第鉢獣輪 しゅみ
あー、あのさ。俺、そんな趣味ないよ。
「あのね、シュヴァルツシルトちゃん、君、男の子でしょ?」
とりあえず冷酷に現実を突き付けてみた。
彼は一瞬、俺の顔をチラ見すると、再び俺の胸に顔を埋めた。
「……だって、まおうさま、だいすきなんだもん……」
「あのさ、とりあえず、離してくれるかな」
ミヅキは、またか、と腰に手を当て項垂れている。
「君の大好きな魔王様は、こんな超絶美形じゃないでしょ?」
ほれ、この顔、と自分の顔を指さす。
「超絶美形?」
あ、そこの女子、何か言いたい事があるようだが、それは胸の内にしまっとけ。
「まおうさまは、まおうさまだよ……」
ああ、やばい、こっち方面にまで目覚めてしまったらどうするんだ。
「あのな? 俺、男には興味ねーの。ぬるぬるでキツキツに締め上げてくれるあったか~いアナがついてるコじゃないとダメなの。おけ?」
「わたし、ちゃんと、がまんするよ?」
そう言って彼は自分の腰をモゾモゾさせた。
ま゛ー
埒があかん。強引に彼を突き放――――――――って、なにこの馬鹿力??
「おいミヅキ!! ちょっとコイツに俺の好みのアナってのがどんなものか見せ」
後頭部に被弾。ちょっと意識が飛びかけたぜ。
「ちょっと、君、離れなさいよ。君の大好きな魔王様が困ってるでしょ?」
「あなた、誰?」
と聞かれてミヅキは黙ってしまった。
「……」
「あのな、コイツは俺の」
「四天王の一人、ミヅキよ」
あ、うまいこと切り返したな。
「あなたはもう四天王じゃないの。魔王様が困ってらっしゃるから、早く離れなさい」
とミヅキが説得しても一向に離れようとしない。ええかげんにせえよこの勃起ちんこ!
……背後から近づく馬車の気配を感じる。
「勇者殿、いかがなされた?」
!ピコーん! ひらめいた!
俺は彼の耳元にそっと囁いた。
「な。シュヴァルツシルト、そこの馬車にベッドがある。今から、いっぱい可愛がってあげるから、一緒に行こう」
あ、ミヅキがドン引きしてる。
「……まおうさま……うれしい……」
彼は潤んだ瞳で俺を見上げた。俺を拘束しているその腕がゆるむ。
俺はそっと彼の肩を抱いて、馬車の方に歩き出した。まだ完全に離してくれているわけではない。慎重に、慎重に……
「ちょっと、待ってて」
俺は馬車のステップに足をかけ、ひょいと首だけ出して、簡易ベッドでくつろいでいるメアリーさんとレイチェルを確認した。
「待ってるから、すぐ来るんだよ」
馬車の扉は狭いので、二人同時に通るのはムリだ。
俺は一人だけするりと中に潜り込んだ。よっしゃ!
「メアリーさん!レイチェル!!俺を抱いて!」
といってベッドの二人に無理矢理抱きついた。再度、美女サンドの出来上がり。いくらなんでもあの小さな体で三人まとめて抱っこは出来まい。
「まおうさま?」
ひょいと、扉から中を伺ったシュヴァルツシルトの顔が、みるみる内にしわくちゃになる。
「……勇者様、この子、どちら様でしょうか?」
俺の頭をおっぱいいっぱいに抱きしめて、メアリーは尋ねてきた。
「超絶男色美少年四天王のシュヴァルツシルト君だ」
「……まおうさま……うわああああああああん!!!」
少年は、ギンギンにテント張ったまま泣き出した。
「男の子、ですね」
「勇者殿……おなごだけでなく、男も泣かせるとは……」
いやいやいや。なんでオッサン顔赤いのよ。
と、その時、オッサンの眼と少年の視が合った。
時が止まった。
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