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第廿八話 まほうつかい

「なにコレ!?」
「珍百景、たくさんの魔物が、一心不乱に交尾する風景(ナレーター:奥田民義)」

 ミヅキは顔を真っ赤にしてこっち見てる。
「案外、ウブなんだね。カワイイところあるガふッ!!」
 強烈な右ボディブローが入り、胃液が逆流した。俺は膝を屈した。マウスピースがスローモーションで宙を舞うなんて演出は残念ながら無かった。
 
「最ッ低!、うっわコイツ、ナニ考えてるの???」
「実績のある、地球(?)に優しい、魔物の群れの、撃退、法」
「ハァ??」
「交尾に、疲れたら、帰って行くよ、そいつら…」
「あっそう、確かに、あたしの出番無かったわね。そんじゃ」
 ミヅキは、声を荒げて足早にその場を立ち去ろうとする。

「待て…」
 肝心な事を、忘れてやがる…
「なによ?」
「スリー、サイズがふん!?」
 ああ、いい、左アッパーだ。こんど、コマンド、教えて。623Pかな…
 たぶん、車田っぽく、宙を舞ってる、俺。
 
「ホントなに考えてるのよ!!……って、あちゃ、やり過ぎたか?」
 地面と愛し合っている俺を見ながら、さすがにやり過ぎたと反省しているんだろうか、頭をぐるんぐるん揺さぶってきた。口の中が砂利まみれになった。
「へへ、約束は、約束。教えて、もらうぜ」
 ミヅキはがっくりと肩を落とし、観念した様子だった。
「…わかったわよ。教えるわよ」
 最初から、そうしろ。グヒグヒ。
「129,129,129、ハイ、これでいい?」
「…小学館に、ケンカでも、売ってる、の、か…?」
 俺は自分の声を、遠のく意識の中で聞いた。
 
 
 
「勇者様、勇者様」
 あーメアリーさん。ただいま。ベッドは暖めてくれたかな。
「おにいちゃん、おなか、大丈夫?」
 おう、幼女、おっけえ。ヘビー級のパンチだったが、たいしたことないぜ。たぶん。
 
 喋ろうと思ったが、顎を包帯でガッチリ固定されて、うまく喋れない。
 つうか、ここ、昨日の宿、え?今日の宿?、とにかく、そっち。
 宿場町に戻ってきてる。腹と顎に包帯を巻かれて、ベッドに寝かされていた。メアリーさんはよかった、と安堵の表情で大げさにも涙を流し、幼女は神様へ感謝の祈りを捧げている。
「おにいちゃんが、魔物にやられたって、助けてくれた人がいたんだよ。ちゃんと、お礼を言わないと」
 あー、親切な人もいたんだねえ。
 
 自分でやっといて…あ゛の ア゛マ ~ !!
 
 どんな面白イヤラしい罰を与えてやろうか。グフグフグフ。
「それと、とにかく、今朝はガイアさんを探さないといけませんね」

 あ、オッサンごめん。影薄くなってた。貴重なツッコミキャラなのに。
 
「オッサンは、留置所」
「はい?」
「事情説明、は後。とにかく、オッサンに、話したい、ことがある」
 やっとやっとで口を動かし、説明した。
「あ、服、なんか、持って行って。かわいそう、だから」
「?」



 うまく喋られないので、荒木能力で何度も自分の顎を殴るハメになる。
 バカ、俺のバカ、と自省しているわけではない。
 ようやくまともに喋られるようになった頃には、平服のオッサンが宿に到着していた。
 あ、モジモジしちゃって。やっぱ新しい世界には目覚めてるのね。ウホッ。
「勇者殿、まずは、装備を調えましょうぞ。馬車も調達しなくてはなりませぬな。あの空飛ぶ魔法はもうこりごりでござる」 
「オッサン、その事なんだが、たしか隣の国へは、強力な魔法使いを探しに行くんだよな」
「…左様、なんでもまだ若い少女で、名を…」
「ミヅキ。もう会ってる。俺をここに運んだお嬢さんだ」
「なんですと!?…では彼女は、今どこに」
「さあ、俺をここに置いてトンズラしやがった、クソ、あのアマ、俺をこんなメにあわせやがって、タダじゃおかねえ」
「?そのお怪我は、魔物によるものではなかったのですか?」

「自業自得でしょ!!」
 そいつは、窓の外に、ふわふわ浮いていた。
 あー、スカート短い。ぱんつ見えそう。
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