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第YON獣三話 きょうき

 ただの人間だよ。殺しちゃった。
 そうさ。ヤツを倒しておかないと、他の大勢の人間が死ぬところだったんだ。俺はそれを未然に防いだだけだ。俺は正しいことをした。何を躊躇う必要がある。
 
 そうだ。奴らから見れば、俺こそが魔王。それで、いいじゃないか。キレイ事なぞ通用しない。存分に、蹂躙してやる、破壊してやる、消滅させてやる、断末魔を上げる間もなく殺してやる。
 
 辺りを見回す。
 瓦礫の影で、わずかに動いているものがある。さっき見た、牛の頭をした化け物。左半身を消し炭にされても、まだ動いてやがル。
 俺はそいつの脳天に、剣を突き立てた。ぶしゅるという不快な音と共に、完全に息の根が止まった。
 辺りを見回す。
 胸の内から湧き起こる衝動を抑えられない。
 何か、動いているものが無いか探す。
 
 逃げ遅れた合成獣キマイラが、ズタズタの足を引きずり這いずり回っている。
 おお、いい眼だ。痛いか。俺が憎いか。
 
 一閃すると、こいつも動かなくなった。
 つまらんナ。
 
 子供の頃、公園でアリを踏みつぶして遊んだような、そんな感覚。
 こいつらは、アリだ。
 
 俺を喜ばせるためにいル。
 
 辺りを見回す。
 まだ動いているヤツがいル。
 双頭の魔犬が、息も絶え絶えに地面に伏せている。
 片方の頭は、もう死んでいるようだ。ぶらりと垂れ下がっているだけになっている。
 仲良く死んでしまエ。
 軽く剣を振ると、すとんと首が落ちた。
 
 ヨカッタネ。
 
 あきた。
 さむい。
 
 いつの間にか、日はとっくに暮れてしまった。
 動いているものは、風にざわめく草木だけだ。
 
 ねむい。
 疲れた。
 
 俺は瓦礫の片隅で、外套にくるまった。そのまま眠った。
 
 
 
 
「よう、瀬織、今日もナンパか?」
 ああ、コイツは俺の悪友、荒木。俺と一緒にいろいろなイタズラを思いついては、俺と同じく生徒指導室の常連になってる。
「小学生じゃないんだから、いつまでバカなことやってんのよ」
 この女は向井。俺の近所で幼なじみ。なぜか俺と荒木と三人でつるんで遊んでいる。まあ、コイツは俺の監視役ってところかな。昔からバカばかりやってる俺の貴重なストッパーだ。もっとも、最近じゃもう諦めているようだけどね。誰も俺は止められない。グヒヒヒヒ。
「荒木、当然ついてくるよな」
「はぁ?何いってんの?今日、俺、塾だぜ?」
「おまえがマジメに勉強するタマかよ。適当にサボれ」
「そうもいかねえよ。月謝だってバカになんねえんだからナ。母親に殺される」
「そうだよ瀬織、アンタもたまには勉強したら?」
「うっせーな。来年になったら勉強するよ」
「それじゃ遅いっての」
 へいへい、いつからそんなにマジメになったのかねえ。
 まあ、そんときは向井ヨロシク。もちろん俺の部屋でな。
 
 放課後、家路を目指す。
 体育館裏で、塾に出かけたはずの荒木を見つけた。
 何やってるんだ。
 向井もいた。抱き合ってた。キスしてた。
 
 
 
 あれ?
 なんか胸がいてえ。
 
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