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第禄獣一話 またかよ

「あとで体で払ってもらうからな」
「…いいよ…」

 …
 今、絶対に体で払ってもいいとか言ったな。
 じゃなくて。
 
「…あー、ミヅキ?」
 俺が拭いてやったぐちゃぐちゃの顔が幾分かマシになったミヅキの表情。
 リセットが掛かったて事は…
「また、痛い目に遭わせちまったようだな。すまん」
 彼女はあのときのまま無言だった。
 
 …なんかさ。いいんだけどさ。一応ね、痛いのよ。死ぬときは。勘弁して。あの首の筋肉をヌルリと刃物が貫通する感触ってのはそうそう味わえないよ?つうかマジ今の何?なんで俺、あのイケメン騎士に首ブッ刺されたのよ。俺、死ぬの2回目よ?たぶん。
 
「アンタさ…そう簡単にぽんぽん死んでもらっちゃ困るんだけど」
 目を背けたまま、ミヅキはそう言った。
「悪かった。でもアレは不可抗力。というか、なんでお前のナイト様に殺されなきゃならんのか理解できない。俺が魔王?とか言ってたな」
「わかんないよ。アタシも殺されかけた。またリセットしちゃったけど…」
「おかげで俺もお前もまだ生きてるんだけどな。さんきゅ」
「…痛かった…」

 おいおい、マジで泣くな。
 
「わりい」
「…痛かったよ…」
 あーあ。ライバッハめ。なんてコトしてくれたんだ。
「…別に、痛かったら、リセットかけなくてもよかったんだぞ?」
「え…」
「なんか、お前が痛がって俺が助かるのって、すげえカッコワルイ」
「…」
「とにかく、ここを離れよう。ここの王様もグルだ。どのタイミングで襲われるのかわかったもんじゃない」
「うん」
「その前にその上着のゲロはなんとかしろ」
 ミヅキはふらふらと起き上がると、またぐてんと倒れた。
 …アルコールも回ったままかよ…
「脱がすぞ」
「…すけべ」
「…ああもう!」
 ミヅキのゲロまみれのブレザーを分捕る。
「…さむい…」
「我慢しろ。俺が後でヒイヒイ言うぐらいに暖めてやる」
「おねがい」
 
 いいのかよ。
 
「飛ぶぞ」
 ミヅキを再び抱きかかえる。高速飛行呪文詠唱、俺は部屋の窓をブチ破って外に飛び出した。
 
「さむい…」
 ミヅキは必死に俺にしがみついてくる。ブラウス越しに伝わる体温が
 …こんな時に欲情してどうする。
 とりあえず雨風を凌げるようなところを探さなきゃ。町中は危険だ。もう既に、俺を殺したイケメン騎士がどこかに潜伏しているかもしれない。あの宿場町まで飛ぶか?
 いや、ヤツの狙いがわからない。俺どころかミヅキまで殺そうとした。ひょっとしたら、メアリーさんやレイチェル、オッサンも標的になってるかもしれない。
 町外れの麦畑に、人気のない農具倉庫を見つけた。土煙を上げてカッチョよく着地した俺は駆け足で中に躍り込む。麦藁の山が積んであるのを見つけ、そこにミヅキの体を放り込もうとしたら
「おい、離せ。みんなも連れてくる」
「ダメ」
「アホな事を抜かすな。いつ殺されるかわかんないんだぞ?」
「一人ずつ運んでたら時間がかかる」
 べろんべろんのヨッパライのくせに、やけに冷静な事を言いやがる。
「…じゃあどうするんだよ」
「…レイチェルさんに、私の能力について詳しく教えてもらったの」
「えーと」
 まさかひょっとして。
「えっちしよう」

 酒臭い息で、ミヅキはそう言った。
 
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