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第32話 危機(会議?)

忙しくて、なかなかまとまった時間が取れない……

「では、対策会議を始める」

 そう発言したのは、ガドガー・セリン・ブリジット辺境伯。対策会議の議長である。

 ここは、県都ブリジットの中心部にある領主の館の会議室である。

 今、まさに夜魔王による都市侵攻の対策会議が始まろうとしていた。

 会議の出席者は、議長であるブリジット伯、新市街地の代表アドォト・サラク西区長、旧市街地の代表カーシャ・ショウ・ハルケ女男爵、商工ギルド長カラバド・サウカラード、冒険者ギルド長ハーセル・ドゥート、黒曜騎士団団長エンリコ・ウィーティス、その相談役ガルバ・ラインダム、そして何故か僕という八人である。

「始める前に、少しよろしいかな?」

 そう発言を求めたのは、カラバド商工ギルド長。

「君はいったい誰なのだ?」

 その質問により、ガルバさんとエンリコさんを除く五人の視線が僕に集まる。

「えっと、僕は……」

「彼女は、騎士見習いの一人でビリノア・バクスターと言います。今回の作戦の説明をさせるために、この場に連れてきました」

 エンリコさんの説明と、僕が着ている騎士服から納得したのか、それ以上の追及はなかったことに、少しほっとした。

 まあ、エンリコさんの言った騎士見習いという身分は、実は本当なのである。

 今回の作戦の骨子は僕のアイディアからきているので、説明するのは僕が良いということになったのだが、一つ問題があった。

 説明するのは良いが、僕の身分(Fランク)見た目(子ども)が説得力をなくしているということだ。

 色々と考えたのだが、ここは単純に行くことにした。

 すなわち、作戦はエンリコさんとガルバさんが考えたことにして、口下手な二人に変わり僕が説明するという風にしたのである。

 その為に用意されたのが、騎士見習いの身分だが……

『ああ、自分が認めたらそれで決定ですよ。公式の身分として登録されます。冒険者カードにも登録されていますよ』

 軽くエンリコさんに言われ確認してみると、確かにカードに登録されていた。

 これで僕の持つ肩書は、『Fランク冒険者』『ブリジット商工ギルド員』『見習い騎士』の三つになったわけだ。

「作戦の説明ということは、もう騎士団の方ではまとめてあるということか?」

「はい。すでに黒曜、辺境、両騎士団に通達して準備に取り掛かっております」

 エンリコさんの言葉に、会議の参加者がざわつく。

「勝手なことを……。それならば、この会議は必要ない、とでも言いに来たのかしら?」

「いいえ、ハルケ男爵。そうではありません。今回の場合、時間が足りない上に、戦略の幅が非常に狭くなっているのです。その為、とる作戦の骨子はほとんど変わらないのです」

「ふん。それなら、この会議で何だというのだ?」

「作戦の仔細を説明することと、みなさんに協力を依頼するということですよ、サウスカラードギルド長」

 エンリコさんの言葉に、うなずくブリジット伯、ハーセル冒険者ギルド長、ガルバさんの軍経験者達。

 カラバド商工ギルド長が黙ったのを確認して、ブリジット伯が話を進める。

「質問がなければ、話を進める。作戦は出来ているのだな。ビリノアだったか? 説明をしてくれ」

「はい」

 返事をして立ちあがる。

「まず、作戦の説明の前に、状況の説明から入ります」

 こちらの主戦力が、三千五百程であることと、最悪、敵の戦力がこちらの戦力の十倍になる恐れがあることを正直に話す。

「敵は、武器や魔法といったものをまだ手に入れていないようなので、十分に迎え撃つことが出来ると考えられます」

「ならば、簡単だ。魔法部隊が遠距離から魔法を撃ち込めばいい」

「残念ながら、その作戦は使えません、サラク西区長」

 至極簡単だと言いたげな口調で言ってきたアドォト西区長に、その作戦が使えないわけを説明する。

「魔法部隊の方々は、数人しか来ていません。その上、周りにある村々から人々を避難させるために、結界を張っているので県都防衛戦には多くとも五人くらいしか参加できないのです」

「「「「なんだ(です)ってー!!!!」」」」

「ふむ、やはりか……」

 知らなかった四人が叫ぶ中、ブリジット伯だけが冷静だった。ある程度の情報が入ってきているのだろう。

「こちらの夜魔王発見の報と前後する形で、とある情報が入ってきました」

「それは……?」

「クラス共和国で鬼王出現。ラーケンの町占拠」

 再びざわめく室内。

 まあ、無理もない。ラーケンは、国境を挟んですぐの所にある町だからだ。

町を占拠したため、人の武器を手に入れ、更に知識を増した鬼王軍が国境を越えてこちらに攻めてくる可能性は高いのだ。

「その為、国王様が下した決断は、北国境付近に蒼海、赤土、緑雨の三騎士団と、魔法部隊。こちらには、王国最強部隊を送る……です」

「北は殲滅。こちらは守り……か」

 部隊の規模から、ハーセル冒険者ギルド長が国王の構想を推測した。

「多分、その通りだと思います。しかし、我々は、籠城するのではなく相手を打ち負かそうと考えています」

「な、なにを言っている! 魔法部隊がいないのだぞ! 大人しく籠城する方がまだましだろう!!」

「そ、そうだ! その前に、我々市民は逃がしてくれるんだろうな!」

「優先的に転送陣を使わしてもらうわ」

「……少し黙っていろ……」

 口々に好き勝手なことを言う参加者たちに腹を据えかねたのか、低いが良く通る声でガルバさんがつぶやいた。

「進めてくれ」

 怒りに満ちたその声が聞こえたとたん、静かになる参加者たちを満足そうに見ながら、ガルバさんは話を進めるように言ってきた。

「はい。王がいると言っても、今回の場合はそう問題はありません。十分に勝算はあります」

 この言葉の根拠としては、王がまだ生まれたばかりであることが挙げられる。

 いくら知恵を持つと言っても、人並みの知恵を持つという訳ではない。その種のなかで、少々知恵が立つといった程度である。人の知識を学んだ時、王は脅威とみなされるのである。

 今回は、まだ人の知識に触れていない。力かカリスマかは知らないが、それだけで統率して攻めてくるのだから、数に任せた力押しで攻めてくるのが、容易に推測できる。

「その為、今回の作戦にはこれを使います」

 そう言って、テーブルの下から丸い球を取り出す。

「雷光球?」

「はい、魔法部隊が送れない代わりに……と、国王様から頂いてきた試作品の『強化雷光球』です。これを、投石機を使い敵陣の真ん中まで飛ばして使おうと思っています」

 試作品と銘打ってあるが、鑑定した結果は特に問題がなかった。いや、聞いていた以上の威力はあるだろう。

 しかし、これ一球しかないため、使いどころが難しい。決め手にはなるだろうが、そこまで行くにはどうしたらいいかということが問題になる。

「ただ闇雲に撃ち込んでも意味がありませんので、敵を一か所に固まらせてそこに撃ち込みたいと思っています。その為に必要な物の準備をお願いしたいのです」

「それは、我々に出来ることかな?」

「はい、特にサウスカラードギルド長の力を借りたいのです」

「なに? 俺にか?」

「はい。用意してもらいたい物は、商人、職人を束ねるあなたに頼むのが、一番効率が良いのです。後、他の方々にもいくつか頼みたいことがあります」

「む……」

「転移陣の無料使用や、避難施設の使用許可は既に取ってあります。この都市の人々が全て避難してもおつりがくるくらい、収容人数はありますので、その点は安心してください」

「それならば……」

 この瞬間から、県都ブリジットは対夜魔王戦へ向け、足並みをそろえていくことになった。


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