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第28話 お魚クエスト(後)

早めに書けたので投稿します。

少し短いです。

 石槍に刺し貫かれた夜魔が、光と消えたことを確認して、僕たちはそろって安堵の息を出す。

「主、やったぞ」

「うん、よく出来ました」

 子供をほめるような言い方になってしまったが、実際よく考えて戦ったものだ。

 まず初めに石弾を当てて、単純な夜魔の注意を全て自分に向けて周りの安全を計る。と同時に、どれくらいの攻撃が通るのかを確認する。

 頭に直でぶつかってもダメージが入らなかったので、石弾などの小技ではダメという判断をしたラピスは、大技で決めることを決意するが、大技は溜めの時間が必要であり、普通に撃っても避けられる恐れがあった。

 よって、とった戦法は持久戦。

 自分の体格では、防御しても意味がないと考えられるので、避けることを重点に置く。幸い、大ぶりな攻撃なので、しなる鞭のような攻撃でも避けられないことはない。

 こちら側の持久力に関しては問題ない。ラピスは、精霊の一種で魔力の塊、そして使い魔と言うこともあり、僕の魔力がある限り動けなくなることはない。夜魔の方は、並外れた体力はあるものの生物の一種、疲労というものはある。ましてや、小さな当たり難い的に全力攻撃を仕掛けているのだ、疲労の蓄積は早いだろう。

 結果、体力切れを起こした夜魔は、ラピスの魔法によって倒されたのだ。

「こんなところで夜魔に遭遇するとは……」

 ダイさんが言うことは、解らなくもない。

 夜魔は森の中に住んでいるのだが、もっと奥にいるはずなのだ。僕たちがいるところは森の入り口辺りで、夜魔の出てくるような所ではない。はぐれて出てきたという可能性もないではないが、やはり疑問が残る。

「考えても仕方ないですね。今日はもう帰りましょう」

「そうですね」

 ダイさんの提案に乗って、帰ることに決める。必要分はとっくに確保していて、後は自分たちで使うために取っていただけなので、問題はない。

「早めに帰りましょうか。夜魔のことをギルドに報告しておかなければいけないだろうし、ペイシェさんの準備の方も気になりますし」


 帰り道は特に問題なく、大鼠や一角兎などごく普通に生息している物に、二、三度襲われた程度であった。

「それでは、『新鮮な魚を手に入れる作戦』次の段階に入ります」

 宿の僕の部屋でそう宣言する。

 部屋の中にいるのは、依頼主のペイシェさんと協力者のダイさん。使い魔のラピスに、何故かいる、アレス、サラ、アルベルトさんの悠久のメンバーたち。

 ……広めの部屋なのだが、狭い。

「次の段階と言うのは、魔力石から氷晶石を作り出すというものです」

 説明口調なのは、悠久のメンバーたちに、『ダイを使っているのなら細かく説明しろ』と言われたからである。……実際は彼の方がメインなのだが。

「まて、晶石って、作れるものなのか?」

「作れますよ」

 アルベルトさんの質問に、あっさりと答える。

 一般にはあまり知られていないことだが、魔法を使える者なら誰でも作り出せることが出来るのだ。割と単純に。

「誰でもって……」

 驚くのも無理はないだろう。晶石と言うものはかなり便利なのである。

 火晶石は、鍛冶師や錬金術師に必要な炉に使われているほか、料理店や公共施設の厨房のコンロにも使われている。

 他にも様々なところで使われており、その利便性はかなり高いのである。

「なら、何故、あんなに高い?」

 アレスの言う通り、晶石を使ったアイテムはかなり値段が高い。安くても半金貨はするのだ。

「簡単な話です、作るのが面倒だからです」

「「「「は?」」」」

 訳の分からないと言った表情の四人に、更に説明することにする。

 晶石の作り方は、いたってシンプルだ。

まず、以前使ったことのある属性球の要領で、魔法球と言うものを作る。ただし、属性球の二倍の大きさと、五倍の魔力を込めないといけない。

 次に、その魔法球に作りたい晶石の属性を込める。だが、自分で思う通りに込められるのかと言うとそうでもない。その人の持っている属性によって、出来る、出来ないが決まってしまうのだ。ならばどうするか? 答えは簡単だ、その属性の元となる物を魔法球に取り込んでしまえばいい。火属性なら火、水属性なら水、と言うように。

「取り込めない属性の物はどうするの?」

 これも簡単、その属性の象徴するものを取り込む。簡単なのは色だろう。火は赤色、水は青色、風は緑色、地は茶色、雷は黄色、氷は水色、光は白色、闇は黒色だ。

 そして、出来た魔法球に魔力石を入れるだけ。

「入れるだけ?」

「そう」

「めちゃくちゃ簡単じゃないの。なのに、なんであんなに高いのよ」

 サラの言うことはもっともだが、ここからが面倒くさい所なのだ。

 その状態を、四時間ほど続けないといけないのだ。

「は? 四時間?」

 魔法力的には問題ないのだが、集中力が続かない。途中で集中力を切らせてしまうと失敗で、魔力石は使い物にならなくなってしまうのだ。

「うわあ」

 その後は簡単だ、磨いて形を整えるだけだ。

「話を元に戻します。今回の作戦は、氷晶石を使って荷台の中を冷やしてしまおうと言うものです」

 要するに、魔法を使って人が冷やしていたものを、晶石で肩代わりしようといったことである。

「その為の、専用荷馬車も発注済みだ。金はかかったがな」

 ペイシェさんの言う通り、氷晶石を含めて結構なお金がかかっているが、成功すればなんども使えるし、なんどか使えば元は取れるはずである。

 さらに言うならば、この簡易冷蔵馬車を使えば魚だけでなく、肉や野菜も新鮮なまま運ぶことが出来るかもしれない。もしかすると流通革命が起きるかもしれないのだ。

「と言う訳で、これから氷晶石の精製を始めたいので、出てってもらえますか」


 さて、この作戦はどうなったか?

 結論から言うと、成功だった。

 今までよりも多くの魚を、新鮮なまま運ぶことが出来たのだ。

 ペイシェさんは何度か自分で使った後、商会の方に持って行ってその有用性を実証したところ、即座に取り入れられたということだ。

 商会の方でも様々な使い方を実験しているらしいので、本当に流通革命でも起きるんじゃないかな。


余談

 ビリノアの作りだしたこの簡易冷蔵馬車は、『ビリノア式冷蔵馬車』という名前を与えられ、さらに改良を加えられ全世界へと広がって行くことになる。


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