僕が彼女を見たのは、一度だけです。
彼女は桜の下で泣いていました。
なんで泣いているかは覚えていません。
というより、彼女が泣いていたことしか覚えていないんです。
えっ、似た目ですか? なんとなくなら覚えていますよ。
たぶん年は十三・四ぐらいで、髪は長かった気がします。
なんというか、変なこというんですけど、彼女が桜の下で泣いている姿があまりにも印象的で。
まるで、ひとつの絵みたいだったんですよ。
「ああ、最悪だ」
まだ日が少し出たばかりの明朝、高さ十メートルはあろう崖の下にわずかにある岩場に、男が一人頭をかきながらあぐらを掻いて座り込んでいた。
くそ、まさか崖から落ちるなんてホント運がない。いや、あの高さから落ちて助かったから、ついているのか? いや、そんなことはどうでもいいか。それより、これからどうするかだ。体の方は所々痛いが、別にたいしたことないだろう。しかし、ここからじゃいくら叫んでも上には声が届きにくそうだし、そもそもこの上の道を通る人なんて、ほとんどいないっぽいしな・・・・。ああ、やっぱり日も出ない内に移動するもんじゃないな。
泳いでいくというのもありだが、俺は完全なカナズチだからそれは無理だし、そもそもここら辺の汐の流れが強そうだから、泳げたとしても溺れてしまうだろう。ああくそ、水しぶきがかかって冷たいじゃないか。
「仕方ない、船か何かを見つけるまでのんびりするか」
別にここで色々考えてもしかたなさそうだし、ここは誰かに見つけてもらうまで何もしないほうがよさそうだ。
「んっ?」
そんなことを考えながら海のほうをボーっと眺めていると、向こうのほうに小さな船がいることに気が付いた。
「こりゃ、マジか・・・!?」
思ったよりも早く助かるかも。
うむ。やっぱり今日はついているようだ。
ミーンミーンミーン
ああ、うるさいな。こっちはただでさえ暑さでイライラしてるっていうのに、うるさい蝉だ・・・・。梓の奴、早く終わらないかな。
海の近い山中の、瓦屋根の家が立ち並ぶこの村で、「薬屋」と書かれた看板の付いた建物に、日があたらぬよう、入り口である引き戸の横によっかかる一人の男が居た。年は二十歳くらいで、どうやら誰かを待っているようで、さっきから店の中を気にしていた。
行きかう人々が袴や着物を着ている中、この男だけが一人洋服着ており、少し浮いていたが、本人は別に気にしてはいないようである。
その男は木に泊まっている蝉のほうをチラリと見ると、アーと小さくため息をつきつつ、ポケットから懐中時計を取り出して時間を確かめていた。
がららら・・・・
「お待たせしました」
店の中から、着物を着た若い女の人が出てきた。手には薬と書かれた紙袋を持っていて、どうやらこの男の待ち人のようである。
「遅いぞ、梓」
男は待たされたことで少し怒っているようであった。
「暑いんだから、早くしろよな」
「それなら杉野様も中で待っていればいいじゃないですか。外よりはいくらか涼しいですよ」
「嫌だ、あの雰囲気は苦手なんだよ」
「御茶屋で休んでいてもいいんですよ」
「この村の店はボロイから嫌だ」
「それならわがまま言わないでください」
男をたしなめる様に彼女が言うと、男は「ちぇっ」といじけたように口をとがらせた。
「あっ、そういえば定員の人から気になる話を聞いたんですけど」
「話? どんなのだ」
いじけたままの様子で彼女の言葉に耳を傾ける。
「それが、人魚の呪いのことらしいんです」
「人魚の・・・だと?」
人魚という単語をきいたとたん、男は先ほどまでのいじけた表情が一変し、急に真剣な顔に変わっていた。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前は一だ」
食後のお茶の入った湯飲みを左手に持ちながら、囲炉裏はさんだ僕の向かい側に座っている人が言ってきた。
「私の名前は篠田アツといいます」
向こうが名乗ってきたならと、僕も名前の自己紹介をする。
「しかし助かった、いやほんとに」
「こっちは驚きましたよ。まさかあんなところに人がいるなんて、最初はお化けか何かだと思いましたもん」
早朝、漁猟をしている時に崖の下の岩場でこの人を見つけた時は驚いてしまった。最初に助けを呼ぶ声が聞こえた時はそんな場所に人がいるとは思わず、幽霊か妖怪の類かと思ってしまった。
「いやあ、面目ない」
一さんはそう言って頭をかいたが、何故だかこの人の言いようはとても淡々としていて、余り面目なさそうには聞こえなかった。
「しかし良かったですね、いつもは違うところで漁をやっているんですよ。今日はたまたまあの辺でやろうと思って、そしたらあなたがいたんだから」
そうなのだ。いつもはもっと東のほうでやっているので、彼を見つけることはできなかったのだ。
「あそこら辺じゃ誰も漁をやらないので、もしかしたら一生誰も気づかなかったかもしれないですよ」
「マジでか? 崖から落ちても大したことなかったし、今日はついているんだなぁ、俺」
「崖から落ちた時点で、ついてないと思いますけどね」
運がついていれば崖から落ちることも無いだろう。
「ああ、確かに」
お互いにははと笑いあう。
「そういえば、なんであんな場所に落ちたんですか。崖の上の道は確か廃道で、ちゃんとした道があったと思うんですけど、道に迷ったんですか?」
道は比較的判りやすいものなのだが、まだ日も出てない時間なら道をそれてしまうこともあるだろう。
「いや、迷ったわけじゃないんだが。なんとなく道を逸れたくなってな」
「なんとなくですか?」
「そう、なんとなく荒れ道に入っていったら、暗くて足元が見にくくてな。崖から落ちてしまったんだよ」
いやあ、まいったまいったと頭をかく。なんだそれは。なんとなくってこの人、おかしな人だな。一歩間違えたら怪我じゃすまなかったのに。
「そうだ。こうやって助けてもらったんだ、なんか礼をしなくちゃな」
一さんが思い出したように言う。
「そんな滅相な。そんなお礼をもらうようなことなんて無いですよ」
「いやいや、助けてもらった上に、飯まで食わせてもらったんだ、礼の一つでもせんとな」
「いや、しかし・・・・」
別にお礼が迷惑なわけじゃない、むしろなにか貰えるのならば貰っておきたいものである。しかし、この一という男は正直身なりがあまり良くなく、着ている袴はボロボロで、こんな時間にここら辺を歩いているのが気になって、何をしている人か尋ねてみると、「ただのんびりと放浪している」と答えたのである。さすがにこんな人からお礼をもらおうなんて気持ちは、こっちにはまったく無い。
「気になさんなって。別に大したことじゃないしよ」
「・・・そうですね、それなら」
とは言え相手がそこまで言うのならば、これ以上断るほうが失礼であろう。
「お前さん、何か思い出したいことはないかい?」
「はあ?」
いきなりなにを聞いてくるのだろうか、この人は。こういうときは普通、何か手伝いましょうなどかと思っていたので、そんな質問なんて予想だにしておらず、少し戸惑ってしまった。
「いや、まあ。なくはないですけど、それがなにか?」
「その記憶、思い出させてやろうか」
・・・・・はっ? なにを言っているんだ、この人は?
「それって、もしかして『催眠術』っていうやつですか?」
一度用事で都に言ったときに、聞いたことがある。小銭の真ん中にある穴に糸を通して、それを柱時計の振り子みたいに目の前で揺らされると、昔のことなどを思い出したりすることができるらしい。でも失敗すると記憶が無くなったり、運が悪ければ死んでしまうとも聞く・・・・。
「そういうのはちょっと・・・」
「いやいや、そんなんじゃないから」
一さんは手をパタパタと横に振って否定した。
「俺はな、人の記憶の跡を読み取ることが出来るんだよ」
「はあ・・・。えっと、どういう意味ですか?」
困惑している様子を見て、一さんが説明を始めた。
「人っていうのはな、それぞれ自分の中に記憶できる限界ってものがあるんだよ」
「記憶の限界ですか?」
「そう。喩えるなら、みんな頭の中に自分の日記を置く専用の本棚を持っているんだよ。その本棚に日記が入らなくなると、要らない日記から捨てていく。これが忘れるってことだ。忘れたものは自分の中に、わずかながら跡は残しているんだけど、もう思い出すことができない。だけどな、生き物ってのは記憶のコピーを「物」に残していくんだよ」
「物にですか?」
「正確に言えば物に付いている八百万の神々にな。物を見て何か思い出すってことがあるだろ? あれはその物についている神が、お前に記憶を渡しているんだよ」
・・・・・・八百万の神々とか、なに言っているんだ? 頭がおかしいのではないのだろうか。
「人は出会った神々の中に自分専用の倉を作っていってな。その倉は本来自分でしか開けることができないんだが、その記憶が古いほど、それを取り出すのが難しくなる。その記憶との繋りが弱くなるんだよ」
どうしよう、わけの分かんないことをどんどん言ってくる。もう意味がわからない。何とかして話を変えたほうが良さそうだ。
「あのう、やっぱりそういうのは・・・ちょっと」
「んっ、ああそうか。そりゃいきなりこんなこと言われても、信じられないよな」
そういうと彼は急に目を瞑り、黙り込んだ。どうやら何か考え込んでいるようである。一体何を考えているのだろうか、少し君が悪いな・・・。
「・・・・アンタは一昨日、ここで漁師仲間と酒を飲んだんだな」
その言葉にドキッとした。何なんだこの男、なんでそんなこと知っているんだ。
「その前の日には、誰か客が来た・・・。どうやら古い友人が訪ねてきたんだな。その客のために鍋をこしらえたのかな・・・」
「貴方・・・・・」
不振そうに見つめる僕の目線に気がついて、苦笑するようにハハと笑った。
「何日も人の家を覗く趣味なんてないよ。囲炉裏についている神から聞いたんだ」
「そんなことって・・・ですけど、さっき言っていた話じゃ人の記憶を覗くことは、できないんじゃないんですか?」
そうである。もしこの男の言っていることが本当だとしたら、他人の記憶を覗くことなんてできないはずである。他人のも見ることができたら、プライバシーなんてものが一切なくなってしまうではないか。
「俺はな、八百万の神々と交わること。つまり、神々の持っている他人の記憶を見たりすることができるんだよ。まあどんな蔵でも開けることの出来る合鍵を持っていると考えてくれればいい」
なんだそれは、そんなこと出来るものなのか。ただですら物が記憶を持っているとか、信じられないというのに。
しかし、先ほどのことを考えると、信じるしかない。
「大丈夫、覗いた記憶をむやみに口外することなどはせんから」
「じゃあ、何で私に言ったんですか?」
「ああ、信じない人に信用させるためには、一度やって見せたほうがいいんだよ。定番ってやつかな?」
「はあ、定番ですか・・・?」
「まあそれにこの記憶はお前も知っている奴だろ?それならばいいじゃねえか」
頭をボリボリかきながら胡坐を掻き直す。
「まあ、そうですけど・・・」
「でな。神々と交わることで、もう一つできることが有るんだよ」
そこで一さんは一旦休憩を入れお茶を一口すする。
「もう一つ?」
「そう、それが弱まった記憶の繋がりを強くすることができるんだよ」
「弱まった記憶の繋がりを強くする・・・・」
弱まった記憶の繋がりを強くするとは一体どういう事なのだろうか。その疑問に答えるように先ほどと同じように説明をしてくれた。
「さっき古い記憶は物から取り出すのが難しくなるっていっただろ。それは時によって記憶が自分の中で潜在的に風化していくからなんだよ。幼い頃好きだったものも、時が経つにつれて全く興味がなくなったりするだろ。それと同じようなもんさ。自分の中で風化してしまった記憶は物との繋がりも弱くなり、やがては引き出せなくなる。俺はその弱くなった繋がりを強くすることができるんだよ。繋がりを強くすれば、あいまいだった記憶も鮮明に思い出すことができるんだよ。それこそ、その時の会話の内容も一字一句全部な」
「ということは、どんな記憶も思い出させてくれるんですか」
小さい頃の大事な思い出も思い出すことが出来るのなら、それはいいことだ。一さんは思わず少し前のめりになってしまった俺を制止するように手を突き出して、その後に言葉を付け加えた。
「ただし、それはその記憶を持っている物がなけりゃいけないんだよ。求めている記憶を持っている物の神と交わらなければ記憶の結びつきを強くすることができないんだ」
また不思議なことを言い出し、それに首を捻る。
「記憶を持っている物ってどんなのなんですか?」
「記憶が付くものはな、その時に一番思いが入っている物に付くんだよ。さっきだと囲炉裏を囲んで酒を飲んだりしたから、囲炉裏に一番思いが入ったんだろうな。だが囲炉裏からはその後の記憶が読めなかったから、飲んだ後外にでも出かけたんだろ?」
「はい、仲間を見送りに」
「そうなると、この囲炉裏からは別のものに思いが入ったんだよ」
うーむ、なんとなくわかったような、わからないような・・・・・。
「つまり、思い出したいことを、その時一番思いの入った者があればいいと言うことですか?」
「そういうこと。さっ、なんか思い出したいことはないかい?」
やっと言っていることが理解できたが、いざ何か思い出したいことがあるかと聞かれても、そんなものは急に思いつくものではなかった。
「すいません、もうちょっとまってください」
「ああ、別に気になさんな」
しばらく悩んでみるが全く思いつかない。こういうのを先ほどのたとえで言うと、本棚を探しているということなのだろうか。何か思い出したいことなあ・・・
「あっ」
そのときある事が脳裏に浮かび思わず声をだす。そうだ。見つけた。思い出したいこと。
「んっ、なんかあったのか? 言ってみろ」
「あ、はい。もう十年くらい前のことなんですけど、ある少女のことなんですよ」
そういって僕は思い出したいことを、彼に語り始めた。
昼間、村の端にある一軒の家にこの村の住人が集まっていた。この家は普段からあき家で、村で何か集まるときの集会場になっていた。その中、一人に男がなまりの聞いた声集まったみなに話をしていた。
「ええ、確かに見たんです。あれは篠田の家で飲んだ帰りです。途中まで送ってもらったあと、海沿いの道を歩いていたんですよ。それで、なんとなく海のほうを見たら、海岸に一人の女が居て。ありゃあ人魚に違いねえ、だってありゃオラが餓鬼の頃に見た人魚にそっくりだったんでさあ」
「うむ、わかった。定吉、もう帰っていいぞ」
私がそういうと、定吉はヘイと肯いて集会場を後にしていった。
「さて、どうするか・・・」
「まさか人魚がまた現れるなんで、大変なことになったな」
集まっている内の一人が呟いた。それを皮切りにみなが自分の思いを喋りだす。
「十年前のようなことが、また起きるっていうのかよ」
「おいおい、そんなのは御免だぜ。俺はまだ死にたくないんだよ」
「それはみなだって同じだよ」
「そうだよ、どうするんだ」
「いやだ!死にたくない・・・!」
いかんな、このままでは収集が付かなくなり、話が先には進まなくなってしまう。
「静まれ!」
一括入れると、先ほどのザワメキがなくなり、みな私のほうを見る。
「村長様・・・・」
「ともかく、何らかの対策を練るのだ。なんとしてでも十年前の悲劇を繰り返してはならん・・!」
「ですが、相手は妖怪ですよ? 一体どうすれば・・・」
「うむ・・・」
思わず唸る。そう、相手は人間ではない、妖怪なのだ。一体どうすればいいのか、私では検討も付かなかった。
ともかく、なにか対策を考えなければ・・・・。
「その相談、私が引き受けよう」
皆が静まり返っているとき、いきなり戸を開けて、洋服を着た若者が中に入ってきた。
「! 誰だ」
「いきなり失礼。ですがその妖怪、私が何とかしましょう」
入ってきた男は自信満々にそう言って見せた。
「本当かね!?」
一人が驚いて彼に問う。
「ええ、勿論。ただしそれ相当の報酬はもらいますが、よろしいですか?」
青年は確かめるように私に聞いてきた。みなの視線が私に集中する。
「・・うむ、それで村人が助かるのならば」
そういい、頷く。それを聞く洋服の男はとンンと小さくうなり、口元が釣りあがった。
「では、詳しい話をお聞かせ願いますか」
「ここがその桜の木です」
篠田は高台の広場に在る一本だけ在る木の前で足を止めた。
これがその桜の木らしいのだが、今は季節が外れているので、木には桜色はなく、力いっぱいの緑をつけていた。
「おし。じゃあ桜を見ながら、その時記憶を頭に思い浮かべてくれ」
「はい、わかりました」
篠田は桜の方をじっと見て、その時の記憶を思い出しているようだ。じゃあ、これからが俺の仕事だな。俺も桜に顔を向けて目を閉じる。
・・・・答えよ・・・祖が神よ・・・・・・
その瞬間、自分が何かの中に入ったような感覚になる。来たな。それじゃあ、あいつが求めている記憶の線を探してと・・・・。
(・・・・あれ?)
しかし、繋がっているとされている記憶の糸が見つからなかった。
桜との交わりを解き。目を開ける。
「おかしいな」
「どうしたんですか? 早くしてくださいよ」
篠田はこちらをチラリと見て、不安そうに聞いてきた。
「いや、どうやらお前のその記憶が、この桜の中にないようなんだよ」
「えっ、そうなんですか?」
彼もこの木だと確信していたようで、困惑したように驚く。
「他に思い当たる節はないのか?」
「この木以外となると、ほかは・・・・」
「そうか、困ったな・・・・」
そうとなると記憶を思い出さすことはできないではないか。こうなれば記憶を持ってそうな物を、片っ端から探すしかないか。
「んじゃその時に身に着けていた物なんかは・・・」
「・・・もういいですよ、一さん」
俺の言葉をさえぎるように篠田が言ってきた。
「もういいって」
「別にそこまで期待していたわけじゃないですし、ここに記憶がないのならば、もう見つからないと思いますから」
「だがしかし」
それでは俺の気分が晴れない。そう言おうとして再び言葉をさえぎられる。
「いいんですよ。別にお礼とかなんて、気にしないでください」
「うむ、そうか・・・」
そこまで言われてしまうとこれ以上彼に喰いつくのも失礼であろう。篠田は俺の諦めた様子を見て愛想笑いをする。
「では、私はこれで。これから集会場にいかなくてはならないので」
「ああ、そうか。悪いな、思い出さすことができんで」
「いやいや」
そういって篠田は俺に背を向け、坂道を下っていった。
さてと、結局記憶を思い出さすことができなくて、残念であったが、だからといってもうそれを探す気は無かった。何時までもここに居ても仕方がない。またのんびりと旅をするか。
「はあ、人魚の祟りですか」
御茶屋の椅子に座りながら、私は杉野様の話に耳を傾けた。
「ああ、もう十年ぐらい前の話らしいが、ここで人魚の親子が目撃されたらしいんだよ。しかし目撃した次の日から次々に漁師たちが原因不明の病で死んでしまってね。最終的には七人もの人が死んだらしい。もとからこの村には人魚の伝説が受け継がれているらしくてね。その中に、人魚を見た日には、人々に災いが起きるというものがあるんだよ。本当に今回の相手が人魚なのかはわからないけど、報酬が結構出るみたいだしね。引き受けることにしたのさ」
報酬で決めるなんて、杉野様らしい。もちろん報酬以外にも、この事件に興味があるので引き受けたのだろうが。
「多分今日くらいになにか仕掛けてくると思うから、準備しといてくれ。僕はもう少し、村長から話を聞いてくるよ」
「はい、わかりました」
それじゃあと、杉野様はこの村の集会場に再び向かって行った。相手は人魚か。となると今回は、対水用の装備を準備しておかなければ。
「あれ、梓じゃないか。こんな所でなにやっているんだ?」
準備を始めようとしたとき、突然、後ろから知り合いの声が聞こえてきて、ドキッとした。振り返ると、そこにはボロボロの袴を着た見知った男が立っていた。
「あっ、一さん。こんな所で会うなんて、奇遇ですね」
いきなり現れるので、少し驚いてしまった。一さんはいつものように淡々と話してくる。
「ああ、確かに。一人、のわけはないか。杉野の奴は何処にいるんだ?」
「杉野様は今、集会場のほうに」
「集会場に? なんでだ」
「今回の妖怪退治の相談にです」
「妖怪、ここにもなんか出るのか?」
一さんが妖怪と言う言葉に食いついてきた。こういう所は相変わらずか。
「ええ、なんでも人魚が出るらしいですよ。私たちもその話を隣の村で聞いたので、ここまできたんです」
私はそう言って、先ほど杉野様から聞いたこと、一さんに話してみせた。
僕が集会場に着くと、村長は変な男が話しこんでいた。なんでも十年ぶりに人魚が出たらしいのだ。変な男は人魚を退治しに来た男らしい。一さんといい、今日は他所から人がよく来るな。
「・・・?」
ふと集会場の隅を見ると、誰かが丸まって震えていた。
「源蔵さん、大丈夫ですか?」
声を掛けると源蔵さんはビクンと反応し、こちらのほうを見た。源蔵さんは私より一世代ほど上の人で、幼い頃から何かと遊んでもらった記憶がある。
「ああ、篠田か」
源蔵さんは安堵したように呟く。しかし顔色は良くなく、私と分かった後でも不安そうな様子であった。
「大丈夫ですか、顔が真っ青なんですけど」
「あ、ああ、大丈夫。別になんともないから・・・・」
「人魚のことなら大丈夫だと思いますよ。あの男の人が何とかしてくれますから」
源蔵さんは十年前の事件で仲の良かった友達を皆失ってしまっていた。そのため今回の事件はかなり堪えているだろう。別にあの男が本当に何とかしてくれるとは思ってはいない。だがしかし、源蔵さんを勇気づけるために言ったのだ。
「そ、そうだな。あの人が何とかしてくれるか。そうだよな。きっとそうだよな・・・」
源蔵さんは自分に言い聞かせるように、何度も言葉を繰り返したが、未だに震えは止まっていなかった。
「源蔵さん、気分転換に外でも散歩したらどうですか? こんなところで縮こまって怖がっているより、いくらか楽になると思うんですけど」
「だけど・・・」
ここまで人魚を恐れているのか、あまり外には出たがってはいなかった。しかし、こんな所で震えているよりかは、少し歩いて気分を落ち着かせたほうがいいと思った。
「大丈夫、僕も付き合いますから、ね?」
僕はそう言うと、源蔵さんの腕を取り、集会場を後にした。
茶屋の前、杉野は少しイライラした風に梓に話しかけている。
「はあ、こっちが仕事の話をしている間に、梓が準備してくれていると思ったら」
ワザとらしくため息をつく。あの後、暫く村長と話し合って、詳しい金額などを相談していたので、準備は全部梓に任せてあったのだ。が、しかし。
「なんで、いつの間にかにいる一と話し込んでいたのかな〜?」
「あうっ、すいません・・・」
冷たい目線を向けると、梓は申し訳そうに下を向く。まったくもう・・。
「いいじゃないか別に。準備といっても、どの札を使うか選ぶだけじゃないか。仕事の話だって、どうせ金のことだろ」
いつもの口調で一が横槍を入れてくる。この淡々とした口調が、どうも癇にさわるのだ。
「うるさい、お前はどっかにいってろ、仕事の邪魔なんだよ!」
「はいはい、わかったから少し落ち着け」
こいつはいつも人を上から見やがって。この態度がまたむかつく野郎のだ。
「にしても」
一は急に何かを考え始めたようである。なにか気になることでもあったのか?
「どうしたんですか、一さん?」
梓も一の態度が気になったようで、そのことを聞いていた。
「あっ、いや、ちょっとな。少し気になることがあってな」
「気になること?」
こいつの言葉に、俺も相づちを打つ。
「まあ、お前たちは気にするな」
「なんだよ、そこまで言っといて言わないのかよ」
「いいじゃないですか別に。ほら、気合入れていきましょう」
梓はなだめるように僕と一の間に入った
「ああ、わかったよ・・・」
たく、こいつはいつもこうなんだから。とは言え、相手がどのくらいかはわからないが、気をつけなければいけないのは確かなのだし。ここは梓の言うとおり、気合を入れていかなければ。
「おい、あれじゃないか? 今回の獲物は」
一が砂浜の方に目を向けて言った。僕と梓も砂浜のほうを見る。するとそこには、長髪の白い和服を着た女がぽつんと立っていた。
それは俺たちを見つけるとこちらのほうにトボトボと歩いてくる。
「梓、行くよ」
姿勢を構えて梓に問うと、
「はい」
と、彼女は頷いた。
それを合図に、同時に飛び出す。
その瞬間、杉野たちは砂浜に飛び出していき、素早く人魚に近づくと、あっという間に人魚は押さえ込まれ、その首元に梓が剣を突きつけた。
おかしいぞ。いくらなんでも全くの抵抗も無いなんて。それに十年前の人魚の呪いって言うのもなにか変だ。人魚の呪いというものは、人を5、6人殺すなんて小さいものじゃない。本来は村一つを飲み込む大災害を起こすものである。
「どうしたんですか?」
振り向くとそこには篠田ともう一人、俺の知らない男がいた。
「ああ、今人魚を退治中・・・かな」
「あの女の人影が人魚なんですか?別に普通の人間と変わらないようですけど。ここからじゃ少し見にくいですね」
「・・・・おい、そこのアンタ、大丈夫か?」
篠田は興味深そうに人魚を眺めていたが、隣の男は人魚のほうを見て、ありえないほどに震えていた。
「源蔵さん、大丈夫ですか?」
「ま、まさか、なんで・・・!」
「おい、ちょっと」
「あの時、殺したはずなのに・・・!」
その男の言葉に、俺と篠田は驚いた。篠田の反応を見るとこいつもそのことを知らなかったようで、彼に問いただす。
「えっ、源蔵さん、今なんて・・・・?」
「おい、殺したってお前。まさか」
「俺は止めとけって言ったんだよ。なのに、みんなが、みんなが・・・・」
目の前の標的であろう少女は梓に押さえられたまま弱弱しくこちらを見つめていた。
案外呆気ないものだな、もう少しやってくれると思ったのだけど。
「どうしますか、杉野様?」
梓が聞いてきた。彼女もあまりにあっけなさ過ぎて、少し戸惑っているようだ。
「構わん。やってしまえ」
別に弱かったところで、先に手を出してきたのはそちらということには変わりない。これは依頼なのだ。殺さずに逃がしてしまったら意味がない。
「待て」
気がつくと一がこちらにまで近付いてきていた。走ってきたのだろう、ハアハアと肩で息をしていた。
「なんだ、邪魔するのか一」
いくらこいつでも、仕事の邪魔をするのは許さない。そう思っていたが、どうも一の様子がおかしい事に気がつく。
「ちがうんだ。十年前の事は彼女じゃないんだよ」
「? どう言う意味だ」
「気をつけて・・・・」
「!」
先ほどまでまったく喋らなかったこの人魚が、梓に押さえられて少し苦しいのだろう、涙目になりながらも喋りだした。
「嵐が来る・・・・気をつけて・・・」
「嵐?」
源蔵さんのことも気にはなったのだが、いきなり走り出した一さんを見て、思わず僕も一さんの後を追いかけてきてしまった。
「一さん!?」
「ああ、篠田。お前、付いてきたのか・・」
「嵐がくるってどういうことだ!」
いきなり怒鳴り声が聞こえてきたので、声のほうを見てみると、先ほど村長と話をしていた男が、人魚らしい人に対して怒鳴りつけているのがみえた。
人魚は怯えた顔をし、目に涙を浮かべているが、それでもなにかを伝えようとしているようである。
「・・・?」
不意に何か不思議な印象を受けた
「ケホッ・・・・嵐が・・・来る」
「嵐が?」
「ふざけるな、何が嵐だ。こんな天気で嵐が来るはずないだろ!」
男はなおも怒鳴り続ける。確かに、少し曇ってはいるが、嵐が来る天気とは思えない。
「空気が湿ってきているが、こんなのだけで嵐が来るわけでもないしな・・・」
一さんが指をこすり合わせながらぼそりと呟いた。
空気が湿ってきた?
そういえば先ほどとは、比べ物にならないほどの湿り気があるのがわかる。
「もしかして、姫嵐か・・・」
「んっ、今なんか言ったか?」
「もしかしたら、嵐が来るかもしれないです!」
「本当か?」
僕のその一言に、一さんが驚いているようである。だが、こっちだって驚いている。けどもし嵐が起きるなら、姫嵐しかない。
「この地方には、昔からいきなり現れる嵐があるんですよ。姫嵐という名前が付いていましてね、どうしてその嵐が起きるかは分かりませんが、その嵐が起きる前兆というのが、湿気が急に多くなるんですよ」
「それは本当か?」
先ほどまで人魚に怒鳴りつけていた男が、こちらに視線を向けていた。
「多分ですけど。何しろ、その嵐が最後に起きたのは、十年前ですので・・・」
そこでハッとなる。確か、その嵐は彼女と会った後のことだった。
「じゃあお前は、その嵐が来るのを伝えるために、ここに現れたというのか」
再び人魚に怒鳴りつけた。すると彼女は弱弱しくも、コクリと頷いた。
「じゃあなんで、十年前に人々を呪ったんだ!」
「まて杉野。十年前の出来事は彼女のせいじゃない、むしろ彼女は被害者なんだ」
「どういう意味だ?」
「それはな・・・」
「皆さん、見てください。空が急に!」
一さんが何か語ろうとした瞬間。彼女を抑えていた女の人が空を見上げながら叫んだ。空には巨大な渦が現れ、風がだんだんと強くなった。
そして息も付かせぬまに、大粒の雨が降り出し、瞬く間に海も荒れていった。
ザアアアアアア・・・・
「あっ・・・」
抑えていた女の人が驚いたような反応をした。
そちらを見ると彼女が抑えつけていた子が、一瞬の隙を付いて逃げ出し、海のほうにとぼとぼと走り出していた。
「くっ!」
彼女は逃げていくあの子の動きを封じるために、懐からなにかを取り出そうとしたが、
「まてっ・・・・!」
と一さんが、彼女との間にはいった。
「! そこをどいてください、私たちの邪魔をするのですか!」
「どけん、彼女はお前たちに狩られる理由がない」
「どいてください!」
「もういい」
そのやり取りを区切るように、あの男が口を挟んだ。
「あっ・・・ですがここで・・・・」
「もういいと言っているだろ」
「・・・はい、わかりました」
彼女は落胆したように、しかし何処か安堵したようであった。
走り去っていく人魚を見ると、彼女は海に入る間際にチラリと僕のほうを見て、
スッと、
一滴の涙を流し。
海の中に入って行った。
ドキッ
ザザアアアアアアアア・・・・
「どう意味なんだ。彼女が被害者というのは、まさが」
彼女が涙を流したところに向かう
「おらがあ、おらが悪いんだ・・!」
「お前は確か、集会場に居た・・・」
「大樹が言い出したんだよ。食えば不老不死になれるって・・!!」
「なっ、お前まさか!!」
そこには一粒の真珠が落ちていた
ザザアアアアアアアアア・・・・・
時間が経ち、雨がより一層強くなってきた。
「みんな不老不死になりたかったんだ。それで、あの時偶然にも海岸にいた人魚の親子を八人でおそって・・・」
杉野があの男の話を聞いている中、一も同じように男を見ていた。
ああ、雨が強くてずぶ濡れになってしまったではないか。どこか雨をしのげる場所に移動したいがそんな空気でもないし。それにしてもまったく。人間というものはつくづく馬鹿な生き物である。そんな物で不老不死になれるだなんて信じて。なったところで、不老不死のどこがいいのだろうか。
「子供には逃げられちまったけど、親のほうは仕留めたんだよ。けど、いざ食うとなるとおらあ、怖くなって・・・・・」
「ふざけるなよ、お前!!」
「だって、不老不死に。不老不死なりたかったんだよ・・・!」
まあ、不老不死というのは、生き物が本能的に望んでいるものなのかもしれないな。
「ふう・・・・」
(ん?)
ふと、篠田の姿がどこにもないことに気が付いた。周りを見渡すと、先ほどあの人魚が海に入っていったところで、呆然と立ち尽くしているのを見つけた。
嵐の中、篠田は源蔵のことは気にせず、手の中にある小さな真珠を見ながら、ただ呆然とたちつくしていた。
思い出した。彼女が、あの時の子だ。
だけど、それしか思い出せない。
どんな会話をしたのかも。彼女がなぜ泣いていたのかも。
全く、思い出せない。思い出せないのだ・・・・・・。
彼女が目の前にいたのに、そのことを思い出せなかった自分が悔しくて。申し訳なかった。
ザザアアアアアアアアアアア・・・・・・・
「思い出したいんだろ?」
声がした。
振り向くと、そこには一さんがいた。
「思い出したいんだろ」
彼は再び聞いてきた。
「ですけど・・・」
「大丈夫。思い出せる」
彼はいつものように淡々と。
しかし力強く言った。
その言葉に、
少しだけ、勇気が出てきた。
ザアアアアアアア・・・・・・
「いいか、物を見て、その時の光景を思い浮かべろ」
彼に云われたとおり、真珠をじっと見て、あの時の光景を思い浮かべる。
うし、今度こそ俺の出番だ。
昼間のように俺も篠田の持っている真珠に意識を集中した。
・・・・答えよ・・・祖が神よ・・・・・・
意識が真珠の中に入っていくのを感じ取れた。
今度こそ、糸を見つける。
意識をより集中させ、記憶の線を・・・・・・
探し出す・・・!!!
「・・・・見つけた」
『大丈夫?』
桜の咲き誇る木の下で、僕は彼女を見つけた。
彼女は所々に傷があり、疲れたようにしゃがみこんでいた。
怯えきった顔をしていて、目には涙を浮かべている。
彼女は僕を見ると、まるで本物の鬼に見つかったような反応をした。
その震えは尋常じゃなく、そのまま死んでしまうようで、とても不安になって。
思わず、彼女を抱きしめていた。
まったく、あの時の私は何を考えていたのだろう。
もちろん彼女もそれに驚いて、しばらくジタバタと弱弱しく暴れていたが。
『大丈夫』
と、幼い私が言うと、急に落ち着いて。
そのまま二人とも寝てしまって。
気が付いたら、彼女はいなくなっていた。
彼女がいたところには、一粒の真珠だけが残っていた。
ザザアアアアアアアアア・・・・・・
「思い出した・・・」
なんで忘れてしまったのだろう。目頭がとても熱かった。
「篠田・・」
「いかなきゃ・・・」
思わずつぶやく。
「謝りにいかなくちゃ・・・」
なんでかはわからない。でも謝らなければいけない気がした。
「おい、篠田・・?!」
気が付くと、僕は海の中に飛び込んでいた。
ザザアアアアアアアアアア・・・・・・
「篠田・・・」
一がつぶやいた。
一体何を思ったのか、彼はこの荒れ狂う海の中に急に入っていったのだ。
「ひい、呪いだ、人魚の呪いだあああ!!!」
男は座り込んで叫んだ。
「ふざけるな!何が人魚の呪いだ! 十年前だって、人魚の毒にあたって死んだだけじゃないか。今回だって彼女は何も悪いことはしていない。お前たちの思いちがいじゃないかよ!」
ふざけるな全く。こいつら、自分の犯した罪を擦り付けるなんて。
そしてそのことに気づかずに彼女を殺そうとしてしまった自分にも、反吐が出た。
嵐の海の中、篠田は激流をただ飲まれているしかなかった。
ああ、何も考えもなしに飛び込んで、それで溺れて。ばかじゃないか、僕は。
けど仕方ない気がする。
だって僕は忘れていたのだから。
そう、彼女は僕の・・・・・
今度は私が助ける・・・・
薄れ行く意識の中で、そう聞こえた気がした。
「なんだかなー、今回のことは」
海沿いの道を僕と梓と一の三人で歩きながら、僕は呟いた。
「そうですよね、結局人魚の呪いなんてものじゃなくて、全部自分たちの過ちだったんですからねえ・・」
「後味が悪いな・・・」
「にしても、意外だったな。お前が金を受け取らないなんて」
一が茶化すように聞いてくる。
「今回のことは結局、人魚のせいじゃなかったんだし、退治もしていないんだ。そんなので貰うわけにはいかないだろ」
こっちにだってプライドってものがある。いくらなんでも、やってない仕事の金をもらう気なんてまったくない。
「それにしても、篠田さんは大丈夫なんでしょうか・・」
梓が心配そうに聞いてくる。あの後、一晩中嵐は止まず、その後一日中村人と探しては見たが結局は見つからず、僕たちは村を後にしたのである。
「あの時に海に出ていた船は偶々いなくて、唯一の被害が篠田だけって事だってな」
一が偶々の部分を強調して言う。何が偶々なものか。昨日は人魚が出たということで昼間、男共は漁をせずにみな集会場にいて難を逃れたのだ。結局彼女が現れたからこそ、被害は最小限に抑えられたのだ。
「まあ、あの大嵐だ。助かる見込みはほとんどないだろうな・・・」
そう、あの嵐の中で篠田と言うは男は無事なはずがない。嫌なことだが、それが現実なのである。
「なあに、気に寸なって」
一は心配なさそうに言ってきた。そのあまりに楽天的な雰囲気に、思わず呆れてしまう。
「なんでそういえるのですか?」
梓が不思議そうに一に尋ねる。すると、
「あいつは、海の姫に好かれているからな」
そういって、小さく微笑んだ。
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