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第7話 村にて(2)

今後、週一更新になります。

 袋の中身を確かめていた男が、こちらをじっと見て来る。何か問題でもあったのか?

「嬢ちゃん、これ、本当にお前が仕留めたのか?」

 灰色狼の尻尾を持って、そうたずねてくる男。

「……どういう意味ですか?」

 少しいらついたので、声がとげとげしいものになる。確かに、魔物を倒すのに一太刀で済んだとはいえ、楽だったわけではない。下手すれば、こちらが死ぬかもしれないのだ。

「すまん」

 僕の発する怒気に気付いたのか、男はあっさりと謝る。

「証拠品がある以上、お前が仕留めたということは、理解できる。理解できるが、信じがたいというか……」

 まじまじとこちらを見ながら、男はそう言う。

 なんとなくわかる気がする。140センチない身長と童顔から、僕は子どもにしか見えていないのだろう。道を尋ねた老人と目の前の男が『嬢ちゃん』と僕のことを呼んできたことからも分かる。この体は、14歳の女の子なのだから、間違ってはいないのだけれど……

「……鑑定は、終わりましたか?」

「? 終わったぞ」

 微妙に落ち込んだ僕の問いに、首をかしげながら男は答える。

「内訳は、大鼠の毛皮3枚、角兎の角2本、灰色狼の毛皮11枚、牙7本、尻尾2本だ。しめて、銀貨45枚だ」

 高いのか、安いのかよくわからない。まあ、冒険者ギルドという、いわゆる全国チェーン店ならば、きっちりと相場は決まっているはずだから、適正価格ということなのだろう。

 小袋に入った銀貨を受け取り、その中から一枚取り出す。そして、自分が持っている、ゲームで使われていた銀貨を取り出し比べてみる。

「……同じだ」

 どうやらゲームのお金は使えるみたいだ。

「おいおい、嬢ちゃん。そんなことしなくても、ちゃんとした金だぜ」

 男が、苦笑しながら言って来る。

「僕の持っているお金が使えるか、確かめただけですよ」

「あん? どういうことだ?」

 ちょうどいいや、この男から、いろいろ聞きだそう。


 とりあえず、経歴をでっち上げていろいろ聞きだした。

 まず、ここがシルヴィア王国のブリジット辺境県であること。

 そして、この辺を治めているのが、ガドガー・セリン・ブリジット辺境伯とのことだ。

「変わりもんでな、中央に行かず、領地に引っ込んでいるんだ」

 貴族ならば、王都シルヴィアで政治に参加して、領地は代官にまかせっきりという人が多い中、辺境伯は県都ブリジットで領地経営に精を出しているということだ。

「ふーん」

「興味なさげだな」

 実際あまり興味はないが、情報としては取っておこう。

 ワルタの村から県都ブリジットまでは、街道を使い、馬車を使って約一週間かかるという。途中『馬車溜り』という施設があるが、徒歩での移動はあまりお勧めできない。

「パーティーを組んでいるやつらならともかく、一人の場合魔物の襲撃に警戒出来ない。死にに行くようなもんだ」

 結界張ればなんとか行けるような気もするけど、それは僕がチートだからだろう。普通の人には無理だろうな。

 王都まではもっとかかるのだが、県都と王都を繋ぐ移動魔法陣のおかげで、ほんの一瞬だそうだ。

 続いて、お金について。

 この世界で普通に使われているお金は、金貨、半金貨、銀貨、半銀貨、銅貨の5種類だそうだ。他に、水晶貨というのもあるそうだが、一般の人には縁のない貨幣で、主に国際間での取引に使われているものだ。また、お金は世界共通で、どこに行っても使えるとのことだ。

「だいたい、銅貨10枚あれば一日生活できる。銀貨2枚あれば、一家四人が一ヶ月は暮らせるだろう」

 ちなみに、銅貨50枚で半銀貨1枚、半銀貨2枚で銀貨1枚、銀貨50枚で半金貨1枚、半金貨2枚で金貨1枚だそうだ。

 それで行くと、ドロップアイテムの銀貨45枚って、高くね。

「ドロップアイテムは、高級衣服や防具に使う。一般ではもっと安い素材を使っている。大体、手に入れるのが命がけなんだから、高くなるのは当たり前だろう」

「……納得しました」

 ワルタの村について。

 元々は、ただの農村だったのだが、10年ほど前、爵位を継いだガドガー氏が街道の整備事業を始め、隣国、アンシアン帝国まで続く立派な街道を作ったのだ。

 流通を活発にするという目的を掲げていたが、帝国との交易は海路中心で、陸路はあまり重視されていない。真の目的は、ガドガー氏が、帝国で行われる有名な祭りを見物に行くためだそうだ。

 その時期になると、街道を行き来する人数が増える。必然的にこの村に訪れる人も増え、その時期だけ開かれる宿や、商店が街道沿いに発展する。しかし、祭りの時期限定で平素は農作業中心となる。その為、こんな中途半端な村になったそうだ。

「……ガドガー氏は……」

「言わない方が良いぜ」

 一応曲がりなりにも領主さまの悪口はよしておこう。

 冒険者ギルドについて。

 曲がりなりにも所属しようとしている組織なので、まじめに聞く。

「冒険者ギルドとは、冒険者の冒険者による冒険者のための組織だ」

 なんか、某国の政治家の発言に似ている。

 要するに、冒険者の地位向上のため、組織されたものだ。

ギルドが出来る前は、冒険者というと、依頼の取り合いで殺し合いをしたり、ドロップアイテムを安く買いたたかれたり、それに切れて商店を襲ったりと、ならず者と同意義だった。

 これではいけないと思った、一部の良心的な冒険者たちが立ち上げたのが、現在のギルドの原型となったものだ。初めは苦労したそうだが、確実に実績を積み、信頼を得て、今の規模になったということだ。

「だから、現在でもギルドの規則を破るやつには厳しい罰則がある。規則自体は、ごく普通のものだがな」

 そう言って、男―どうやらギルドマスターらしい―は、いくつか例を挙げたのだが、ごく当たり前のことがほとんどだった。

「ギルドに入るにはどうしたら?」

「簡単な審査を受ければ、誰でも入れる」

 入りたいと伝えると、マスターは黒水晶の玉を取り出した。

「なんですか? これ」

「登録球だ。これに基本情報を読み込ませた後、登録カードに転写して登録完了だ」

 基本情報? どこまでかは分からないけど、ちょっとまずいような気が……

「その情報は……」

「ん? ああ、俺を含めてギルド職員であろうと見ることは出来んよ」

 ちょっと安心した。

「犯罪とか起こされたら、すべて公表するけどな」

 それはまあ、良いだろう。起こさなきゃいいだけの話だ。

 言われた通り水晶に手を置くと、一瞬何かが体の中を駆け抜けたような感じがした。

「終わりだ。もう良いぞ」

「随分とあっけないですね」

「まあな、昔はいちいち書いてもらっていたんだが、これが出来てだいぶ楽になったな」

 水晶を叩きながら、マスターが答える。

「カードが出来るまで少しかかる。その間にカードの説明をしてやろう」

 冒険者カードは、単に冒険者の身分を保障するものだけではないのだそうだ。

「ギルドに金を預けていれば、提携店で財布としても使える。また、登録すれば、相手と連絡することも可能だ」

 また、魔物を倒した記録が残る機能や、魔物の種類や薬草の種類を調べる図鑑機能も付いているというのだ。なんというか携帯みたいだな。

「便利なものだが、かなり高いぞ。初めての時はタダだが、再発行の時は、半金貨1枚払ってもらう」

 一般家庭が2年は暮らせる値段ですか。かなり高額ですね。

「ほれ、お前さんのカードだ」

 マスターはそう言って、金属の板を渡してきた。


『ビリノア・バクスター 女 神人 14歳 冒険者ランクF』


 書かれていたのは、これだけだった。

「職業とかは、ないんですね」

「まあな。どんな職業であろうと、冒険者は冒険者として扱われる。同じように、種族、性別、年齢、身分なんか全く関係がない。あるのは、実力だけだ」

 シンプルで分かりやすいです。


誤字、脱字、感想お待ちしています。


5月28日 修正しました

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