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第廿二話 らいばる

 さあ、全裸亀甲縛りで暴漢と一緒に監獄にぶち込まれたオッサンの反応を予想してみよう。
 いや、やめよう。だいたいわかった。
 
「ガイアさん、怒ってるよ、ぜったい」
「勇者様、悪ふざけもほどほどにしてくださいまし」

 いつもの俺の行動から、想定の範囲内とは思っていたんだが。
 ガチムチ系憲兵に事情を説明する。しばらくすると、簡素な囚人服を纏ったオッサンが現れた。
 
 ブチキレるとか、涙ながらに自分への待遇改善を訴えるとか、そういうありきたりの展開ではなく、やはり俺の予想通り、少し惚けたカンジで、股間をモジモジさせては、時々満足そうな笑みを浮かべていた。
「勇者殿、まずは、装備を調えましょうぞ。馬車も調達しなくてはなりませぬな。あの空飛ぶ魔法はもうこりごりでござる」
 そういえば、全裸亀甲縛りになったときの服とか、どこに消えたんだろう。
(そんなに怒ってないね)
(怒ってないですわね)
 あー、新しい世界に目覚めたみたいだね。よかったね。ウホッ。
 
 あ、やべえ、オッサンに大部分のお金持たせたままだったよ。
 亀甲縛り呪文で消えちゃってるよ。
 
「ぬー」
「困りましたね」
「あ、二人はちょっと向こうに行ってて。オッサン、ちょっと脱げ」
 オッサンはぎょっと眼を見開く。
 囚人服の下は、やはり予想通り、生々しく荒縄が食い込んだままだった。
 もう、クセになっちまってるな。こりゃ。
 オッサンには悪いが、こいつを荒木能力(怪我の治療とかいってるけど、本来は何か変化したものを元に戻す能力だよ。でも、死んだ人を生き返らせることは出来ないんだ。知らない人はジョジョ第四部を読んでね。別に集英社から広告費が入るとかは無いから)で元に戻せば。ほい。いきなり完全武装。
 金貨袋(スゲエ価値が低い)もそのままだ。よかったよかった。
 
「便利な魔法でござるな。ひょっとして、私の剣も新品にすることが出来るとか」
 ああ、その手があったか。手入れの代金が浮く。
 結構使い込まれて所々刃こぼれを起こしているオッサンの剣を手に取ってみた。
「クレイジーダイヤモンぬ(なんか芸がないな)!!」
 オッサンは開いた口がふさがらなかった。その剣は、砂鉄とただの木材に変わってしまった。計画通りだった。
 
 とりあえず、そのままではオッサンの機嫌もさすがに悪いので、鍛冶屋に行って折れてボロボロになった剣を格安で譲ってもらい、こっそり元に戻してみたりして、装備を新調していると、俄然中央広場の方から、騒がしい音がする。
 
 
 
「魔王の軍勢が攻めてくるぞ!」
 
 誰かが口々にそう叫んでいた。
 あ、すっかり忘れてた。一応この国に進軍してくる途中だったっけ。
 国境を超えたっぽいので、オッサンの言う魔法使いがいる国は壊滅したかな。こりゃ。
 
 荷物を大急ぎでまとめている者、そのまま逃げ出す者、どさくさに紛れて市場の商品を奪っていく者、ネーちゃんの乳を揉んでいる者、大混乱だった。
 
「勇者様、とりあえずその手をお離しください」
 あ、乳揉んでるのは俺か。ごめん。ちくび勃ってるね。
 
 群衆を押し分け、やがて隣国へ繋がる門に到達した。
 とんでもない風景だった。
 ナウ○カの最後の○ームの群れとか、佐渡島ハイヴから溢れるデストロイヤー級を先頭としたBETAの群れとか、そんなカンジの魔物の群れが津波のように押し寄せてくる。
 普通の人が見たらたぶん絶望。手首切るね。
 くそ、巨神兵のプロトンビーム砲とか凄乃皇弐型の荷電粒子砲なみの火力って俺にあるのか?
 
 こうは言ってもいられない。とりあえずネタらしいものは提供しないと…
 
「マああああスタああースパあああああああーコ(普通の魔法使いの魔法:幼女系)!!」

 俺の伸ばした腕の先から、むしろポージング的にはマグニートーを彷彿とさせる電磁ビームっぽいモノが魔物の群れに向かって凄まじい勢いで放出された。反動で、俺は数十メートルも後方に吹っ飛ばされた。
 頼む、面倒だから、大部分が消え去ってくれ。たくさん魔物相手するとなると、文章量が飛躍的に増大しそうなんだ。頼む!
 
 しかし、俺の願いは空しく崩れ去った。広範囲に放出された電磁ビームは、群れに直撃する寸前、忽然と消えた。

「クソ、荷電粒子の中性化を怠ったから、それぞれの粒子が電気的に反発して拡散したか?」
「いいや、違うね」

 聞き慣れないその声は、俺の背後から響いた。
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