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番外編④ 騎士団員の憂鬱(後)

やっと終わりました。

「みんなー! 元気ーー?」

『元気ーー!!』

「うん、良い返事!」

『うおおおおおお!!』

「それじゃあ、今日の一発目。いくよーーーー!!」

『うおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 ビリノアちゃんと舞台のそでで見ているのだが、いつもの通りうるさい。

「……」

隣で、ビリノアちゃんは茫然としている。『ゼンガー・ラキス』の公演を、始めて見るからだろう。現に、私も始めて見た時はそうなったからだ。

「ビックリした?」

「……した」

 私の問いかけに、いまだ驚きが抜けきれないようだが、ビリノアちゃんが答えを返す。

「ここはうるさいから、奥に行こうか?」

「え? 護衛だからここにいないと……」

「大丈夫だよ」

 最前列で警備をしているのは、国軍の兵士たちだ。通路の所々に立っていたり、扉の前に立っていたりする警備員も兵士である。

「それに、舞台と客席の間には、透明な防護壁が魔法によって築かれている。ちょっとやそっとじゃ彼女たちを傷つけることは出来ないよ」

 出来るとしたら、この劇場が潰れる(物理的に)くらいの攻撃力がある攻撃ぐらいなものだろう。

「だから、控室に行こうか?」

 それとも終わりまで見る? と聞いたところ、帰ってきた答えは控室に行くというものだったので、連れだって控室へ移動する。

「それにしても、すごい熱気だった」

「あはははは。そうだね。毎回のことだけど、今日は特にすごいよ」

「今日は?」

「うん。理由は簡単。正規メンバー十六人が全員そろっているから」

 アイドルグループ『ゼンガー・ラキス』は、六十四人が所属している。

 そのうち、人気投票で上位十六位までが正規メンバーと呼ばれ、グループの中心的役割を務める。

 公演自体は、カパタル劇場で毎日行われているが、いつもは正規メンバーが二~四人と他のメンバーという組み合わせで行われる。地方公演もあるが、これも正規メンバー二~四人と他メンバーという組み合わせで行われる。

「正規メンバー十六人が一堂にそろって公演するのは、一ヶ月に一、二度位だから、その日は大盛り上がりになる」

「へ~。そうなんだ」

 色々話していると、思いのほか早く控室に着く。

「コンサートが終わるまで、時間はあるからお茶でも飲んで待っていようか」

 そう言いながら、控室のドアを開けると……

「あ~ら、クリスティーナちゃんじゃない。今日はどうしたの? うち(ゼンガー・ラキス)に入ってくれる気になったの~?」

 野太い声とともに、それ(・・)の姿が目に飛び込んでくる。

 まず目に入ってくるのは、筋骨隆々とした身体。日焼けなのだろうか、褐色の身体は、なにもつけていないにもかかわらず、てかてかと光っている。身に纏っているものが、ピンクでラメ付きのブーメランという男性用水着であるために良く判る。

 顔は、悪くない。中年の顔ではあるものの、二枚目と言えるほどではないが、整っていると言える。舌を出して、ウインクしているのは、ちょっといただけないが……。

 髪は、頭頂部を残して全部剃り上げている。残された髪は、三つ編みにしてピンクの小さなリボンで結んである。

 全体として、中年男としてはかなりいいものがあると言えるのだが、その体で女の子(女性ではない)のようにしゃべり、身をくねらせるのは……

「くたばれ! 変質者!!」

 入ってくるなり、そう言ってそれ(・・)を殴り飛ばしたビリノアちゃんの言葉が、的確だろう。

 ……うん。腰の入ったいいパンチだ。相手が吹っ飛び、壁に人型(何故か髪の毛まできっちりとあいている)穴を開ける。

「な~にするのよ。小娘ちゃんが~」

「黙れ! お前のような変質者から、お嬢様(レギーナ様のこと)を守るのが僕たちの仕事だ!!」

 うん、ビリノアちゃんの言っていることは正しい。ただし、前提が間違っているが。

「ビリノアちゃん」

「なに? 今、僕は、この変質者を()るので忙しいんだけど!」

「残念だけど、それは止めてもらうよ」

 本当に残念だけど。

「その人は、お嬢様が所属する『ゼンガー・ラキス』の総プロデューサーのドォール・ハリーフさんです」

「は?」

「うふ。よろしくね~」

 そう言って、ウインクする姿は、やはりどう見ても変質者のものだった。


「すいませんでしたー」

 あまりのショックに、固まっていたビリノアちゃんが再起動して初めにしたのが、ハリーフさんに謝ることでした。

「うふ、いいのよ。慣れてるから」

 あっさりと許すハリーフさんだが、慣れているとは?

「どういう訳か、私と会う人は、みんな同じ反応するのよね~」

 困惑したように話すのだが、何となく分かる気がする。

「あの~、いつもそんな恰好で……?」

「そうよ~。おしゃれでしょう」

 同意は出来ない。私が警備員だったら、即座に取り押さえて通報する。

「他に服は……?」

「有るわよ~。今日はピンクの気分だったからピンクにしたの」

「……」

 色違いの同じ物しかもっていない。言外にそう言っている。

「それにしても~」

 呆れている私たちに構うことなく、ハリーフさんが話題を変える。

「あなた神人? 珍しいわね」

「そう、ですね。みんな出不精(引きこもり)ですから」

 ん? なんか不思議な副音声が聞こえたような……

「う~ん。そう言えば、あなた可愛いわね~」

 ニヤリと笑い、ハリーフさんはビリノアちゃんにそう言った。その途端、ビリノアちゃんが座っていた椅子ごとハリーフさんから距離をとる。

 気持、私も距離をとることにした。

「あ~ら、別に、取って食おうとしようとした訳じゃないのよ~」

 こっちへいらっしゃ~いと、手招きするハリーフさんに、ビリノアちゃんは全力で拒否する。

「そう、じゃ、そのままでいいわ。あなた、うちに入らない? 出来れば、クリスティーナちゃんにも入ってもらいたいのだけど……」

「「全力で、お断りします!!」」


 その後、コンサートが終わるまで、ハリーフさんの勧誘が続いた。

 護衛の仕事よりも疲れる出来事だったことを、ここに記そう。

 この時から、私たちどちらかが護衛に行くと、ハリーフさんからの勧誘攻めに遭うはめになるのであった。


何というか、筆がのりました。

番外編なのに三部作……やりすぎだったかな?

それではキャラのその後を

クリスティーナ:順調に騎士団内で出世していき、初の黒曜騎士団団長に就任する。結婚、妊娠、出産と、女の節目も経験したが、引退はせず、そのまま騎士団をまとめ上げる。

レギーナ:ゼンガー・ラキスを引退後、公爵家に降嫁する。そこで、公爵家の財産を使い、芸術活動をしている人たちの支援を始める。多くの芸術家を支援したことから、芸術の母と呼ばれることになる。

アニエス:レギーナの侍女として、公爵家まで付いていく。結婚もせず、その一生をレギーナの世話に充てる。

ドォール:敏腕プロデューサーとして、着実に成果を上げる。とある男に夢中になっているらしいが……

以上

さて、この番外編も後一話くらいで終わらせ、新作のほうに入りたいと思っています。

まだ、はっきりと形ができていませんが、アイディアはたくさんあるので、その中から作っていきたいと思っています。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

最後に……

誤字、脱字、指摘、感想お待ちしています。

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