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第YON獣一話 ひとり

「…何いってんの、アンタ」
「足手まといだッつったんだよ」
 あまりにデカイ声を出したもんだから、ミヅキが引いてる。
 俺の頭の中に、かつて見たあの黒コゲ死体まみれの風景が広がっていた。
 あれがもし、みんなだったら…
 
「役立たずが、ガン首そろえて金魚の糞みたいにチョロチョロついてくんなってってんだよ!俺以外は確実に死ぬぞ? 確 実 に な !…勝手に死んでもらっても困るんだよ!わかるだろ?」

 向こうの馬車にまで聞こえてしまったのか、他の三人も、何事が起こったのかとこちらに駆けつけてきた。
 
「アンタ、自分が何言ってるのかわかってるの?」
「わかってるよ?当たり前のことを言ってるだけだっつうの!俺一人でみんなを守るなんてできないっつうの!」

 ミヅキは冷たい目で俺を見下ろし、他の三人に問いかけた。
「コイツ、さっきはアタシの話わかったとか何とか言ってたくせに。こんな事言ってるけど、どうする?」
 皆、沈黙していた。草木が風にそよめく音だけが聞こえた。
 
「…その通りですね。勇者様のおっしゃるとおりです。私たちは、足手まといでしかありません」
 沈黙を破ったのはメアリーだった。
「私たちが万が一にでも、人質にとらわれれば、勇者様は何も出来なくなってしまうでしょう。そのような事態は避けなければなりません」
 その声は、もの悲しそうだった。

「…メアリーさん、わかってくれて、ありがとな」
 ガイアも、レイチェルも、釈然としない様子だった。
「…しかし…勇者殿とて、万能ではござらん、万が一…」
「オッサン、言っただろ。死んだときは死んだときさ。俺一人でうまくいけば、あとは誰も死なない。そんで万事解決」
「…ホント、カッコつけるのは大好きみたいね」
 ミヅキは冷たく言い放った。
「じゃあさ、アンタ、東の砦ぐらい、一人で簡単に落とせるでしょ。さっさと行ってきたら?」
「言われなくても行ってくるよ。ついてくんなよ」
「砦が落とせたら、信用してアゲル」
「かー、生意気言うねこの女。砦どころか、サクッと魔王の首チョンパしてきてやるよ。さっさと帰って鼻クソほじって待ってろ」
「じゃあ、鼻クソほじって待ってるわよ!!!後で泣きつくんじゃないわよ!!」

 ミヅキが切れた。
 
「みんな、行こう」
 他の三人も、渋々、馬車に向かっていく。

「おう、帰ったら酒宴の用意しとけ。キングサイズのベッドもな」
「アンタ未成年でしょ」
「ニコチン中毒に言われたかねえよ。さっさと行け」
 俺は高速飛行呪文を唱えた。
「メアリーさん、レイチェル、さっさと帰ってくるから、楽しみに待ってな」

 音速の貴公子、宙を舞う。ちょっとカッコよさげに表現してみた。


 なんて言ってもさ、他の三人ならともかく、ミヅキぐらいはこっそり付いてきてさ、俺のバトルを木陰でこっそり明子姐さんみたいに覗いてて、んで、俺がピンチっぽくなったら颯爽と現れて、ズバンズバン魔物を片付けちゃって、助けに来てやったわよ(照れ)とかやりそーだよな。
 んで、俺が呻いてたらしょうがないって顔して嫌々俺を介抱すんのよ。
 そしたらうっかり俺が仕留めそこなった魔物が背後から
 
 クッソ
 
 そうはさせるかっての。
 万が一、特にミヅキが死んだらスーパーチートがつかえねえ。
 ちっきしょー魔王め、出会ったら瞬殺してやる。
 
 こわくねえ。こわくねえぞ。
 
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