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第29話 危機(個人的な) (前)

短い、そしてギリギリ投稿のため、推敲できてません。

 えーっと、現在の僕の状況を簡潔に述べます。

 手は、後ろで縛られており、その上からさらにぐるぐると縛られています。

 足は、足首の辺りを縛られており、その上石畳の床の上に座らされています。

 その上、首に良く切れそうな剣があてられています。

「どうだ、わしがここまで頼んでいるんだ。快く引き受けてくれるだろう」

 そして、目の前には、椅子に偉そうにふんぞり返って座っている肥った男……スパルク・ラカトリアーヌがいた。


「は? 指名依頼?」

 事の発端は、ギルドに仕事の完了を知らせに行ったことからだった。

「そう、ビリノアちゃんを指名してきているの、依頼者が」

「なんで?」

「こっちが知りたいわ」

 顔見知りとなった受付のお姉さん―ミリアさんが、僕の疑問に対して返してくる。

 指名依頼とは、依頼者が冒険者あるいはパーティーを指名して依頼を出すというものである。

 時々ある依頼の形ではあるのだが、今回、僕が指名されたというのは本当にありえないということだ。

 こういう形の依頼は、元来高ランク冒険者やパーティーに出されるのであるが、僕はEランクという低ランク冒険者である。雑務依頼を多く引き受けているため、多少街の人たちに知られてはいるのだが、指名されるほどかと言うと、そこまでではないのだ。

「どうしよう?」

「ん~、個人的な意見だけど、受けない方がいいと思うわ」

 その意見には賛成だ。

 冒険者としては全く無名の僕なのに指名しているということもあるが、その依頼内容も怪しさ満載なのである。

「『依頼したいことあり、至急連絡されたし』ふざけているの? これ」

 依頼書に書いてあったのはそれだけ。連絡先も書いてはあったのだが、街に在る安宿の名前で、どういう依頼人かと言うことを知ることも出来ない。

「なんで、こんな依頼を紹介するのかな? いや、その前になんで受理されてるの?」

「指名依頼を本人に伝えるのは、義務だから仕方ない。なんで受理されたかは、分からないわ」

 非常にキナ臭い話になってきたみたいだ。

 こんないい加減な依頼をギルドに受理させるなど、相当な権力(ちから)を持ったものが動いている可能性がある。なお且つ、そんなものを持っているのなら、僕に関する情報もある程度は握っていると考えていいだろう。

「う~ん、少し警戒が必要か? いや、逆に……」

「お~い、ビリノアちゃん? お~い」

「しかし……だけれども……」

「……ダメだ。こりゃ」

 結論から言うと、依頼を受けることにした。

 しかし、相手の土俵で会うという訳にはいかないので、後日ギルド内で話を聞くということを伝言として連絡先に入れてもらうことにしたのだ。

 とりあえず、ここまでやったということで気を抜いたのがいけなかったのだろう。

 大きな相手なのだから、監視もされているという可能性を考えなくてはならなかったのだ。

 ……まあ、あそこまで非常識な方法をとるとは思わなかったが。


「白昼堂々、眠りの呪文で眠らせて拉致してきた上に、剣を突き付けて頼みごと? 脅迫の間違いでは?」

 そう、道を歩いていたら、変な魔力を感じたのだ。こんなところで、まさかという考えが、行動を一拍遅くした。個人を対象にしたものでなく、空間に、強力な眠りの魔法がかけられたのだろう、薄れゆく意識の中何人もの人たちが倒れているのを見かけたからだ。

 眠りの魔法は、禁呪指定されているのだ。

 この魔法は、魔物に対して魔力が少ない人が身を守るために開発されたということだが、何故か魔物には効かず、人に効くという効果が出てしまったということだ。しかも、魔力が少ない人向けに開発された魔法であるため、かなり少ない力で発動可能であった。構成もかなり単純化されており、初心者に毛が生えた程度でも使えると言った具合だ。

 簡単に習得でき、使う魔力は少ない。しかも、効果は抜群。少し頭の良い奴なら、この危険性が分かるだろう。そう、犯罪に使うにはぴったりなのだ。

 まず、簡単に習得できるというのがまずい。要するに、仕組みさえ分かっていれば誰でも使える―たとえ犯罪者だとしても。

 次に、使う魔力が少ないということだ。これは、使う時にばれにくいということを表す。

 通常、魔法を使う時は、何と表現したらよいか分からないが、ゆらぎみたいなものが発生する。これは、使う魔法の魔力が多ければ多いほどゆらぎも大きくなるのだ。逆を言えば、使う魔力が少ないほどゆらぎが少ない、すなわち感知されにくいということになるのだ。

 効果が抜群であることは、言うまでもないだろう。

 簡単で、気付かれにくく、高威力。おまけに範囲攻撃も出来るとなれば、犯罪に使われること間違いなし……今回、僕に使われたように……

「頼んでおるだろ、こうして、誠心誠意を持って」

「お前の態度が誠心誠意というのなら、この世のすべての人の態度が誠心誠意で構成されているな」

「口が悪いな。貴様の立場がどういうものか知ってのことか?」

 そんなことは、百も承知だ。

 縛られている上に、魔力封じ、使い魔封じが施されている。

いる場所は、眠っていつ間に運び込まれたのだが、悪趣味な内装から、目の前のスパルクの元工房兼屋敷だろう。

 部屋の中には、スパルクと僕に剣を突き付けている男のほかに、スパルクを守るように立っている二人の男と、壁際にも三人程の男がいる。それぞれ、剣だの槍だのの得物を持っているのが確認できる。

 暴れようにも縛られているし、暴れられたとしてもすぐに取り押さえられ殺られるだろう。

「解っておるのだろう。だったら、大人しくわしの言うことを聞いた方がいいという判断が出来るだろう」

 そう言って、スパルクは笑う。

 自分の言うことは、すべて受け入れられるということを信じて疑い無いかのように……


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