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第YON獣五話 ぴえろ

「…レイチェル?!」
「…いたいよ…おにいちゃん…」
 バカな、なんでここにいる?
「君の友人が彼女を気に入ってね、わざわざここまで連れてきたんだよ」
 声はどこからともなく聞こえてくる。
 セバスチャン、セバスチャンの事だな?!
「姿を現せ!」

 荒木能力起動、すぐさまレイチェルの傷を癒さなければ…
「我慢しろ。レイチェル。すぐに治す」
 胸に突き刺さった剣を引き抜き、能力を叩き込む。
「あああっ」
 苦痛に顔をゆがめるレイチェル、しかしその傷は、元に戻らない。赤い液体が、彼女の僧衣を染めていく。
「ばかな…」
 もう一度、能力を叩き込む。
「いたい…いたい…」
 何度やっても、荒木能力が発動しない。
 
 その声は、不敵に響いた。
「おうおう、可愛そうに。君は傷つく者をいたぶるのが趣味なのか?」

 そんなんじゃない、なんなんだ、この違和感は?
「ご苦労、君の能力は、よくわかった。勇者の能力をかき消せるという自信は、本物だったのだな」

 背後だ。
 
 そこには二人の人間が、ぼうっと立っている。
 一人は、セバスチャン。生気のない眼で、こちらを見ている。
 一人は、仮面の道化師。仮面の口元が不敵に笑っている。
 
「セバスチャン!なにやってんだ!お前の好きな女が死にそうなんだぞ?!早く何とかしろ!」
 
 セバスチャンは答えなかった。相変わらず、生気のない眼でこちらを見ているだけだ。
 
「…テメェ、セバスチャンに何しやがった?!」
「せっかく勇者の君を確実に倒す方法を見つけてくれたんだ。この子は、私の言うことを何でも聞く、素直でいい子だよ」

 素直でいい子?
 そうじゃねえ。あれは道化師の能力、催眠術みたいな何かで操られているだけだ。
 
「それでは、確実に、命を絶ってもらうことにしよう。なに、手間はとらせんよ」

 道化師の口元から呟きの声が聞こえる、だめだ、聞いちゃだめだ!
 
 …
 
 
 
 えーと、なんで俺、ここにいるんだっけ。ああ、重たいと思ったら、変なモノ抱えてるよ。こんなもん捨て捨て。うっわ、真っ赤だ。きったねえな。なんで俺、粗大ゴミなんか抱えてるんだ。
 とりあえず、剣はしまっとかないとな。あれ。鞘がない。どこ行った?
 あーおっかしいな。
 なんで俺の胸に鞘が生えてんだ?おもしれえなこれ。
 まいっか。また錆びそうだし。さっさと片付けよう。
 
 難しいナこれ。剣が長いから、柄持ってたら収まんないぞ。
 あ、ちょ
 邪魔すんナヨ。
 なんだオマエ。
 「シンダ?」
 何いってんの?粗大ゴミのことか?粗大ゴミが喋るのか?
 あー邪魔邪魔。俺はお片付けしなきゃなんないの。
 ゴミはあちいった。しっしっ。邪魔だから刺しちゃえ。
 あ、なんだ、このゴミも真っ赤に汚れてんな。
 もうゴミのくせに邪魔すんナヨ。
 じゃあな。
 
 
 
 ハイお片付けお片付けッと。
 あれ?何か痛いな。
 
 ま、いっか。

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