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17、愛の愚行とKの選択
17、愛の愚行とKの選択




外が暗く成り掛けていた。

マクムス・システィアナ・ハクレイ・セレイドは、祠の中で怪我人達の治療に追われていた。 Kの言った通り。 チーム“グランディス・レイブン”の男二人。 剣士のオリバー。 大戦斧遣いの戦士ダイクスは死に掛けだった。 肉体の骨が十数箇所折られて、黴菌が傷口から入りもう全身が青黒く浮腫んでいた。

「本当にケイの言う通りだわ・・・。 薬も大して持ち合わせて居ないのを、オリビアが一人で保たせていたみたい・・・」

怪我の治療に立ち会ったポリアが、戻って来たゲイラーに言った。

「そうか・・・生きるといいがな・・・」

ポリアは、心配そうな顔で。

「ゲイラー、ケイは居なかったのね?」

疲れの色が強いゲイラーは、頷いた。

そこに、イクシオが。

「大丈夫さ、あんな強えぇ~冒険者が殺される訳無い。 多分、暇つぶししてるのさ」

どっかりと座り、怪我の治療を終えて水をのんでいるイクシオ。 テンガロンハットは被ったままに、上着のベストなどを脱いで、下着のシャツ姿だ。

ポリアは、黙って自分の疲れも省みずにシスティアナの手伝いに行こうとした時だ。

「おい~ス。 暇つぶしから帰ったぜ」

Kの声に、起きている全員が祠の入り口を見た。

「あ・・生きてた・・・」

ゲイラーが自分の前を歩く包帯男を驚きの眼差しで見た。

ポリアは、Kに立ち寄り。 Kの全身を見て。

「無事・・・みたいね」

Kは、皮の小袋をポリアに差出して。

「ホラ」

ポリアは、小袋を見て。

「何?」

「村の依頼の草。 薬草だ」

「あ・・・」

受け取ったポリア。

ゲイラーは、驚いて。

「探してたのか?」

「当たり前だ。 暗くなる前の方がいいからな」

ボロボロの姿のボンドスが、小声で。

「スゲエ・・・すっかり忘れてたぜ」

Kは、周りを見て。

「どうやら、全員生きてるみたいだな」

ゲイラーは、頷きながらも。

「ああ、だが一人だけ居ない。 リーダーのサーウェルスだ」

Kは、口元を歪ませて。

「阿呆が、何所に行ったんだ?」

その時だ。

「も・・もっと、奥・・です」

いきなり、声が。

手当てをする以外の者が、オリビアを見た。

ポリア、ゲイラーが彼女の前に行き、屈んで。 先にゲイラーが。

「奥? 更に先の祠かよ?」

頷くオリビア。

ポリアは、驚いて。

「何で?」

「わ・・私達を・・祠に逃がすため・・・巨人に・・・襲われたの・・」

ポリアは、ゲイラーを見て。

「サイクロプスよ・・・サーウェルス達なら、オウガは倒せる」

「ああ、恐らく・・・」

ゲイラーも同感だった。

オリビアは、絞るような声で。

「サーウェルスが・・助からない・・なら・・私・は・・此処に・・の・残り・・・ます」

ゲイラーは、睨むぐらいの顔で。

「ふざけるなっ。 アンタ等のお陰で、俺等も、斡旋所のマスターのオヤジさんも、マクムス様もどれだけ苦労と心配と迷惑掛けて此処まで来たと思ってるんだっ!」

オリビアは、真剣な眼差しで・・。

「イヤ・・・そんな・・の・・あい・・してるも・・の・・」

実はポリアは、倒れていた女性のケアをシスティアナとした。 予想通り、寝たきりの女性二人は、下着が血で汚れていた。 だが、オリビアはそうでもない。

だから、ピンと来た。

「ねえ、オリビアさん。 もしかして・・・お腹に子供居るの?」

すると、オリビアの顔が驚いた顔に変わった。 そして、横を向く。

(やっぱり・・・なんか、お腹の膨らみがヘンに思ったのよ・・・)

目立つ膨らみでは決してない。 ほんの少しなのだ。

「イヤ・・・サーウェルスと・・結婚するって・・決めたんだもの・・・」

ゲイラーは、怒った顔で。

「ふざけるなっ、男の為に・・・。 アンタ、自分と子供の命も捨てるのかよっ!!」

オリビアは、涙を浮かべて震えながら横を向くまま。

ポリアも。

「そうよ。 お腹の子供・・・絶対にマスターも大切にするわ。 此処で二人を置いて来たら、マスター・・ううん。 お父さんは気が狂うわよ」

すると・・・オリビアは啜り泣きながらサーウェルスの事を悲しみ出す。

ポリアも、ゲイラーもどうしていいか解らなくなった。

その時だ。

「クックッ・・・アハハハハハ」

いきなり、Kが笑い出した。

起きている全員が、腕組して笑う包帯男を見る。

「ケイ・・・」

ポリアが、困った顔で見ると。

Kは、オリビアの前に来て。

「随分とふざけたチームだな。 仕事は中途半端、人の迷惑を顧みず。 村人を強引に道案内にした上に瀕死にしてほったらかし。 挙句の果てに親に迷惑掛けて、冒険者を借り出させる事態を招いて。 その上止めに、誰か居ないと死ぬってか? 気違いだ、気違い。 片腹いてえな」

オリビアは、睨む瞳でKを見た。

Kは、呆れ笑いで。

「おうおう、叱られたら睨むってか。 僧侶の風上には置けないね。 このバカ娘、父親が自殺覚悟で居るって知らねえらしい。 そうだな、コイツを置いて行って一家心中でもしてもらうか」

ポリア達は、その言い方に驚いた。 ゲイラーも、流石に悪い印象を持ったが・・・。

「おお・・・おとう・・さん・・・うう・・・ううう・・・」

オリビアが、本当に泣き出した。 自分の父親の事だ、誰より自分が良く解る。 このポリア達を、どんな思いで派遣したか・・・。

すると、Kは、オリビアを見下して。

「いいだろう。 明日、俺が捜しに行ってやる」

起きている全員が、Kを見た。

ポリアは、驚いてKに近寄って。

「本気なの?」

涙眼のオリビアは、Kを見上げた。

Kは、キラリと瞳を細めて光らせると。

「条件は一つ。 オリビア、明日はキミにも着いて来て貰う」

ゲイラーが、弱ったオリビアを見てからまたKを見て。

「無理じゃないか?」

すると、Kは。

「だから、だ。 この山がどんな所か。 どれだけ恐ろしいか、腕も乏しいテメエ等の軽はずみの根性の意味を解らせてやる。 ポリアやゲイラーが、どれだけ命張ったか。 今度は、このバカ娘が命懸けて知る番だ」

ポリアは、立てもしないオリビアを指差して。

「こんな状態じゃ無理よ・・・明日で立る体になんか成らないわよ・・・」

Kは、香水や薬品を入れる小瓶を腰のベルトに着けた皮製の入れ物から取り出した。

「三本ある。 一つは、オリビア。 一つはマルヴェリータ。 もう一つは、グランディスの一番健康状態のいい奴に飲ませろ」

ポリアは、小瓶を受け取って。

「これは?」

「エリクサー(神秘の秘薬)の手前のものに、代用物で類似させた薬さ。 飲ませて今夜を寝かせれば明日にはかなり良くなる。 マルヴェリータは、今回はジョイスに手土産を持たせる為の見物人代わりだな」

Kは軽く笑って、水を飲みに行った。

ゲイラーは、ポリアと見合って。

「飲ますのか?」

「しか・・・ないわ。 リーダーのケイの考えだもの・・・それに」

ポリアは、オリビアを見た。

オリビアも、ポリアを見ている。

「死ぬなんて命を懸けるなら、その覚悟と私達の苦労を確かに見てもらいたいわ。 なによりも、勝手な行動でこの事態を招いた人達に。 ケイ、遂に本気になったのよ・・・。 明日のケイは・・・多分は本当のバケモノになるわ・・・。 この仕事、捨てる気なんてさらさら無いわよ・・」

ゲイラーは、今まででも十分凄いのに。

「今・・以上ってか?」

ダグラスも、近くで二人を見てから、Kを見て。

「俺も・・・行っていいのかな?」

と。

Kは、奥の水飲み場から戻ると。 ざっと場を見回して。

「今から伝えておく。 寝てるのには、後から誰か伝えてくれ」

マクムスや、寝ているイルガも向いた。

「ポリア、ゲイラー、ダグラス、マルヴェリータ、システィアナは、明日俺と行動を共にしてもらう。 ヘルダー、イクシオ、マクムス、セレイド、レックは、明日で我々が戻らない場合。 明後日の朝には、動けるようになるであろう全員を連れて山を降りる役目を言い渡す。 後で、レックにマクムスとイクシオとヘルダーの四人には、帰り道を教えておく。 以上」

全員が、Kを見ていた。

イクシオが、

「引き受けた。 明日中に帰ってきてくれ。 俺は、リーダーに従う」

「俺もだ」

ボンドスが。

ヘルダーは、Kの前に出て軽く頭を下げた。

マクムスは、難しい顔ながら。

「解りました。 承りました」

システィアナは、疲れた顔を嬉しそうに。

「わ~い、つれていって~もらえます~」

ポリアは、システィアナが随分とKを信じていると思った。 システィアナとて、事態はしっかり把握はしているハズだから。

そして、自分も・・・。

「解ったわ・・・明日は、ケイとね」

頷くKは。

「ああ、屍渓谷を横断する。 ポリア、考えろ」

ポリアは、ギョッとした。

「マジ?」

Kは、短く。

「二度も言わせるな。 あと、バカ娘にも説明しておけ。 いきなりで驚かれて、流産されてもの困る」

ゲイラーは、意味が解っただけに。

「おいっ、なら別のっ・・・」

と、言った声をポリアが遮った。

「いいから、もう決定よ」

ゲイラーは、酷く困惑する。

Kは、奥の壁の近くで、焚き火の前に座った。 そして、一人黙る。

ポリアは、システィアナと二人で、オリビアとマルヴェリータを起こして薬を飲ませた。 そして、ヤキモキする男性達を他所に、“グランディス・レイヴン”の面子を見た。

(先ず、瀕死だった二人は無理ね・・・・。 “考えろ”、連れて行ける人じゃない・・・戦える人・・・)

ポリアは、マクムスの養子の魔想呪術師のデルを見た。 目鼻立ちの整った、まだ若い青年だ。 病気に罹っていて、明日連れて行っていい人物とは思えなかった。

(魔術師・・・)

そして、もう一人。 疲労と病気で苦しんでいた、大人の印象強い女性。 学者で、体つきがスラッとしながらも、無駄な肉のない身体は引き締まっている。 長い睫毛ながらに男っぽい印象もある。 首筋に纏わる灰色の髪が、女らしいと思わせた。

(この人、武器は?)

ポリアは、失礼して腰にある手に収まりそうな丸い皮鞘を見た。 珍しい飛び道具。 三日月型の、ブーメランだ。 外側は、鋭く刃のように尖っている。 しかも、白銀の武器だ。

最後のもう一人は、勝気な顔をした若い女性で。 赤い髪、きれ長い眼と褐色の肌の美人だ。 武器は、剣の刃が針の様に細く伸びる細剣。 コールドと同じ武器。 普通の鋼鉄製で、しかも刃毀れが激しい。

(せっかく助けたのに、マクムス様の息子さんを連れて行くのは酷だわ。 それに、毒が比較的回っていなかった女性の学者さん・・・ミュウさんが一番ね)

ポリアは、彼女に秘薬を飲ませる事にした。 チラリとKを見たが、全くコチラを見る気配すら無く。 寝ているようだ。

ミュウを起こし、小瓶の薬を飲ませた。

ゲイラー達は、Kが何故こうしたのか解らない。 一番重症の二人の助けた男と、ボンドスかイルガに飲ませるのが妥当だと思うのだが・・・。 

システィアナと、ポリアに、外が暗くなった頃にマクムスが。

「お二人は、明日があります。 もう、お休みなさい」

と。

ポリアは、正直もうクタクタであった。

「ポリア、もういいよ。 な、休め」

ダグラスも言う。

「うん・・・」

皆、疲れた顔をしていた。 魔法遣い達はもうグッタリして寝ている。 イルガやボンドスも痛みが引いたのか寝息を立てている。 助けたグランディス・レイヴンの一行も全員が薬で眠っていた。 夜はこれからだが、確かに休まなければならない。

(寝てる・・・明日・・・どうする気なんだろう・・・)

Kは、もう動かない。 ポリアも、マルヴェリータの横に座った。 システィアナが来て、二人で食事をして。 沸かされたお湯を貰って、薬湯を飲んだ。 もう、ミュウ・オリビアにはこの薬湯は飲ませている。

(明日・・・解る)

Kが、必要な事を必要な時にしか言わない事は先刻承知だった。 眼を瞑って、心に言い聞かせた。

そして・・・・それはどのくらいの時間が過ぎただろうか。 

「?・・・」

ポリアは、肩を揺り動かされて気付いた。 瞳を開ければ、そこにはオリビアが自分の顔を見ている。

「起こして・・・ごめんなさい」

言葉遣いがハッキリしている。 碧い瞳、ローブより覗ける赤い髪。 斡旋所の主人には似ていない。 母親似なのだろう。 印象深い清楚感と、優しい顔立ち。 オリビアは斡旋所の主人の自慢の娘であった。 

「いいのよ・・・どうしたの?」

ポリアは、皆も見た。 起きているのは、看病をしているマクムスぐらい。 他、皆は寝ている。

オリビアは、ポリアの横に座ると。

「明日・・・サーウェルスを助けに行ってくれるって本当なの?」

「・・・ええ、ケイが言ったのだから、本当よ」

「ありがとう・・感謝いたします」

オリビアは、まだ二十半ばだろう。 随分と大人びていて、年増に見えるというより、マルヴェリータと同じく魅力的に見える。

ポリアは、オリビアの肩を触って。

「でも、そんなに簡単じゃないわよ。 いいえ、寧ろ貴女は・・・最悪の危険が待ってるわ・・・・。 どんな事があってもしっかりしないと・・・お腹の子供が先に・・・死ぬかもしれない」

「え?」

ポリアは、Kを見てから・・またオリビアを見て。

「明日行く道は、数万年前にあった古代戦争の激戦地だそうよ。 広大な川の中は水では無く、かつて死んだ夥しい兵士達の屍ばかりが敷き詰まった“屍渓谷”と云われる場所よ。 僧侶の貴女は、その怨念の力をモロに感受してしまうわ。 下手したら、サーウェルスを助ける前に・・・流産してしまうかも」

オリビアは、恐れを感じて・・お腹を触った。

「オリビア・・夕方の貴女の発言は、覚悟としては愛の篭った言葉だけど。 周りから見れば、悲しい発言よ・・・。 ケイは、凄腕でサイクロプスですら瞬殺出来るけど・・・。 貴女のお腹の子供までは守れないわ。 明日、行くか行かないか・・・ハッキリ決めて。 別に、貴女が行かなくても、サーウェルスを助けに行くと思うの・・・。 ケイは、言った事を途中で曲げる卑怯者では無いから・・・」

オリビアは、体を震わせて涙を流して。

「この森の事・・・何も知らなかった・・・。 聞いた事・・・伝わってる事が全てだと思ったわ。 でも、この森は地獄よ・・・サーウェルスにも途中で戻りましょうって言ったの。 でも、オウガや・・・数々の魔物に襲われて、仲間が毒や病気で倒れて・・。 村の人に助けを呼ばせる為に一人で行かせた・・・。 何もかも、私達の失態だわ・・」

その時だ。

「ええ、そうね。 その通りよ」

マルヴェリータの声。

ポリアは、ハッと隣のマルヴェリータを見て。

「マルタ、起きたの?」

マルヴェリータは、眼を開けて。

「ええ、下らない懺悔に起きちゃったわ」

と、言ってから、オリビアを見て。

「私達、貴女のお父さんとマクムス様に動かされて来たわ。 でも、理由としては半分よ」

オリビアは、涙ながらに頷いて。

「ええ、報酬も高いから・・・私達を助ければ・・・チーム名の知名度も・・」

「違うわ。 見くびらないで」

と、オリビアの言葉を、マルヴェリータは遮った。

「え?」

オリビアは、麗しきマルヴェリータを見る。

マルヴェリータは、Kを見た。

「彼・・・リーダーが居たから来たのよ。 こんな悪魔の棲む地獄に、報酬やチームの知名度上げる為に来るのは知らないバカよ。 ケイは、此処がどんな場所か教えたわ。 それでも、あのリーダーが居る限り、生きて還れると踏んだから来たの。 貴女のお父さんが、この男なら娘を助けれると思った彼を・・・みんな見たくて来たのよ・・・」

オリビアは、黙って動かないKを見る。

「そんなに・・・強いんですか」

ポリアは、頷いて。

「まともなレベルじゃないわね。 ケイが居ないなら、私達はモンスターに・・病気や毒に死んでいたわ。 確かに、ケイの実力がどれだけあるのか・・・知りたい。 でも、未だに限界は見えてないわ。 もう、大型モンスターや巨人族を百は相手にしてるのに・・・怪我すらない」

マルヴェリータは、オリビアに。

「ケイは、明日貴女を連れて行くわ。 貴女の愛の気持ちのバカさがどうゆう場所に向かわせる事になったのか・・・。 そして、サーウェルスに逢わせるでしょう。 最悪の結果で逢うのか、それとも最良の結果で逢うのか。 貴女の心構え次第。 どの結果にしても、引き金を引いたのは貴女・・・後悔しなようにしてね・・・眠いわ・・・」

マルヴェリータは、水袋から一口水を飲んで、また眼を閉じる。

「マルタ・・」

ポリアは、マルヴェリータが一番Kの意図を悟っていると感じた。

そして、オリビアは。

「私も、寝ます。 明日・・・必ず一緒に行きます。 私達の至らなさから出た事・・・、そして私の我儘に道連れになるのでしたら、逃げる訳には参りません。 サーウェルスを、見つけるためにも」

と、また自分の居た場所に戻った。

ポリアは、正直複雑に思える。

(明日、本当に流産したりしたらどうするのよ・・・命ってそんなに・・・軽いの?)

むしゃくしゃしそうになる。 その時だ、

「あの、チョット宜しいですか?」

マクムスが、ポリアに声を掛けた。

「えっ・」

いきなりで驚いた。 だが、マクムスの顔は疲労も有るからか、とても真面目な顔だった。

「あ・・・ハイ」

ポリアは立ち上がり、マクムスに呼ばれるままに奥のフィリアーナの石像がある小洞窟のほうに。 青い光苔の光る中で、マクムスは小声で・・・。

「実は・・・・・」

ポリアは、その話の内容にハッとしてKを見た。 

マクムスは、最後に。

「お任せしていいと思いますよ・・・。 では、これで」

ポリアは、Kから眼が離せなかった。

(どこまで・・・・)

ポリアは、素直に全てが腑に落ちた。 だから、悩まずに寝る事にする。 その夜はモンスターの忍び寄る気配もなく。 誠に静かな夜だった・・・。

朝は、祠に吹き込む風と注がれた光によって知らされた。

「ん・・・ううん・・・あさ?」

起きたポリアは、背伸びをして洞窟内を見回してみた。

マクムスが休み、換わってセレイドとハクレイが起きている。 まだ寝ている者も多い中で。 外から、誰かの声が聞こえて来た。 

「外? ・・誰?」

洞窟内をもう一度見回せば、Kとオリビアとミュウの姿が見えなかった。 立ち上がって、外に向かってみると。

「冗談じゃないわよっ。 オリビアを連れて行くですってっ?!! 貴方気は確かぁ?!!!」

ハスキーな女性の声だった。

「・・・・」

オウガが昨日寝ていた大樹にポリアは凭れて見た。 黙って立っているKに、あの秘薬を飲ませた女性、学者のミュウが食って掛かっている。 身のこなしの素早いミュウは、学者でもあるが、どちらかと云うと薬師の技能が長けた者だ。 草の知識や、薬の調合も出来る飛び道具遣いと云った処。

Kは、黙って腕組みして聞き流している。 

今日は風が幾分強く、空は曇りがち。 Kの予想通り、明日には雨でも降りそうな様子。

ポリアの見る中、オリビアはミュウを説得していて。 ミュウはオリビアを心配している様子。 昨日の苦労で、今日にこの調子はチョット見たくない。 少し、成り行きを見ていたが、ミュウは一方的で。 もう一人の気の強い女性アリューファと間違えたかと思う。

「ミュウ、お願い。 一緒に来て。 サーウェルスを助けないと・・」

オリビアが言えば。

「解ってるわよっ!!!! 代わりに私が行くわっ。 貴女は此処に残って、お腹の子供にもしもの事あったらどうするのよっ!!!!」

どうも平行線だ。 ポリアは、Kは言う気も無いのだろうが。 マクムスの言った事が事実なら、この言い争いは只の茶番だ。 多分Kは、反省を促す意味も込めて事実を黙っているのだろう。 だが、もうそろそろ皆を起こして、助けに行かなきゃいけないのだから・・・だから。

「ケイ・・・事実を教えてあげれば?」

K以外の、オリビアとミュウが、ポリアを振り返って見た。

Kは、詰まらなそうに。

「なんだ、知ってたのか? 大方、マクムスの大先生が教えたか」

ポリアは、頷いて。

「うん。 見てて茶番だから・・・詰まらない」

Kは、呆れて。

「起きてコレだ。 礼も言わなきゃ反省も無い。 癪だから黙って様かと思ったか・・・ならポリア、任す。 腹減った」

Kは、そう言って祠に向かう。

「チョットっ!!!!」

ミュウが大声を出す。

ポリアは、なんだか気が抜けて。

「ウルサイわ・・・モンスターを呼びたいの?」

「うぐ・・」

ミュウが、言葉を詰まらせる。

オリビアは、ポリアに向かって。

「何を言ってるの? 何を知ってるの?」

ポリアは、頷いて。

「昨日・・オリビアの助かった時点でお腹の赤ちゃん・・・死ぬ所だったって・・・マクムス様が」

「え・・・」

オリビアは息を呑み、ミュウはオリビアのお腹を見る。

「マクムス様も、その事を伝えたらオリビアがおかしくなるかもしれないから。 村に帰ってから・・・」

オリビアもミュウも、震えて愕然となった。 今にも泣きそうなオリビアに、顔を強張らせるミュウだが。

「でも、安心して。 今は、生きてる。 昨日、ケイが飲ませたエクリサーの秘薬のお陰で、生き返ったって。 マクムス様が」

ミュウは、オリビアを見て。

「生きてるのね・・・まだ・・生きてるのね?」

「ええ。 問題は、サーウェルスの方・・・」

オリビアもミュウも、サーウェルスの名前にポリアをまた緊張の眼差しで見た。

オリビアは、緊張した震える声で・・・。

「どうゆう事? サーウェルス・・・どうか・・」

ポリアは、オリビアに冷めた眼を向けた。

「生きてるか、死んでるかは行って見ないと解らないわ。 ただ、マクムス様は仰った。 愛する子を宿した僧侶の癒しの力は、熟練の司祭の力を超えるって・・・。 もし、虫の息でもサーウェルスが生きているなら。 オリビアが居るなら、強い癒しの力で傷を癒せると」

二人は、行ったKの後を眼で追った。

ポリアは、祠に戻りつつ。

「明日には還らないと。 雨は降るし、太陽が出なかったら亡霊や死霊までがこの辺りにも出るそうよ。 最短で戻る為の最善策・・・ね。 助けてもらってるんだから、少しは言う事聞いたほうがいいわよ」

ポリアは、正直な気持ちを心の中で。

(自分で言ってよ・・・面倒臭いでしょ)

さて、Kは、行くメンバーを起こした。

ダグラス、ゲイラー、システィアナ、ポリア、マルヴェリータ、オリビア、ミュウの七名と、Kがリーダーだ。

マルヴェリータは、秘薬のお陰でピンピンしている。 身体を動かしながら、

「すごい効き目だわ。 疲労感も何も無い」

一方、フェレックはもう体は重いし、痛いし、調子も良くない。 疲労による頭痛もある。

「くそおお・・・俺に飲ませれば良かったじゃないか・・・」

一人、唸っている。

また、イルガはKに。

「お嬢様を頼む」

と、包帯だらけの体で頭を下げる。

Kは、サラリと。

「大丈夫だろ。 死にやしないさ、オークの女王様は。 な?」

ポリアは昨日の一件も在るだけに、ムカムカした顔で。

「だ・れ・がっ!! 女王なのよっ、荷物持ちにでもしてやらないわっ」

マルヴェリータは、頷き。

「オークに押し倒されてブチ切れたモンね~。 凄かったわ」

Kは、ポリアを見て軽口を叩く。

「ほぉ、オークになぁ~。 良かったじゃないか、ポリアでも愛してくれる種族がいるのか。 幸せなこった」

K、マルヴェリータ、システィアナが同時に頷いた。

「うう・・・おのれえ・・・」

ポリアの顔が、怒りに変わり。 ダグラスは見ていて。

(もう・・・その辺にしてくれ・・)

と、嘆く。

ゲイラーは、ポリアから人選の理由を聞かされて。

(言われてもどうせ信じられないから言わないだけか・・・。 なんでもお見通しなんだな~。 でも、ず~っとリーダーに成られたくは無い人物だ)

Kの事が、尚更怖くなった。

食事を終えた一行は、残る面々に後を託して外に出た。

「あ゛」

ゲイラーは、出た所でオウガに遭った。

だが、

「あらっ?!!」

ミュウが、目の前に居たKが居なくなったのに気付いた時。 オウガの体がグラリと前に倒れて地響きを立てる。

「・・・・・」

目を見張ったのは、オリビアとミュウ。 倒れたオウガの背後にKの姿が見えていたからだ。

「は・・・早いぜ、大将・・・」

ダグラスが、自分達の出番の無さに呆れる。

Kは、倒れた後にもがいて死んだオウガも見ずに。

「今日のポリア達は、オリビアの護衛だ。 オリビアを守ってればいい。 相手にするのは雑魚でいい。 怪我してもらっては困る」

Kは、そう言って。 昨日に、最後一人でポリア達チームと別れてモンスターを倒しに行った方に向かい始める。

ミュウは、ゲイラーに。

「み・・見えなかった・・・斬った所も・・・斬りに行く瞬間すら・・・」

「ああ、だから言ったろう? 俺等の理解出来るレベルじゃ無い」

オリビアは、静かに。

「この森に来て余裕がある訳が解りました。 さぞ、名前の知れた方ですのね」

ポリアは、歩きながら首を左右に。

「ムカツクぐらいに知らないわ。 自分の名前も、病気に成る前のチーム名も覚えてないって・・・」

オリビア・ミュウは、

(在り得ない)

と、二人で見合った。

さて、切り立った祠の設けられていた絶壁に沿って、山の北側では無く中央に入って行くように山の中腹へと登って行く。 林の中を歩いて、行けば行くほどに湿気を帯びた涼やかな空気になって、森へと変わりって行くのだった。

だが、この時。 Kが歩きながら言う。

「そろそろ戦闘態勢整えろ。 この先、俺が昨日モンスターを倒した所だ。 倒されたモンスターの遺体を喰らいにモンスターが集まってるだろう。 気配がしてる」

ポリアは、マルヴェリータやダグラスを見て。

「解ったわ・・」

と、剣を動かないように留めて置く留め金を外した。
どうも、騎龍です^^

今回は、17、18話の掲載になります^^

ご愛読ありがとうございます^人^


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