第YON獣話 あしでまとい
あー皆さん、何でそんな眼で俺を見るんですか。そんなに俺、信用無いですか。
と、言ったところで、今回は、言い訳のしようもなく。
レイチェルを抱きかかえて(おお、やっぱノーダメージ)皆のところに戻ってくると、冷ややかな視線が俺に注がれていた。
「ごめんなさい、皆さん、お騒がせしました…」
テルテルボーズが真っ先に謝罪する。
「おにいちゃんが、あの人やっつけてくれたんだけど、迷子になっちゃって」
ミヅキが駆け寄ってくる。
「コイツに変なことされなかった?」
一瞬ヒヤッとする俺。
「大丈夫です」
それだけ言うと、にっこりと微笑んだ。
それでも、ミヅキの俺に対する疑いの目が晴れない。
「まあ、二人とも無事であったのは何よりでござる」
と、なにごとも無かったように語るオッサン。多分あの服の下は…
…この人、俺の呪文で全裸亀甲縛りにされるのがクセになった。むしろ快感を覚えている、間違いない…
メアリーさんはレイチェルをおいでおいですると、その体を優しく抱きとめた。
「おかえりなさい」
「ふにぃ…ただいま…」
再び。馬車に揺られる旅になる。
そろそろ道の状態が悪くなり、馬車の振動が尋常ではなくなってきた。
「ミヅキ、東の砦ってのは、まだなのか?」
ヤツは前を向いたまま答えた。
「もう一日ぐらいかかると思うけど、警戒した方が良さそうね」
「ひとつ、提案がある」
俺は、神妙な面持ちで彼女に言った。
「何?」
小さな声で。
「他のみんなには聞かれたくないんだ。次の休憩で詳しく話す」
って、避けるなよコラ、聞こえたか?
一時休憩、オッサンは馬の手入れ。その他はそれぞれ個人的な用事を。詳しく聞くなよ?
「ミヅキ、さっきの話だがな」
帰って来たミヅキを呼び止めた。
「寄るな。話すなら向こうで。変なコトしたら成敗する」
馬車からそう離れていない木の下、ここなら声も聞こえないだろう。
俺は、どう切り出そうか、迷っていた。
「…」
「…なによ。話があるんじゃなかったの?」
「実は俺…オマエのことが…」
彼女の顔があからさまに不機嫌に歪む。すいません。
「は、冗談として、これ以上、彼女たちを危険な場所に近づけたくない」
「…ああ」
当然だ。ここから先は俺たち二人だけで、いや突き詰めれば俺一人だけでも十分だ。残酷な話だが、普通の人間では戦力にならないし、そもそも傷ついて欲しくない。話の流れでミヅキが用意した馬車にみんな乗ってしまったが、本来ついてくる必要ない筈なんだ。
「…アンタは、それでいいの?」
「いいも何も、それが当然じゃないか。俺だけで出来る」
「たいした自信ね。これからどんな危険が待っているかも知らずに」
「オマエに言われたかねえよ。魔物の大軍団相手に死にかけたヤツによ」
ヤツの拳が、俺の脳天をこついた。あれ?痛くない。
「アンタがアタシに言ったこと覚えてる?」
「あー、なんだっけ。あ、思い出した。セックスしたい」
ヤツの両拳が、俺の脳天をエグった。そりゃもうグリグリと。
「いたい!いたい!いたい!」
「アタシもカッコつけたいの。ライバッハ様の前に魔物片付けてアタシを見直してもらいたいの。YOU COPY?」
「あ、あいこぴー!あいこぴー!あいこぴー!」
側頭部ハゲそうな勢いが止まる。
「…てて、手加減しろ。クソ」
「アンタもホントにバカな男ね」
「なんだと?」
「昨日私も同じ事聞いてみたわよ。誰一人として、アンタの側を離れたがってる人なんかいやしない。キトクな人たちだわ。よかったね、無駄に人望があって」
ったく!はっきり言ってやる!
「足手まといだっての!!」
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