表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/41

第2話 現状確認(1)

お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます。

 心地よい風と、光を浴びて、僕の意識は戻ってきた。

 目の前に広がるのは、どこまでも青い空。体の下にある草は柔らかく、心地よい感覚を与えてくれる。

 気を失う前に感じた、胸―心臓をわしづかみにされるような感覚はなく、とても心地よい気持ちだ。

「……へっ?」

 確か僕は、自分の部屋にいたはずだ。そこで倒れたのなら、目覚めるのは病院、少なくとも自宅の自室であるはず。外で寝ているなんてことはないはずだ。

「夢……では無いみたいだな」

 体の下敷きになっている草を感じてそう判断し、起き上がる。

「これも現実か……」

 実は、起きた時から感じていた体の違和感。背中の翼と、声の変化。自分の胸についていて揺れる塊。そしてあるべきはずの物の消失。そこから導き出される一つの結論。

「どう言うことだ? これは……」

 翼はともかく、自分が女になったということだ。

 改めて自分の格好を確かめる。

「黄色のTシャツと赤いスカート。足元はサンダル?」

 どう考えても、ちょっと出かける服装で、こんな草原の真っただ中にいるものではない。あと、感触から、下着はきっちりついているようだ。

「羽は本物か……」

 白い翼を触ると、触られた感じがある。自分の意思で動かすこともできた。根元まで触ってみたところ、服に穴を開けているわけでもないのに、服を突き抜けているようだった。

「銀色」

 髪の色だ。普通に短かった髪が、背中の真ん中あたりまで伸びていた。さらさらとして心地いい感触。

「顔は、よくわからないな」

 鏡がないのでよくわからないが、たぶん女の子の顔だろう。僕の顔のままだったら怖い。体の方は確かめない。彼女いない歴=年齢と言うひきこもり人間には、刺激が強すぎる。

「♪~♪♪~♪」

 現状確認をしているところに、聞きなれた音楽が流れる。

「これは……」

 レムリア・オンラインでGMメールの設定音だ。

「メール? なんでこの音楽が? メニューを開け……」

 言葉が止まる。目の前にメニューが表示されたのだ。その隣にステータス。下にはアイテム欄まで見える。

「なんだ……これは……」

 恐る恐るメニューに手を伸ばし、点滅しているメールを触ってみると、すぐに反応しメール画面が浮かび上がる。

「なんだこれ?」

 メールの内容を見て、さらに疑問が膨らむ。


『榊元さま

 あなたは今混乱していると思います。その混乱を収めたいと思っているなら、私のところまで来てください。

 私は、ホームで待っています』


「ホーム? ホームって……」

 状況はよくわからないが、ホームの心当たりはある。

 先ほど出て、今も目の前にあるメニューの中にある、ホームのことだろう。つまり、レムリア・オンラインで一人一人が貰える、個人空間のことだろう。

「それならここは、レムリア・オンラインなのか?」

 VR化するという話は聞いたことがない。いや、運営側が、VR化をとことん嫌っていた。方針が変わったとしても、ここまですぐに出来るはずがない。

「考えても仕方ないか」

 思考をさえぎるように呟き、メニューに手を伸ばす。

「さーて、鬼が出るか蛇が出るか」

 困惑しながらも、なぜかわくわくしてホームのボタンを押す。すると、すぐに目の前の景色がぶれ、真っ白な空間が広がった。

「なっ」

 レムリア・オンラインなら、ここにはかなり金をかけた家になっているはずだ。なのに真っ白って……

「……メニュー、うっとうしい」

 右を見ても左を見ても、正面にメニューが表示され、視界を遮るのだ。

「消えるよう念じれば消えますよ」

 不意に横から聞こえた、聞き覚えのある声のアドバイス。声のする方を見ようとしたが、メニューが邪魔になることに気付き、アドバイス通り消えろと念じてみる。

「おお~。消えた」

「言ったとおりでしょう」

 改めて声のする方を見る。

「はじめまして、で良いのでしょうか?」

 ウエーブの掛かった長い黒髪、夜の空を思わせる深い黒の瞳、無邪気な笑みを浮かべた、三対の翼をもつ少女。ゲーム内で何回も見たその姿が、映像でなく、実体としてそこにあった。

「女神レムリア……」

「ようこそこちらに、榊元……いや、ビリノアさん」

「あなたがいるってことは、ここは……」

「はい。貴女の予想どおりです。私の名前の付いた世界、レムリアです」

 ゲームの世界に引きずり込まれた、というところだろうと予想していたが、予想通りだった。僕のことを『ビリノア』と呼んだことからも確信できる。

「正確には少し違います」

 レムリアの説明によると、ここはレムリア・オンラインと地形や国家、種族等は同じだが、時代や、細かいところで違うらしい。

「いまは、レムリア歴563年です」

「ゲームでは、310年だから、約250年後ってことか」

 メインシナリオであった、邪神復活もすでに阻止しているらしい。

「問題がないわけではありませんが、おおむね平和であると言っていいでしょう」

「世界については理解した。じゃあ、なぜ僕はここにいるんだ? しかも性別も変わっているし……」

「それについては、私よりも適任がいます」

 そう言って、レムリアはなにもない空間に手を突っ込む。しばらく探っていたが、やがて空間から一人の人物を引っ張り出す。

「なにするの、レムリア姉」

 引っ張り出されたのは、金髪碧眼のツインテール幼女だった。どことなく猫を思わせる雰囲気を持っている。

「なにじゃないでしょ。説明すると言ったのは、あなた自身でしょうが」

「うぇ、もう来てるの?」

「目の前にいるでしょうが」

 女子二人の間に入っていく勇気はない。彼女いない歴=年齢をなめんな。

「うぁ、ごめんなさい」

「謝らなくていいから、説明を頼む」

「うん。まずあたしのことから話すね」

 幼女の名前は、和泉(いずみ)。地球の管理者だと言う。

「管理者?」

「そう。地球で起こる出来事を管理するのが仕事。いわゆる神に近いけど、よっぽどのことがない限り手を出さないの」

 今回はそのよっぽどのことが起きたから、手を出したらしい。

「名前を書いたら、書かれた人が死んじゃうノートの話、聞いたことない?」

「あるけど……それが……」

「それが現実にあるとしたら?」

「は?」

 あるわけがない。あれは漫画であって、フィクションだ。現実ではなく、非現実……

「うん、あるはずがないの。本来ならば」

 和泉の説明によると、人間の想像力は凄まじいらしく、どんなことでも起こしうる可能性があるらしい。その気になれば、なんでも出来るらしいのだ。

 なら、なぜそれが出来ないのか? 理由は簡単。人間は、常識と言うものに縛られており、出来ないと思い込んでいるから発揮されないだけであるという。

「時々それを軽々と破る人がいてね。よりにも寄って、そのノートを出しちゃったんだ」

「世界のバランスを壊しかねない物の存在を、許すわけにはいけません。だから、管理者が動きました」

「一足遅く、使われた後だった……ってわけだ……」

 どうやら有名人、死んでもそう大して問題になりそうにない奴、として僕が選ばれたらしい。雑誌の取材なんか受けるんじゃなかったよ。

「自分と同じくらいなのに、お金持っていうのもあったみたいだよ」

 ひがみか。ひがみで殺されたのか。

「ノートは破棄して、本人は念入りに処置しました」

「だけど、殺されてしまった、君をどうするかが問題になったの」

「? 元の世界に生き返らせてくれないのか?」

「和泉の管理している世界は、完成に近い世界で非常にぎりぎりですが、バランスが取れています」

「そこに、死んだ人間をよみがえらせるという矛盾を入れちゃうと……」

「バランスを崩して、元の木阿弥っていうことか……」

「言い方は悪いですが、一人のために多数が犠牲になるより、一人が犠牲になった方がましということです」

「……本当に悪いですね」

「「ごめん(なさい)」」

 管理者の二人が、口々に謝る。

「その為、貴女に用意された道は……」

「異世界転生」

書いていくうちに長くなりすぎたので、切りがよさそうなところまでにしました。

なるべく早く次話を投稿します。

誤字、脱字、修正点などがあれば指摘ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ