアビレイス・インフェルノが、いきなり横に現れたKに驚いた。 しかし、気付いた瞬間に横腹を左から右にオーラが突き抜けて消滅する。
Kに群がる前に、暗黒魔法を唱える前に、モンスターは倒された。
そして、前が見えない程に居たモンスターは、デュラハーン・ロードを残すのみとなったのである。 あれだけ居たモンスターが、つかの間の一瞬で滅び去った。
―一騎打チ・・・カ。 ソレモヨカロウ―
デュラハーン・ロードの抱える左手の顔が喋る。
Kは、コートを靡かせて対峙し。
「御託、吐く身分かよ」
―笑止ッ!!―
遂に、デュラハーン・ロードが動き出す。 首の無い馬は、正確に突き進んで素早くKの面前に走り込むと。
―死ネッ!!―
と、刃渡り三メートルを超す剣がKに突き込まれた。 が、一瞬手前でフッとKは姿を消す。
―ムッ―
デュラハーン・ロードは、小刻みなステップを馬に踏ませて右に跳んで、パッと現れたKがデュラハーン・ロードの居た場所に現れた。
「避けたああっ!!!」
驚くダグラス。
しかし、Kとデュラハーン・ロードはそのまま動かなかった。
一瞬どうしたのかと思うのだが・・・。 何か違う違和感に気付いたのは、ミュウだ。
「も・ももも・・持ってるっ!!!! アノ人・・・首を・・・」
そう、デュラハーン・ロードの首がロードの左手から、Kの左手に移動していた。
“カタカタカタカタカタカタカタ・・・・・・・・・・”。 Kの手に握られた、頭の毛を鷲掴み状態のデュラハーン・ロードの顔が、震えてか歯を噛み鳴らしている。
Kは、その顔に向かって、持ち下げながらに。
「おやおや、地獄に聞こえた死神公爵の異名。 嘘っぱちか? ビビッても、チビれないな~。 体が骨だものな~」
―ハナ・・ギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛−−−−−−ッ!!!!!!!!!!!―
いきなり、魂を握り潰されそうな響きの絶叫が湧き上がった。
「きゃ・・あっ・・あ~」
驚いたオリビアは、一瞬歌が中断しそうになり、システィアナは恐くて涙がポタポタと零れる。
ポリアやゲイラー達も、声に慄きビクンとして屈んだ程だ。
Kの指が、ジリジリと減り込むようにデュラハーン・ロードの皮と骨だけの頭に食い込んで行く。 煌く光がデュラハーン・ロードの皮膚を焦がすように白い煙を上げて。 首が弱点なのか、体も馬も動かないで震えているようだ。
Kは、口元をニヤニヤさせて。
「頭と体が離れ離れとは可愛そうな。 くっ付けてやろうかぁぁぁーーーーっ!!!!」
そう大声を上げて、ポーンと馬の背中に飛び上がった。 首なし馬に跨る体の後ろに立つKは、一気に左手に煌くオーラをギラギラ光らせながら、
「くっつけーーーっ!!!!」
デュラハーン・ロードの顔は、怯えた絶叫を上げて。
―ヤアアアアメエエエエレエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!―
デュラハーン・ロードの首筋の所に、Kがグニャリと顔を叩き付けた瞬間。 金色に煌いたオーラがスパークするようにデュラハーン・ロードの上から下へと貫いた。 Kの姿は、スッと消えた刹那・・・・。 真下の骨を巻き上げて爆発した様な光りの渦が天に突き抜けて。 デュラハーン・ロードの姿は塵と消えたのである。
そして、辺りは不気味な静寂と霧の垂れ込めたされこうべだらけの風景と変わった。
あのモンスターの群れが・・・・消滅したのである。
Kは、オリビアの方に向かって、
「今が渡り時だ。 着いて来い」
と、歩き出した。
オリビアは、モンスターに怯えるのか、それともKに怯えるのか解らない震えと冷汗を背筋に覚えつつ歩き出した。
ゲイラーは首を左右に振って。
「もう、絶対逆らわない・・・死にたくネエ・・・・」
ダグラスは、引き攣った笑い顔で。
「あ・・あははは・・・凄いじゃんか・・・」
ポリアも、流石にKの恐ろしさが身に滲みた。
(モンスターに・・・同情したくさせる冒険者って・・・アリ?)
間違っても、Kに喧嘩などは売りたくない。
全員、そんな感想を抱いた。
ミュウは、朝に食って掛かっただけに、自分の身の程をモンスターで知った。
そして、その渓谷を歩いてどの位だろうか、随分歩いたような・・・・。 以外に進まなかったような感じのままに。 ポンといきなり霧が晴れた。
「うおっ」
「わあっ」
ゲイラーと、ポリアは驚いて声を上げた。 左に切り立った絶壁。 右には、雲すら見下ろせる崖。 歩ける幅は人二人ぐらいの岩肌の露出した山道であった。
「うひょ~・・・落ちたら死ぬな・・・」
ダグラスは、崖の下に流れる雲を見る。
「あれ・・・ケイが・・・・居ない」
ポリアは、オリビアの先に出て歩いた。 もう、オリビアも歌を止めている。
歩いて行くと、直ぐに緩やかなカーブの所、左に祠の入り口が開いていた。
「在ったわ、こっち・・」
ゲイラーは、なまじ体がデカイだけに道幅が矢鱈に狭く感じて、右の崖が奈落の底に見えてくる。
「ち・・・高所はキライだ・・・」
と、呻いた。 高所が苦手な彼である。
マルヴェリータは、Kから預かった光りの小石をまた光らせて祠の中に入って行く。
蒼い洞窟の中で、Kが立っている足元に紅い鎧を着た男がボロクソになって倒れていた。
「サーウェルスっ!!!!」
オリビアが驚いて走り寄った。
Kは、
「生きてる。 随分な怪我で体中に黴菌が回ってるが。 助かるな・・・」
オリビアは、全身全霊を込めて癒しの魔法を唱えた。 システィアナも、加わった。
白い純白の光りが照らす顔。 かなりの整った顔立ち、ブラウンカラーの髪は長くて首まで伸びる。 Kより頭半分高い背丈の若者・・・。 これが、グランディス・レイブンのリーダーでゲイラーと同じ大剣遣いのサーウェルスだ。
Kは、傷口の消毒を急ぎ、システィアナとオリビアが塞いで行く。 Kの言う通り、オリビアの魔法による傷口の塞がる速さは早い。 ものの四半刻(三十分)程か。 サーウェルスの怪我の手当ては終わった。
Kは、ゲイラーに。
「このバカたれを担でくれ。 今は昼過ぎだから、戻れば夕方には戻れる」
「おう、解った」
怪力のゲイラーだ。 鎧と装備でかなりの重量にはなるが、サーウェルスを担いで歩ける。
Kは、汚れた顔のサーウェルスを見て。
「運のいい男だ。 俺なら引き摺って、途中で捨ててるかもな」
ポリアは、困った顔でオリビアを見ながら。
「捨てたら、マズイでしょ・・・」
「フン・・・」
戻りは、モンスターも少なくて楽であった。 夕方には、サーウェルスを連れて一行はマクムス達の待つ祠に戻る。
殆ど無傷で戻った一同に、残っていた面々は拍子抜けですらあった。
どうも、騎龍です^^
今回は、17、18話の掲載です^^
もう、K編も残して二・三話になりました^^
後少し、Kとお付き合いして下さい^^
ご愛読ありがとう御座います^人^
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