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第11話 対人戦闘(後)

戦闘描写がうまくいかない。

「もう一度言う。俺と戦え」

 なにを言っているんだこの人は、と言うのが周りの考えだろう。

 証拠に、マスターと商隊の責任者の方も、怪訝な表情をしている。

「……理由を聞いても?」

 僕がそう訊くと、すらすらと答えだす。

「昨日のことだが、俺たち護衛団の一つ、『風人』のリーダーが怪我を負って、戦線離脱を余儀なくされた」

「あー、そんなこともありましたね」

 責任者―アラドさん―が、思い出したように言う。昨日痛めつけた奴のことだろう。

「あまり素行のよろしくないやつらだったが、戦力としてはそこそこ頼りになったんだ。そいつらが、リーダーの負傷を言い訳に護衛を降りると言ってきた」

 怪我による途中辞退は、違約金を払わなくて済むうえ、護衛料の半額は支払われるという契約になっていたらしい。金額が良いため受けた護衛の仕事だったが、予想以上につまらない仕事だったためやる気が落ちていたらしい。

「リーダーの負傷は、渡りに船だったと……」

「まあ、そうだな。後、こんな辺鄙なところにいるのは嫌だから、県都までタダで乗せてけとも言っていた」

 図々しい奴らだ。

「まあ、そんなことはどうでもいい。ただ、護衛に穴があいてしまったのだ。その為、戦力となるものならぜひとも欲しい」

「そうですね、私どもとしても戦力になるのであれば、ぜひとも雇って差し上げたいのですが……」

 お金の心配だろうか? アラドさんが口ごもる。賃金は最低限で良いと伝えると、それならばぜひと言ってくれた。

「賃金はどうでもいい。俺が気にしているのは、お前の実力だ」

 僕のランクは、Fと言ったからかな、実力が疑問視されているみたいだ。

「余裕のあるうちなら良いが、余裕のないところに、実力が伴わない物を連れて行っても、足手まといになるだけだ。故に、実力を見せてほしい」

 その為に一番簡単な方法として、戦闘をしろとのことでした。当たり前かと思い、模擬戦を受けたところ、前回の冒頭のような状況になったのです。

 ……鬱だ。


 うちのリーダーも、困ったことだ。

 話を聞き、メンバーとともに広場についた時、正直そう思った。

 なにせ、はたから見ると、大人が子供に向かって剣を突き付けている、そんな光景にしか見えなかったからだ。

「ほう……」

 隣で見ていたメンバーの一人が、関心の声を上げる。

「あの子、強いな」

 ? 見ただけで分かるのだろうか?

「ああ、何となく感じるんだ。あいつは強いと」

 歴戦の戦士である、アルベルトの勘が働いたのだろう。

「そうか? そうは見えねえけどな~」

 同じく戦士であるサラは、なにも感じてないようだった。

「リーダーが本気を出したら、一撃だろ」

「ふむ、じゃあ、賭けるか?」

「よっしゃ、乗った。今日の夕飯で良いな。私はもちろんリーダーだ」

「ふむ、俺はあの女の子だな」

 そう言って、二人は私の方を見てくる。

 ……もしかして、私も賭けろと?

 うなずく二人を見て、仕方なく自分の意見を出す。

「……では、引き分けで」


 どうしようか?

 正直な今の気持を表すと、こうなる。

 チート能力を全開で使えば勝てるだろう。

 たとえば、無差別広範囲魔法を使うとか。

だが、それは出来ない。と言うか、魔法全般を使うのは、よした方がいい。

 と言うのも、僕の使う魔法はチート過ぎて、初歩の攻撃魔法が、中級の上の威力を持つのだ。防御や、補助ならともかく、そんなものを村の中でぶっ放すわけにはいかない。となると、剣のみで戦うことになるのだが……

「……勝てる気がしねえ」

 身体能力は僕の方が上だろう、しかし、それだけだ。純粋に剣の腕前でいったら、相手の足元にも及ばないだろう。生半可な攻撃じゃ効かないだろうし、打ち合いになっても、大ぶりの攻撃にカウンターを入れられるだろう。

 相対して、理屈じゃなくそう感じた。

ならば……

「行きます」


 少女の言葉とともに、俺にかかる圧力が増す。

「来い」

 感覚で分かる、この少女は強いと。だが、構えや視線の動きから、経験不足であるということも分かる。そして、彼女はそのことを、よく理解しているのだろう。

「一撃に賭けるか……」

「そうするしか他に方法がないからね……」

 良い覚悟だ。ならば、こちらも全力で受けてやるか。

「……そういえば、名前を聞いていなかったな」

「ビリノア・バクスター。鍛冶師兼駆け出し冒険者」

「フハハハ、駆け出しか。しかも兼任か」

 楽しすぎるぞ。こういうことがあるから、冒険者は止められない。

「では、来い、ビリノア・バクスター。お前の攻撃、『斬鉄』のアレスが全て受け止めてやろう」


 相手の言葉を聞いて、正直安堵した。

 僕の全力の一撃は、全速で近づいてからのなぎ払いだ。

 威力はバカみたいに高いが、至極読み易いもので、よけようと思えば簡単に避けられる。その上、放った後隙だらけになるため、非常にリスキーなものとなっている。実戦では使い物にならない。だけど最大最強の一撃。

「今度こそ行きます」

 少し距離を取り、2、3回深呼吸して息を整え、しっかりと剣を握り直す。

 羽を使い、風を纏い宙に浮く。と言っても地面から2、3センチぐらいだ。

「はあああああ」

 動き出した瞬間にはもう、トップスピードに乗る。普通に走るのよりも、遥かに早い。

そのスピードのまま、相手に肉薄する。

 狙うのは、胴。最も広く、最も狙いやすいところだ。

「うおおおおお」

 と同時に、読まれやすい場所でもある。

 案の定、相手も読んでいたのだろう、こちらの振るう剣に合わせて、剣をぶつけてくる。

こちらの剣にすべての力が集約する前に剣をぶつけてくるあたり、非常に上手い。

 だが、そんなの関係ない。こっちは振り切るまでだ。

「「うおおおおおお!」」

 裂ぱくの気合を込めて振り切ろうとするが、相手も同様に押し返そうとしてくる。技や早さではない、力と力の勝負になる。が、しかし――

『ビキン』

「なっ……」

「おわっ」

 無茶な使い方をしたせいだろうか、模擬戦用に借りた刃引きされた剣がへし折れる。

 相手の剣もへし折れたみたいだが、なぜかボロボロに砕けている。

「あー、両者戦闘不能で引き分けって事で良いか?」

「今回は、実力を見るだけだったからな。別に良いぜ」

「僕も別にかまわないです」

 引き分けでも大健闘ですよ。正直分の悪い戦闘でしたから。

 戦うにしろなんにしろ、チート能力だけではやっていけないということが確認できた、実りのある戦いだった。

「私の勝ちですね。今日と明日の夕食、ごちそうさまです」

「ふむ、今日は俺が奢ろう」

「くっそー、リーダーが本気を出せば……」

「模擬戦といっただろ。そうそう本気を出さんさ」

「それぐらいは、見抜いて欲しかったですね」

「くっそー」

 見世物や賭けの対象にされていたことは、あんまりいただけませんが……


 その後、正式に護衛の依頼(初依頼)を受けました。

 県都に便乗していくためなので、依頼料は最低限度にしてもらっています。

 出発は、7日後とのことなので、チートに頼っている技術の底上げでもしようかな……

 その前に、『風人』たちへの闇討ちを決行しようかな♪



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