11、前夜は明るく、旅は雨
2、前夜は明るく、旅は雨。
合同チームを結成した夜。 ポリアとゲイラーのチームは、同じ宿に泊まった。 最高級の高い宿だ。 マルヴェリータが口利きしたから泊まれるのであって。 普通なら、冒険者など世界的に有名なチームでもないと泊めて貰えない様なランクの宿である。
Kが、
「もしかしなくても、死ぬかもしれん。 最後になるやもしれないから、いい宿に泊まったらどうだ?」
と、言ったからだ。 一泊で、一人三百シフォン。 この金額は、一家五人家族の一月の生活費に等しい。
さて、K達は、総勢十一名で個室の会食場を貸しきっていた。 立派で、煌びやかなシャンデリア。 白い金糸の刺繍の入ったカーテン、窓の枠の細工も美しく。 部屋の内装は、金色に包まれるイメージで、長方形の長い食台表面の透かしで入れた蝶の舞う絵を見る限り。 流浪の冒険者達の泊まる所では無い。
食台の右側には、ポリア達が陣取り、左側にゲイラーのチームが。
問題は・・・、
「ゲ~イラ~さん、えんりょは~いりませ~んよ」
「はい、死ぬまで食べます」
向かい合う、デカ男ゲイラーとシスティアナの訳が解らないゆる~い雰囲気が、長い食台の真ん中から左右を分けていた。
(食いすぎで死んでしまえ・・・ケイが見えない・・・)
ポリアは右を向くと、いつものキャラでは無いゲイラーの姿が見えて、呆れてしまう。
マルヴェリータも、Kは一番左でダグラスなどと話しているので、彼のの話が聞けずにいるのが、どうも歯がゆい。
(はぁ、詰まらないわ・・・)
マルヴェリータの少し離れた横には、緑のローブを纏った魔法使いのキーラが居る。 マルヴェリータよりやや低い背で、あどけなさの残る青年だ。 短い短髪で、顔はのんびりした印象の眼が大きくて鼻が低い。 いい男とはお世辞にも言えないが、嘘をつくような性格にも思えない。
一方、Kの右には、剣士ダグラス。 左には、斧を背負っていた剥げ頭の中年戦士ボンドスがいて、Kの右前には、紅い神官服のゲイラーに近い背丈の男セレイドが居て、左前にはスラリとした初老に近い印象の男レック(本名パチョレック約してレック)が居た。
ダグラスの姿は、若々しい顔立ちの整ったいい男で、ポリアと同じ剣士。
ボンドスは、半そでのヨレタ厚手の皮製の上着を着ていて。 頭の天辺が剥げた訝しげな印象の色黒男。 人相も良くないが、顔のふてぶてしさは、嫌味というより苦労人と云った感じの印象を受ける。
レックは、スラリとした均等の取れた体格で、背もKよりやや高い。 黒の皮ズボンに、白いハーフコートと、洗い晒しの草臥れた感の見える襟のあるシャツを着た、渋みというか苦味の効いた紳士風のナイスミドルだ。 ただ、彼は変わっていて、武器が弓なのだ。 撫で付けた髪は真ん中分けで、やや灰色ががっている。 見た目通りの落ち着いた雰囲気の有る男性である。
そして、ゲイラー並の高い背に、ガッチリした体格の紅い神官服を着た男、セレイド。 頭は、スキンヘッド。 神官服のローブの背には、金の刺繍で右手に長い槍、左手には中型剣を持った、全身鎧のうら若き女性が画かれる。 セレイドの信仰するのは、世界で信者数が四番目に多い“アテネ=セリティウス”。 別名を、戦陣に吹き荒れる戦女神とも。 この神を信仰する冒険者は、ほぼ全員が武器も扱える。 大抵が、ハンマーや棍棒などだが、中身は剣を扱う小数派も存在する。
さて、話の話題は仕事に関してが中心になった。
ダグラスは、見た目はチャラチャラした雰囲気があるが、以外に情に厚く優しい男だ。 しかも、あまり物怖じしない。
「なあ、リーダーさんよ」
パンを片手に、Kは。
「ん?」
「その、サーウェルス達の行った山って、何でモンスターの巣窟に成ったんだ? 確かに、古の神と悪魔の古代戦争の跡地だとは聞いたが・・・もう何万年も前の話なんだろう?」
「ふむ。 あの山は、古代戦争において魔王の召喚された場所の一つだ。 “マニュエルの森”に“アンダルラルクル山”は、その神と悪魔と人の争う激戦地にして、魔王が封じ込められた場所。 倒せなかったのさ。 だから、封印した。 山の奥に魔王が居るんだもの、常に瘴気が渦巻いていて魔界からモンスターを呼び寄せていた」
セレイドが、真剣な顔で。
「魔王か・・・我々で倒せる相手では無いな」
Kは、頷く。
「だろうな。 でも、もう死んだ」
「なにっ?!」
「マジ?!」
ダグラスとセレイドが声を上げて、ボンドスやレックも手を止めた。
ボンドスが、イガイガ声で。
「死んだって・・寿命か?」
「嫌々。 何年前かな、噂にすらならないまま倒された。 山には魔王はもう居ないんだが、長い時間あそこに居続けたからな。 強烈な瘴気と魔王の遺体が温床に成っていて、魔界のモンスターを呼び寄せる。 魔王が召喚されて、魔界との通り道が出来ちまったからな~。 あと、ン千年はあんなまんまだろうな」
セレイドは、顔に血管を浮かび上がらせ。
「何所で、聞いたんだ?」
「聞いたんじゃない。 前に俺達がチームで入った時、山の山頂付近から入れる洞窟の中に入って見たんだ。 魔王の死体でっけーのなんの。 人の十倍は有ったぜ、体のデカさ」
ダグラスは、Kの居たチームがそんなに奥地まで入れるのは、かなりの実力が有ったのだと思い。
「リーダー、アンタの居たチームの名前は?」
Kは、スープを啜って。
「忘れた。 病気のお陰で、微妙な部分が抜けてる」
ダゲラスは、なんともむず痒い。
「オイオイ、そりゃぁ~ないっしょ~よ」
「だって、マジだもの」
ボンドスは、Kに。
「しかし、何だってまた・・・その洞窟に?」
Kは、スプーンを手に思い出す素振りで。
「確か・・・ブルーレイドーナの調査だったような・・・」
聞いていた全員の手が止まり、Kを見た。
ダグラスは、目が点になり。
「み・・見たの? ヤツ・・・」
「ああ、丁度子供が居た」
「ふぅ~、どんなチームだったんだ? ありえねぇ~」
ダグラスは、もう呆れるしかない。 ブルーレイドーナとは、モンスターの別名。 本当の名前は、“ジュエルスカイドラゴン”という竜なのだ。 身体の大きさだけで、町くらいは覆うと云われ。 一度怒れば暴風雨を巻き起こし、雷を招雷する神に近い生き物。 見るだけでも命懸けだろうに、調査・・・・とは。
聞いていたレックが、
「なるほど、ポリアが言っていた意味が解った。 確かに、我々などのリーダーには勿体無いな・・・それこそ、今の“スカイスクレイバー”にだって入れる」
ダグラスは、苦虫を噛み潰す不満顔に為って。
「より上かもよ・・・アソコに奴らも行ってないべさ」
と。 Kの素性が気に為り始め、痒い所に手の届かない話に何とも・・・であった。
今話に出た“スカイスクレイバー”=“摩天楼”と云う名前は、現役世界最高の名声を誇る冒険者チームの名前だ。 リーダーは、絶世の美男の剣士と謳われる男、“アルベルト=トルネード”。 今や、彼らの立ち寄る国では、彼を会食に招かない王は居ないとさえ聞くほどだ。
ボンドスは、Kに。
「リーダーさんよ。 もしこの仕事が成功したら、また一人かい?」
Kは、頷く。
「ああ、もうべったりであちこち行くのはうんざり。 終わったら、金貰って旅行するの。 記憶取り戻す、のんびり旅」
ダグラスは、ズイと顔を近づけて。
「もったんね~だろう? その腕で、世界で一番のチーム作ったら?」
「興味無いね。 それなら、流れ狼遣ってる方がギリギリ感あって、面白~い」
「マジっすか・・・信じられん・・・」
ダグラスは、今二十三歳。 世界に名を馳せるチームを求めて止まない。 ゲイラーと二人、同じ故郷の田舎育ち。 一年半前に、偶然四つ年上のゲイラーに逢って、二人で頑張ろうと今のチーム、“パワーオブドーン”を結成した。 ボンドスやレックは、その時からのメンバーで。 セレイドとキーラは、半年前に加わった。
年齢もバラバラながら、ゲイラーとダグラスの二人の腕が良いから、ボンドスもこのチームに居ついている。
しかし、どの面々も、K程の知識は聞いたことが無い。 キーラや、セレイドはまだまだだが。 他の四人は、実力、経験の面から、Kの底知れぬ実力を薄々に感じている。 何より、先ずKは足音がしない。 しかも、いい加減そうに見えて、辺りの事を誰よりも早く察知している。 そして、見た人物や起きている物事に応じての推理力も・・・。
だからか、ダグラスとゲイラーが、いち早くKに従う姿勢を見せている。 ゲイラーやダグラスなどは、経験や生きた知識の大切さはよくよく知っている。 それこそ、ポリアの二の舞は最初の駆け出しの時点で卒業しているのだ。
一方・・・。 デカイのと、のほほん娘は・・・・。
「ゲイラ~さん、ほっぺに~ソ~スがついてますよ~」
「おおっ!! 気付かなかった! 流石はシスティ、ありがとう」
「えへへ~」
どんな会話だろう。 方や二十歳。 方や二十七歳である。
もうポリア達は、Kの話が聞けないものだからワインをがぶ飲みして腐っていた。
さて。 Kと、リックなどが早々に寝てしまい。
遅いポリア達ですら、深夜前には寝た。 シトシトと降る雨音は、なんとも心地の良い子守唄であった。
次の日も、雨だった。 暗いどんより空は、鉛色で重く重く垂れ込めている。
K達が、早朝の人通りもまばらな通りを来て、斡旋所の【蒼海の天窓】に来て見れば。 もう、二台の馬車が用意されていた。
Kは、馬を見て。
「ほほう、良い馬だ。 まだ若いの二頭と、やや年寄りの組み合わせか。 良い判断だ」
ポリアが、
「なんでよ?」
Kは、応えない。
そこに、
「馬は、若い馬だけだと、いざと云う時にバラけてしまう。 リーダーは、やや年の行ったしっかりしたのがいいのだよ。 しかも経験の多い馬は、一度でも来た道を忘れない。 万が一の時も、近くの町にでも引き返す」
と、声が。
見てみれば、黒い防水のコートに身を包んだマクムス氏が、フェレックのチームの太った神官と一緒に来ていた。
ポリアを始め、全員が挨拶をし。 Kが進み出て。
「長旅になる気構えは持ってくれ」
マクムス氏は、頷いて。
「ええ、解っています。 昨日、副神官長に代理をお願いしてきました」
「ならいい」
Kは、だれにも謙らない。
フェレック達も、直ぐに来た。
二台の馬車に、全員がバラけて乗り込んだ。
斡旋所の主人が出てきていて。
「娘を頼む」
と、Kに。
頷くKは、御者に出発を命じた。
二台の馬車は、街の北門に向かう。 まるで、王城の大門のような鉄の門の前で、馬車は兵士に止められた。 通りのど真ん中でだ。
Kは、なにか有ったのかと兵士に尋ねると、紅い馬車が横に着けて来た。 車体の窓から、王国宮廷魔術師総師団長のジョイスが顔を見せる。
「なんだ、ジョイスか」
素っ気無いKとは裏腹、ゲイラーやフェレックなどは本当に驚いて馬車から降りたほどだ。
ジョイスは、真面目な顔で。
「リーダー、一緒に行けなくてごめん。 一昨日の事件が動きそうだから、僕が此処を離れられない」
「解ってるさ。 ラキーム達の一件を、しっかり頼む」
「うん。 一応、リーダー達が下山してくるって言ってた五日後辺りから、トルトに三・四日か馬車を手配させるよ。 助けた人を乗せる為に」
「おう、助かる」
「じゃ、気をつけて。 マルヴェリータにも言っておいて」
降りていたマルヴェリータは、ハッとしてジョイスに。
「大丈夫ですよ。 ジョイス様」
降りていたマルヴェリータに、ジョイスは驚いた。
Kが、降りた一同に。
「早く乗れ、時間は無いぞ」
ジョイスは、マルヴェリータに向かって。
「リーダーの言う事に一つの間違いも無い。 しっかり聞いて、サーウェルス達を助けてくれ・・・死ぬな」
マルヴェリータは、頷いて馬車に乗った。
Kは、窓から見てて、
「お前・・・本気?」
ジョイスは、呆れて。
「預けたの誰? 死なせたら怨むよ~」
「ケッ、後で助けに来い。 ボンクラの白馬王子」
全員が乗ったのを見て、馬車は二台走り出していく。 ジョイスは、消えるまで見送っていた。
さて、馬車の中、
マクムス氏が、Kに。
「ジョイス殿ともお知り合いですか?」
Kは、腕組みして、眼を瞑りながら。
「ああ、ま~ね」
マルヴェリータが、元本当にリーダーだった事を告げた。
「なるほど、流石に」
一緒のダグラスと、ゲイラーは。
「人脈も鬼じゃないっすか・・・」
「俺も、そう思う・・・」
もう一つの馬車に乗っているポリアは、フェレックの煩い質問責めに遭っていた。 イルガと二人で、耳を塞いで寝たフリである。
三チーム、合わせて総勢十八名は、トルトに向かってひた走る。 休憩は、水のみ場で馬を休めるのみ。 殆ど徹夜で走る。 揺れる馬車は、長く座るほどに疲労が来る。 寝ようとしても寝れるものでは無い。
車体の中は、3列のシートがあり。 前と中間のシートは向かい合っている。 だから、どうしても暇だと誰かと話したくなるのだ。
Kは、やはり落ち着いたもので。 ダグラスやゲイラーとは、暇つぶしの雑談はするし。 マクムス氏とは、世界の情勢や、やはり“アンダルラルクル”の話をする。
それは、マルヴェリータも余り知らない内容だった。
二日目の雨が降る街道上を走る馬車の中、丁度昼の話である。
Kとマクムス氏が、かなりの深い意味で山の話になる。 マルヴェリータが、聞いた話だ。
アンダルラルクルとは、昔の古代の言葉で“魔域”を意味し。 魔王の力の復活と共に、モンスターが溢れ出し、その都度に多きな被害を近隣の町や国に与えてきた。
それが、今から千年前の事。 大賢者ヴォルマリフと云う男と、その妻の天司祭イクマリスの二人が。 冒険者八人とでこの山に分け入り、六ヵ所の祭壇を築いた。 その結界が今に至るまでモンスターを山に封じて来た訳だ。
さて、結界の力も万能では無い。 だから、数十年に一回は、選ばれし司祭が出向いて結界を張り直して来なければならない。 時には、帰らぬ司祭も大勢居た。 モンスターに変わっている者も・・・。
マクムスが、若くして神官の長になったのも、二十年前に結界を張りに向った神官長が、戻ったトルトの村で死んだからだ。
マクムス氏曰く。
「知らなくて当然だ。 魔王の話は、寺院でも緘口令を敷いているんだよ。 魔王の存在を今に知れば混乱を招くだろうし。 しかも、暗黒魔術を用いる者が魔王の居場所を知ったら、それこそ一大事だ」
Kは、
「もう、死んでたがな」
「な・なんだってっ?!!」
マクムス氏が、魔王の死を知ったのはこの時であった。
「でも、死体も残ってたし、瘴気も消えてない。 かなりの長い間は、結界は必要だ。 ま、全滅させることも、犠牲を払えば出来ない事も無いが」
マクムス氏は、Kに寄って。
「本当ですか?」
Kは、雨の外を見て。
「冒険者を軒並み集めて、山に退治に行かせる。 ま~、八割は死ぬな。 でも、絶対数の激減は狙える」
マルヴェリータ、人を物として見る消耗戦だと思った。 感情的に為って、思わずKに向って。
「そんなの、出来る訳ないじゃないっ!!!」
Kは、頷いて。
「だな。 俺も賛成はしない。 ただ、昔はそうして減らしていた過去がある」
マクムス氏は、愕然とした。
「そ・・そんなことが?」
「ああ、結界が出来る前の話しだ。 大賢者ヴォルマルフと天司祭イクマリスは、それでかつての仲間と、実の息子を亡くし・・・命を懸けた結界の設置に乗り出したのさ・・・」
今まで聞いた事の無い話ばかり。 ゲイラーは、
「良く知ってるな?」
「昔。 遺跡の発掘の仕事で、あの山の西の麓にある寺院に行ったことがある。 もう、結界の中で、モンスターの巣窟だったが・・・壁画に当時の事が画かれていた。 ま、みんなが溢れるモンスターに故郷や、街を襲われるくらいなら、自分からと志願したそうだ。 寺院の中に、その当時の事を記憶した“メモリアルジュエル”もあった・・・」
誰もが、その当時の事を考える。 恐らくは、壮絶な戦いだったのだろう。
ダグラスは、山に入った事がもっと聞きたかった。
「なあ、山って禿山なのか?」
「とんでもない。 俺等が行くルートは、一番モンスターの少ない森林地帯ルートだが。 西の方に行けば、毒ガスの池群や底なし沼などが広がる“闇沼”がある。 あの辺は、おぞましいモンスターの巣窟だしな。 その上には、死霊の蠢く“幽幻ヶ原”って草原がある。 いっつも瘴気を孕んだ霧が立ち込めていて、モンスターの魅せる幻覚に一度でも堕ちたら・・・・狂って死ぬだろう」
ダグラスやゲイラーの飲み込む生唾の音がした。
マルヴェリータは、思う。
「ケイ・・・、どうしてサーウェルス達の行った方を絞れるの?」
「言ってたろ? 仕事は、“薬草取り”。 西側の草は、全てが瘴気や毒に侵されていて、薬用効果が無い。 薬草は、森と山の狭間辺りにあるんだ。 ソイツは、山の正面から東側に掛けてだ」
「ねえ・・・、Kって・・少し怒ってる? なんか、クォシカの事件は、あんなに率先してたのに・・・今回は私達お荷物を抱えてるから・・・?」
マルヴェリータは、Kの態度の多からずも少なからず、冷めた感じか見受けられる気がしたから。 思わず聞いた。
すると・・・Kは、マクムス氏を見て鋭い口調で。
「いや、正直な話。 助けたくも無い」
「!!!」
そこに居た全員が、驚いた。
Kは、更に口調を変えずに続けて。
「あの山に入るには、先ずは装備の充実を図って、モンスターや地理を調べて、万全の対処をして望むものだ。 冒険者とは、仕事を請けたからにはそれだけの責任もある。 なのに、だ。 行方不明の冒険者共と来たら、準備もして無い上に、興味本位で仕事をマスターに通さずに請けさせた」
マクムス氏は、頷く。
「確かに、不注意過ぎる・・・」
Kは、更に上乗せし。
「俺が急いで村に向かってるのには、訳がある」
ゲイラーは、深刻そうに、
「な・なんだ? なんかマズイ事でも?」
すると、Kの声のトーンが少し下がった。
「行方不明のバカ共は、なんでも草の知識も無いからと、半ば言いくるめて村人を案内に連れて行った。 その村人が、大怪我して戻って来て失敗が解ったんだが。 今や、その村人が瀕死だと」
ダグラスが、気の毒と思って。
「そうか・・・そりゃ~災難な・・・」
その時、Kは怒りを気合いにして込めた口調で。
「何が災難な物かっ!」
と、吐き捨てた。
これには、マルヴェリータも、ゲイラーやマクムス氏も一種の恐れを覚えた。 まるで、斬り込む剣士の気構えみたいな気合があった。 言うなれば、言葉で斬られた・・そんな印象を受ける。
Kは、マクムスも居る手前で、声を少し落ち着けては続けて。
「いいか、覚えておけ。 無関係の人間を巻き込むなら、テメエが死んでもその人間は守れ。 テメエの無知、至らなさ、思慮・配慮の無さを棚上げして一人で逃がすだと? 村人が安全に山から降りられるなんてな、砂浜の砂粒一つくらいの確立だ。 俺から言わせるなら、自業自得。 行方不明に為ったソイツ等は死んで当然だ」
マクムス氏は、Kに言う言葉が見つからない。 確かに、どれを取っても失敗の原因はチームに有る。
Kは、最後に。
「どうせ、持ち物も足らずに、生きてればみ~んな毒や病気に苦しんでる頃だ。 多分、主人の娘のオリビアが、魔法でなんとかしているだろうが。 日数を見ても、あと五日もすれば全滅だろう。 何が、この国一番のチームだか」
Kの評価は、辛辣だった。
しかし、ゲイラーもダグラスやマルヴェリータなども、Kは、それだけ冒険者としてしっかり遣って来た中で、経験も踏まえて言っているのが解った。 だから、何も言えなかった。
マクムス氏が、謝った。
「誠に、息子も居たながら申し訳ない」
「仕方無い。 どっちにしろ、あのバカ主人もこんな寄せ集めの死ぬの解ってるチームを組ますんだ。 誰か、保護者が必要だろう・・・生きてたら、息子をブン殴っておけよ」
マクムス氏は、深く頷いた。
マルヴェリータは、今になってこのKが、マクムス氏や斡旋所の主人の親心に対して動いたのだと感じた。 今のKに、名声や財を求める気は無いのだと知った・・・。
(やっぱり・・・本当は優しいのね)
何故、ジョイスがああも言われても慕うのか、なんとなく解ってきたマルヴェリータであった。
こんにちわ、騎龍です^^
“K”シリーズも十一話になります^^
宜しく、お付き合い下さい^^
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