第廿三話 たいけつ
イヤな予感がして振り向いた。
明らかに作画担当が違うドレッドヘアの黒人少年。クリーム色の詰め襟学生服のようなものを着て、腰に帯刀していた。ソイツは上から目線でこう言った。
「お前の魔法は確かに強力だ。その前に対策を採らせてもらった。お前のビームは、電気的に拡散したんじゃない。俺の用意したディラックの海に飲み込まれて消滅した。スティーブン・ホーキング博士のブラックホール蒸発現象(ホーキング輻射)は証明されたって訳だ」
俺と同じ、チート能力者…魔王たかし(予想)!!!
でも黒人でたかし?
「残念ながら前回のサブタイとおり、俺はラスボスじゃない。それからこの格好は、それらしいモノをお母さんに準備してもらった。母はコスプレが趣味でね」
ああ、増えてるな。確かにそういった人は。自分の息子にまで自分の趣味を押しつけるような親が。コイツ、俺と同じようにメタ会話が出来る。ただ者じゃない。
「名を名乗れ」
「セバスチャン・ホー」
「元ネタは何だ?」
「自分でググってみるんだな」
「魔王たかし(予想)の部下か」
彼は少し黙ると、こう返答した。
「もう少し頭の回転が早いヤツだと思ってたんだが。初代魔王たかしは何百年も前に死んでいる」
なに?初代魔王?
じゃあ、念のため唱えた魔王たかしが死ぬ呪文も、全く意味がなかったってコトか?
「そこの巨乳が代々守っていた家宝を知らぬ訳ではあるまい」
しまった。テキトウな作品だと思って、うっかり年代考証するのを忘れていた。
「初代魔王の名を知っているということは、その秘密を既に解き明かしたと言うことだな。生かしては帰えさんぞ」
案外律儀な作者のせいで、背後には津波のような魔物の軍勢、そして目前にはライバル系チート能力者、絶体絶命のピンチだ。
「ところで、お前は自分の能力をどのぐらい理解している?」
「しらねえ。テキトウにやったらテキトウになんかできる。それだけだ」
「話にならんな」
「勇者殿!こやつは私が相手いたす、勇者殿は魔物の群れを…」
「やめろオッサン、コイツが俺と同じチート能力者だってコトを忘れたか!」
「勇者様、彼はうかつに能力を使えないはずです」
「なに?」
意外にも、その声はメアリーが発したものだった。むしろ、バトルでは空気にされることミエミエだった彼女に用意されたご都合主義的展開だった。
「彼の能力の代償は自らの寿命。すでに強大な能力を使っています」
セバスちゃん(カワイイので命名)の表情から余裕が消えた。
「こいつは驚いた。占い師の家系は、その能力を失っていないんだな」
「ええ。異世界人の能力の代償を知るという、限られた能力ですが」
こんど俺も見てもらおう。
つうか寿命が減る?マジ?もし俺もそうだったら?この話、スゲー重たくなるぞ?
「勇者様、あなたの能力の代償は気にする必要はございません。思う存分に戦ってください」
ほっ。とりあえず寿命が減るとかヤバゲな事ではないらしい。
「じゃあ遠慮無く行くぜ!オートサヴァ」
俺は、呪文を唱える前に、地面に倒れ込んだ。
目の前に見えたものは、切り飛ばされた自分の足だと言うことを理解した。
「うっぐああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「…よい声で啼くな。心地よいぞ」
セバスちゃんは不敵な笑みで俺を見下ろしていた。
「おにいちゃん!!!いやあああああああああああああああ」
完璧に空気だった幼女の叫び声がこだました。
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