第YON獣二話 とりで
見えた。アレだ、東の砦っつうのは。
そいつは山に上がる街道の入り口に、誰が作ったのかは知らないが、懇切丁寧に頑丈そうな丸太の屏で取り囲まれていた。砦にはいくつもの物見櫓がそびえ立ち、牛頭をした大男が辺りを見回していた。
うっわー、なんか絵に描いたような敵の拠点ってカンジだな。
ま、恒例。とりあえず瞬殺しとこうか。大火力系呪文はお手の物。
「あーこちら勇者でございますー。ただ今、地表標的発見したっすー。マルチロール勇者なので対地目標《GroundClutter》/海上目標《SeaClutter》もお手の物ですー。ますたーあーむあくてぃべーと、ぶれいぶわん、えんげーじ、しーかーおーぷん。ふぉっくすつー、ふぉっくすつー」
とある幼女系普通の魔法使いの呪文を唱え始めた俺。ホウキはないよ。
「マ(省略)」
突き出した掌から中性化された荷電粒子が大量に放出さた。
それは砦一帯に広がると、さらさらと丸太を蒸発させ、中にいる魔物どもを粉砕していった。
んー、壊滅か?
とりあえず接近するか。こん中に四天王の一人でもいればもうカタがつきましたッて事で超楽勝なんだけどな。
地上に降り立つ。
なんか、やなカンジ。
俺が見た風景そっくりじゃん。
魔物どもは黒コゲで野ざらしになっており、櫓という櫓は炭化して崩れ落ちていた。
その中に、ほとんど枠組みだけになった小屋があった。
「…」
その中には、魔物どもの子供か何か小さな黒コゲの…
クソッ
ああ、なんだよ、俺だって、やってることは奴らと同じじゃん…
人間か魔物かの違いだけじゃん…
気分悪…
俺は、その場にがっくりと座り込んだ。。
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!」
誰だ?
俺ではない、誰かの叫び声。
俺は叫び声が聞こえた小屋の裏側で、ソイツを見た。ソイツの眼から、止めどなく涙が溢れている。
「オマエか…?!」
ソイツは俺に問いかけた。粗末な革鎧に身を包んだ小柄な男だった。顔は火傷の痕で醜く歪み、手足はげっそりとやせ細っていた。
「オマエか!俺の息子達を殺したのは?!」
俺は無気力に答えた。
「そうだよ。俺が勇者ノゾムだ。悪かったな」
「悪魔め…」
悪魔、ははは、こりゃ面白い。魔王の手先に、悪魔って言われちゃったよ。
「そうだよ。悪魔だ。俺が魔王だ。仕える相手を間違えたな」
「召還!ドラゴン「スプラッシュ!」」
ヤツの呪文が完成する前に、その振り上げた腕を吹っ飛ばす。
言葉にならない悲鳴を上げて、ヤツは地面に崩れ落ちた。
「バーカ、無理すんな。オマエでは俺には勝てない、さあ、最後だ、名前ぐらい聞いてやろう」
「…ぐ、四天王が、ひとり、チャンドラ、セカー」
その声は唐突に途切れた。
「あんただったのか。悪いな、名前だけは聞いたことがあるぜ」
「…死にたく…ない…」
俺の剣は、既にヤツの体を貫いていた。
「残念、オマエは、ここで死んだ。安らかに眠れ。魔王に挑んだ、勇者チャンドラセカール」
そのまま、ぐったりと、動かなくなった。
なんだ、ふつうの人間じゃねえか。
召還能力があるってだけの、なあ。
ははは。
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