第廿九話 たばこははたちから
ミヅキは、定番魔法使いのホウキよろしく、宙に浮いてる魔女ッ子系ステッキに、すらりとした両足(ナマ足)をそろえて腰掛けてた。もうちょっと、足開くか風が吹くか落っこちそうになってめくれるかしてくれないかなー。作画担当か物理エンジンプログラム担当なんとかしてくれないかなー。
「…アンタが下品すぎるから成敗しただけ。ホント自業自得だってば」
「テメエ、せっかく死にかけるような戦いから助けてやったのによ」
「必要ありませんでしたー。親切の押し売り結構ですー。あたし一人で十分でした―」
「なにおう?」
「なんだと?」
「話が、分かりかねます…」
「わかんないね」
「わからんでござる」
ああ、そうか。突然現れた魔女ッ子(というにしては恥ずかしい年齢のJじょしKこーせー)が、生意気な口ばかりそろえて俺を攻撃してるモンだからわかんなくて当たり前か。
とりあえず事情は説明しよう。
「じゃあ、あの人も、おにいちゃんと同じ異世界から来た人なんだね」
「時間が巻き戻る?にわかに信じがたいでござるが…」
「もし勇者様が昨晩、私を置いて行かなかったら、そんな悲しいことが…」
とりあえず全員の視線がメアリーに集まる。メアリーさん、微妙に誤解を招きそう。いや、誤解じゃないんだけどね。
「あたしも確かにさ、ちょっとやり過ぎたと思ったから、こうやって謝りに来てるんじゃない。感謝しなさい。勇者君」
「まったく謝ってねえよ!!態度デケぇよ!!何様のつもりだよ!!」
「あたしはあたしであの国を守ってるの。手助けなんかいらないの。この世界に飛ばされて、途方に暮れていたところを、みんな親切にしてくれたの。私には恩があるの」
「たしか、かの国の王宮騎士団が、あなたをみつけたそうですな」
「王宮騎士団かぁ、私のところの教会にも、毎年お祈りしにきてるよ」
「その騎士団長様は、若くて武勲に優れていると聞きます」
ミヅキの顔が明後日の方向を向いた。明らかに俺に顔を見られるの避けてる。
あー、わかりやすい奴。
「えー、訂正を要求します。バツ、みんな親切にしてくれた。マル、ステキなナイト様が親切にしてくれた」
「アンタには関係ないでしょ!!!!」
あ、ブチキレた。すげえイライラしてる。ミヅキはフトコロから、なにやら短い棒きれを取り出すと、それを口にくわえた。パチンと指を鳴らすと、そいつに火がついた。細い煙が上がってる。
(スパーー もくもくもく)
「…おいJK魔法少女ミヅキ、なにタバコ吸ってんだよ?子供の夢を壊すなよ。補導すっぞ?」
「ここ、日本じゃないし。いいじゃない。コレ吸ったら帰るわ」
「そんな問題じゃねえよ」
「落ち着くんだよ。アンタみたいなイライラするバカを見た後なら特に。能力も安定するしね」
「そんな問題じゃねえっていってんだよ」
「…ウザイ。どんな問題よ」
「丈夫な赤ちゃん産めなくなるぞ?!」
あ、ふいた。落とした。
「あち!あち!ナニいってんのアンタ?!」
「この喫煙者冬の時代にいい気なモンだなオイ。タバコはやめろ。オマエのカラダを心配して言ってるんだ」
「はぁ?大きなお世話。ホントにイラつく男ね。帰る」
「待て、もう一つある」
俺は厳しい眼差しで彼女を見つめた。
「…今度はなによ」
「ぱんつ見えてる」
あ、すべった。墜落した。あーあ、ぱんつ丸見え。
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