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番外編① リリアとワルタ村

番外編開始です。

時系列的には、最終話から数年後といったところです。

「パン屋『トリーティクム』にようこそ」

 奥の厨房で、売り子さんが客の相手をしているのを聞きながら、パンの生地をこねる。

「絶対、手を抜かないでくださいね。私たちにとっては何百何千に一個かもしれないけど、お客さまにとっては唯一の一個なのですから」

「「「分かりました」」」

 厨房で働いている三人が、真剣に答えてくる。

 その答えに満足して、再び作業に戻ろうとした時、売り子さんが厨房の方に顔を出してきた。

「店長。お客さまです」

「やあ、リリアちゃん。久しぶり」

「ビリノアちゃん!」

 売り子さんの後ろから顔を出したのは、私の親友であるビリノアちゃんだった。

「久しぶりだから、話でも……と思ったけど……」

 厨房の中を見回して、ビリノアちゃんは声を濁らせる。

「大丈夫ですよ、店長」

「後は、我々でも出来ます」

「そうです。久しぶりなのでしょう」

 三人が、口々にそう言う。

しかし、“町”唯一のパン屋だから、忙しくないはずがない。

 躊躇していると……

「大丈夫です。我々もメアリ師匠に鍛えられたのです。後半日くらいどうにか出来ますよ」

 そこまで言われたら、信じてあげない訳にはいかない。

「じゃあ、後お願い」

「「「分かりました」」」

 元気に返事する三人に後を任せ、ビリノアちゃんと外に出ることにした。


「それにしても、この辺りも変わったな~」

 ビリノアちゃんが周りを見回しながらそう言う。

 今、私たちがいるところは以前ビリノアちゃんが決闘した中央広場だ。

 あの時は、ただ少し道路が広くなっているだけの場所が、今ではちゃんと広場としての機能している状態になっている。人の数も多く、屋台も出ている。

「そうだね。どんどん人が増えてきているからね。もっと賑やかになるかも……」

 ここが発展してきたのは、ビリノアちゃんがパンと砂糖の作り方を伝えてくれたからである。

 ビリノアちゃんが伝えたパンの作り方は、神殿に特許の申請をお母さんがして、受け入れられている。本来なら、ビリノアちゃんの名前で取るのが筋なのだが『ん~、メアリさんの名前で良いよ』とあっさりとお母さんに譲ったのだ。

 結果、パンの製法はお母さんの物になった。

その後、評判はパンを食べて感動した人たちの口コミで広がり、領主さまや王さまの耳に入るまでになった。その結果、王さまに味を認められ、ワルタのパンとしてブランド化していった。

「弟子入り志願の人がたくさん来た時は、どうしようかと思ったよ」

「大変だったみたいだね」

「そうだけど、もっと大変だったのは村長の方だったかも……」

 理由は、ビリノアちゃんの残していったもう一つの方、砂糖の精製法。それを、ワルタ村で特許申請して受け入れられたことである。

 そもそも、砂糖と言う物は貴重品であり、貴族や一部の裕福な商人の嗜好品だった。

 何故、貴重なのか? それは、砂糖がある一部の植物モンスターからのドロップ品だったからだ。モンスターからのドロップ品と言うこともあり、とれる数が少ない上、この国には出現しないモンスターの為、ほとんどが輸入であり、さらに高価な品物となっていたのだ。

 そこに、それに及ばないながらも、十分甘味料として使えるものが出来たとしたら? 答えは決まっている。誰でも飛びつくだろう。現に、村に定期的に来ていた商隊が大量に注文してきた。

 特許を取得したので、ほぼ村の専売商品となり、隣国の帝国からも商人がやってくるほどになった。今では、帝国へ続く街道を『砂糖の道』と呼ぶようになった。

 砂糖の専売と、パンのブランド化によりどんどん人が入ってきて、村から町へ、さらに都市へ発展するのも時間の問題となっている。

「ここまで来るのは、大変だったみたいだよ。巨額の利益に目がくらんだ人が群がってきたりしたから……」

「ふーん。大変そうだね」

「……他人事のように言っているけど、|元々の原因《パンと砂糖の製法を教えたこと》は、ビリノアちゃんだからね」

「Oh、そうだった」

 天を仰ぐビリノアちゃんの姿を、笑いながら眺める。

「まあ、硬い話はここまで。久しぶりなんだし、もっといろいろ話そ♪」

 幸い、明日は休みだし、時間はたっぷりある。

 楽しい時間を過ごそうね? ビリノアちゃん♪


番外編という形で、少しの間書いていこうかなと思っています。

短い物になってしまうかもしれませんが、ご容赦いただけるとありがたいです。


ちなみに、リリアちゃんの家族のその後は……

メアリ(母)……宿を切り盛りしていたが、あんまりにも多くの人が弟子入り志願としてきたため、広めの家を借りパン教室を開き、本格的に指導することになる。むろん、宿屋は続けている。

シリル(姉)……ビリノアが村を出て行った後、幼馴染と結婚。しばらくは、専業主婦をしていたが、母親が忙しくなったことを知り、旦那とともに宿を継ぐ決意をする。今は、料理の猛勉強中。

父と兄……相変わらず農業をしているが、作る作物は変わってきている。以前は多くの種類の野菜を作っていたが、今は野菜は自分の家と宿の分だけ、後は全部パンのための小麦。ちなみに、兄は結婚済み。子供もいる。

……という風に考えています。


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