第禄獣七話 きゃくま
みんな「自分以外は作者の自演」だと思っていそうなところが何とも愉快だな。本当にいい性格してるよオマエ。
どっかのコントよろしく、見張り兵に扮する。眼を潰されている瞬間にミヅキは着替えてしまってせっかくの、ハイ、ごめんなさい。マジメにします。
見張り兵の鎧は革をなめした下地に鉄輪を編み込んだ比較的軽装なものだ。城内で取り回ししやすい短めの槍もセットになっている。うーん、俺はともかくミヅキは兵士として小さすぎるような気がするなあ。まあ、この世界ではボーイッシュな彼女ぐらいの美少年も、普通に掃いて捨てるほどありきたりに存在するので、それほど不審に思われる事もなさそうだからいいか。作画担当ももう少し顔のバリエーション描けるようにしとけよ。
「交代だ。…ん、見かけない顔だな」
突然詰め所に入ってきた兵士に声を掛けられた。
「あ、ごっごご、ごめんなさい、僕たち、配属されたばかりで…」
ミヅキ、ナイス僕ッ子。
「まあいい、この先にある客間だ。今日は宮廷騎士団のライバッハ様が見えられている。失礼の無いようにな」
「解りました」
「HOO-AH」
当然のごとく、ご都合主義展開でイケメン騎士の居場所が判明した。呼吸を合わせて、隊列を組みながらミヅキと一緒に客間に向かう。
「何なら、このまんま部屋の前で中の会話を盗み聞きしちまえばいい。案外楽勝だったな」
「まだ安心するには早いわよ。私たち二人とも顔が割れてるんだから」
簡易冑を深く被り込み、一目ではわからないようにする。
「大丈夫。バレないバレない」
「あんたが言うと不安だわホント」
客間の扉を挟んで立つ。まだ、中には人はいないようだ。しばらく待ってはみたが、なかなか待ち人が来ない。
「…ミヅキ、どうかしたか?」
直立不動でいなければならないところ、どうもフラフラしてる。
「校長先生の長い演説でも聞いてる気分でいればいいさ」
余計フラフラが酷くなってきた。
「…だまれ」
あ、全校集会で貧血で倒れちゃうタイプかな。
「…ムリするな。しばらく一人で立ってるから、どっかで休んでこい」
「…ごめん、そうする」
言うが早いか、ミヅキは小走りにその場を退散した。なんだ。トイレか。
トイレ…
あの格好はマズイんじゃないのか。
ひたすら待つ。しばらくして、ミヅキが帰って来た。
「期待していたような事はなかったから安心して」
「残念」
いったい何を期待してたんだろう。俺。
お、ようやくお出ましか。儀礼用の装飾鎧を身に纏った騎士が、廊下の奥から歩いてくる。傍らには、豪奢なドレスを纏った長い髪の少女が付き添っていた。
「おっと。これは意外な展開」
「だまらっしゃい」
ライバッハは俺たちの目の前、客間の扉の前に立ち、俺たちにこう言った。
「すまないが、君たちは外してくれ」
「Yes,Sir」
「い、いぇす、さー」
二人して、衛兵詰め所に引き返す。足並みそろえて。
「あーあ。やっぱりリア充イケメン騎士とて人の子か。こんな真っ昼間から、あんな可愛い女の子とズ」
「…そうと決まったわけじゃないでしょ?」
「尻軽女もヤツの肩を持つか」
「っく!……みんなアンタと同じ思考レベルで行動してるわけじゃないのよ」
十分遠ざかった段階で、再び今度は忍び足で客間の方に戻る。ホントにコントっぽくなってきた。
「ミヅキ、誰か来ないか見張ってろ。俺は二人のイチャイチャぶりを聞き届ける」
「…アンタねえ、…勝手にしなさい」
扉に耳を当て、中の様子を探る。
ガチャガチャと、鎧を外す音。しゅるしゅると衣擦れの音。
うっしっしっし。
「また鼻の下伸びてる」
ミヅキは振り上げた拳の行き先を迷っていた。
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