第奈々獣三話 きんぴか
はっ、ああ、お?え?
気がつくと、目の前でミヅキが倒れたまんま。
「クレイジー某」
ぺち。ダクダクと出てた血がぐんぐん引っ込む。うわあ、頼む、死んでちゃだめだよ、本気で、えーっと、ショック性失血死は多分免れた。心臓動いてるよね?脳に血液が回らなくなってから6分以上たったら脳死しちゃうからね?そんだけ経ってませんように!!
気道確保、瞳孔確認、反応有り、まだ生きてる生きてるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
人工呼吸、心臓マッサージ!
おちっちに!おいっちに!おいっちに!おいっちに!おいっちに!
「…の…」
あ、ミヅキ、気がついたか?
「…ノゾム君…」
大丈夫か?ちゃんと呼吸できてるか?
「人前でおっぱい触るなバカ野郎!!!」
めちゃくちゃ元気やーん…というわけで滞空時間長いなこのアッパー。空中コンボ入るよ絶対。どさりと地面に顔面から落ちた。またか。
「…って、あああああああごめんノゾム、大丈夫???」
あんまし大丈夫じゃない。
くるりと頭を返すと、ライバッハがぽかんと突っ立てる。
「ライバッハ、てめえ!ガンガン人を刺しやがって!!イテエじゃねえか!!!」
ライバッハは何が起こっているのか解らないといった表情で俺を見ている。
「ま、まおう?ゆ、勇者殿?どっち?」
「俺は俺だ、勇者ノゾム、こんなカッチョイイ男が魔王なもんか」
地面に半分顔を埋めたまま、俺は絶叫した。
「ノゾム、なんか、頭。金ピカだよ」
ミヅキまでヘンな声で俺に呼びかけてる。
「ほえ?」
むくりと立ち上がる。なんのこっちゃわからない。とりあえず噴水池のところまで歩いて行ってみて、水面に映る自分の姿を見て驚いた。
なにこのスーパーサ○ヤ人。
いつの間にか、典型的な日本人だった俺の髪の毛が、金ピカのツンツンになってる。
おいライバッハ、俺がトリップしてる間にイタズラでもしたのか?
「ま、魔王は、いかがされた…?」
ライバッハが頭の上クエスチョンマークだらけで俺に尋ねてくる。
えーと、そうだ。たしか魔王は、俺にまんまと騙されて…
「ああ、一応、俺は魔王でもある」
「は?」
「へ?」
二人とも意味不明な顔。アリスさんはセクシーな足を晒してまだ倒れてた。
「えーっと、うーん、なんて説明すればいいのか、とりあえず、なんか世界を征服したいとか、魔物の軍団を呼び出したいとか、近所の飯屋で食い逃げしたいとか、そういう欲求は今んところない」
二人は黙って、俺をじっと見つめてる。いやん。はずかしいわぁ。
「なんだか、いつものノゾムだね」
「うん…普段通りの勇者殿のような気がします」
あ、そう言えば、体がぜんぜん痛くないや。傷どうなったの?と自分の体を見回すと、これと言って出血しているわけでもナシ、くたびれた鎧がさらにボロボロになっているわけでもなし。ああ、一応これも、魔王の能力なのかな?
「つうわけで、たただいま二人とも。こんにちは魔王」
ぺこりとお辞儀した。
「お…おかえりノゾム」
「おかえりなさい。勇者殿」
えーっと、こんでいいの?また魔王がしゃしゃり出てきたりしない?
その後、ボロボロの木箱の底が二重底になっている事を発見、その奥に、人を小馬鹿にするように羊皮紙綴りの本が見つかった。つうか仕掛けが懲りすぎだ。
「開きますよ…」
ライバッハが本をくぱぁと開く。結構ずらずらと書いてあるのでワケが解らないが、魔王の能力、とりわけ憑依能力に関しての下りがあった。
・魔王を倒した者が、次の魔王候補になる。
・魔王候補の感情が爆発すると、初代魔王の意識が現れる。
・初代魔王は魔王候補の意識を乗っ取ろうと試みる。
・からなずしも、完全に乗っ取られるわけではない。
・むしろ、面倒くさいときはその候補に任せっきりの場合がある。
・なお、これは8代目魔王から教えてもらった。なかなか気さくでいい奴だ。
・あー、パパはママと一緒にちょっと旅に出る。3年ほど家を空けるから留守番よろしく。家政婦さんもつけておいたから。何か事件があったら家政婦さんを頼るといい。見てるから。
・妹欲しいかな?欲しいよね?パパがんばっちゃうよ。
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