第禄獣八話 ぬすみぎき
(ライバッハ様、やめてください)
(すまない、アリス、私にはもうこれしか方法が残されてないんだ)
(…軽蔑…します…)
おおっ、いいカンジ。
なんだよミヅキ、邪魔するなよ今イイトコロなんだから。
(開くよ…)
(ああっ…ライバッハ様…あんまりです…)
むほっ!
(そんなところ…指でなぞらないでください…よごれてしまいます…)
(かまうもんか)
(…あっ、舐めては…いけません…いけませんわ……)
そうだ、鍵穴!鍵穴はないか?閂が一般的なこの時代でも王宮の扉なら鍵穴ぐらいあるだろ!ふっふんふふーん!おー、ちゃんと蓋がしてあるんだな。どれどれ、って、向こう側見えないじゃん。ちくしょう、変な所で律儀な鍵穴だな。こうなったら…
と、扉に体重を掛けると、あっさりと、開いた。というか開いてしまった。
もんどり打って部屋の中になだれ込む。
部屋の中央のテーブルにはお互いに向き合ったライバッハと少女がいた。ライバッハはテーブル上の羊皮紙て綴られた書物のページを、インクで汚れた指で捲っていた。ベタベタのオチだった。
「貴殿は…勇者ノゾム殿…」
変装が一瞬にしてばれてーら。ライバッハは腰の得物に手を掛け、まさに飛びか掛からんとした形相でこちらを睨みつける。俺は素早く立ち上がり、右腕を突き出してライバッハの行動を牽制した。ペプシまーん。
「待ってくれライバッハ!今、この状態じゃ、俺は手加減できないぞ!正面切っての戦いでは俺の方が圧倒的に有利だ!」
ライバッハの額に、脂汗が浮かんでいる。
「お前は俺を殺そうとしてるはずだ。事情を説明してくれ。知らないまま殺されたくはない」
ライバッハの顔から、緊張の色が抜けていく。剣の柄から手を離し、その場で姿勢を正す。どうやら、話は飲み込めたようだった。
「…わかった。まだ、貴殿の意識は正常のようだ。できれば、苦しまずにあの世に送ってやりたかったが…」
穏やかじゃねえなオイ。
「話してもらおうか」
ライバッハは少し躊躇った後、淡々と事情を説明した。
「行軍の途中、我らは四天王が率いる軍勢の襲撃に遭いました。それらをなんとか撃退し、四天王の一人フォンノイマンを捕らえたのです。魔王軍に関する情報を問い詰めていくうちに、彼は魔王の能力について語り始めました」
「ああ。魔王を倒した者が、次の魔王になるって話か?」
「…そのとおりです。最初、私は信じられませんでした。しかし、歴代の魔王についての研究している者がいた事を思い出したのです」
そういって、ライバッハは少女の方に眼を配った。
「彼女はアリス。彼女の父は、この国でも有数の魔王研究者として知られています。これは、彼女の父の日記です」
ライバッハはテープルの書物を撫でてそう言った。アリスと呼ばれた少女は、恥ずかしげに顔を伏せている。
「研究室の書物は、魔王の能力について断片的な記載があるものの、歴代魔王についてまとめた文献は発見できませんでした。私は、この日記の中に、それらの文献のありかが記載されていると思ったのです」
えー何々。
「娘が近所のガキの嫁になると言い出した。パパは許さないからな(マサカズ調)」
「今度はパパのお嫁さんになると言い出した。今すぐ結婚しよう。パパは、どんな困難でも乗り越えてみせる」
「今日は疲れた。娘と一緒に風呂に入って疲れを癒そう。隅々まで洗ってあげるからね」
「よーしパパ特盛頼んじゃうぞー」
犯罪者スレスレっぽい父親の赤裸々な日常が。
「あっ、あの、その日記、私がまだ小さいときの日記ですからね!」
とりあえずアリスは弁明した。いや余計マズイって。
「そのパパは今どこで何をやってるんだよ」
「…3年前に、行方不明になりました。それはちょうど、今の魔王が世間を騒がし始めた頃と一致するんです」
なにい?
…とりあえずこの日記、どんどん読んでいこうぜ。面白い。
あとミヅキちゃん。いろいろ複雑な思いをして顔合わせ辛いのは解るけど、このままだと空気になっちゃうから気をつけてね。
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