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とある少年の日常 第三話

 放課後、多少は怒られてもたいしたことないや、という気楽な心構えで生徒指導室に向かう。確か今日は陸上部が遠征だったはずだから、鬼軍曹ブチ山もいないしな。
 
「しつれいしまーす、瀬織でーす」

 職員室から離れた小さな部屋、連日ブチ山の怒鳴り声が響くもんだから、こんなところになったんだと聞いている。音楽室理論ですな。
 窓から差し込む夕日をバックに、その人はいた。
「瀬織君……」
 先生は、俺の顔を見るなり、小走りに近づいて、
 
 俺を頭から力一杯抱きしめた。
 
「せ……センセ?メアリー先生?」
 ちょ、待ち、こんな大胆な先生いるか? そりゃもう大いに期待はしてたけどさ、いちおう俺は数学の宿題忘れたお馬鹿な生徒で、先生のお小言を聞き流しながら間近でそのおっぱいを鑑賞しようと思ってただけなんだけど、いきなり、そのフカフカおっぱいムニュ~の刑って、どんな天国? 
 でもなんで俺、こんなに、安心してるんだろ。なんだかずっと、この胸に抱かれていたような……

「勇者様、もう、私、絶対にお側を離れたくありません……」

 …は? え? 勇者?
「センセ、ちょ、息が、できない」
「……あ、ごめんなさい」
 ぱっと俺の頭を離した先生の頬は赤らんでいた。ようやく俺はまっすぐ立てるようになる。ヒールを履いたセンセの身長は俺と同じぐらい。……教育の現場でハイヒールってどうなんだろう。
「センセ、ゆうしゃさまって、何の話?」
 俺は先生の腰に手を回したまま尋ねてみた。ああ、いい尻のライン。あからさまに触っても、文句をいうどころか、全然嫌がってない。
 
「……あ、いえ、何でも、ないですの。お気になさらないで」
 妙に自分の教え子に対して丁寧すぎる言い回し。余計に気になるじゃないか。

「今日は、ヘンな日だな。今朝も、俺の事を勇者と呼んだ子もいたし……」
 
 これ、実はどっかのゲーム会社かなんかのキャンペーンで「あなたの勇者様を捜せ!」コンテストでもやっているんではないかとか、そんな気がしてきた。
 とにかく、初対面や、ましてや学校の先生(まあ先生でもゲームぐらいはする)なんかにいきなり勇者様と呼ばれる異常事態を説明するとしたら、それぐらいしか思いつかない。
「……あの子も、あなたを見つけたんですね」
 どうやら相手を知っているらしい。ひょっとしてBL系のコミュニティか?

「ちょ、ごめん。全く話について行けない。えっと、俺はここに、宿題を忘れて、指導されに来たんだよね、確か」
「あ、そうでしたわね。では、お説教しなくては……」

 生徒を抱っこしたままお説教とか。意味わかんない。しかも説教するといいながら、いろいろ思案しているようだが、一向にその説教の文句が出てこない。ついには、
「あの、えと……宿題は、ちゃんとしないと、だめですよ」
 ようやく出てきたのが、これだけ。
 そしてまた、ぎゅっと、俺を抱きしめる。
 
「……えっと、それを言うためだけに、俺をここに呼んだの?」
「……瀬織君、実は、もっと、大切なお話があるんです。帰りに、私の部屋に寄っていきませんか?」
 彼女は、恥ずかしげに、俺を誘った。
「え?えええ?先生の、部屋にですか?」
「ええ、特別に、教えたい事があります」

 ちょちょちょうlrへういおうld
 落ち着け、俺。超落ち着け、俺。心臓がバックンバックンいってる。これは一体何の罠かと問い詰めたい。小一時間ほど。そんないきなり、生徒と先生の、禁断のカンケイを匂わすような事を……いや、行くよ、俺絶対行く。罠であろうと、何だろうと。
 
「えっと、行きますよ、俺」
 ぱあと彼女の顔が明るく輝いた。
「では、駅前で、待っててください。一緒に帰ってしまうと、怪しまれるでしょうから」
 そういって彼女は、名残惜しそうに、俺の体から離れた。
 
「じゃ、先にいって、待ってます……」
 俺は先生に一旦お別れの挨拶を送ると、ぎこちない足取りで、生徒指導室を出た。
 
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