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第一話 なげやり

「勇者殿、魔王の軍勢は、すぐそこまでやってきているのですぞ。何をやっておるのですか」

 はいはい。うっせーな。どうせ攻めてこないよ。安心しなさいな。
 この人は、一応俺の仲間ってことになってるらしい。名前はガイア。オッサンだが、俺より弱い。高校二年生の俺よりね。

 この国にも一丁前に王宮というものがあるわけ。
 
 最初、俺が現れたのはこの王宮の謁見の間だった。
 いきなり、目の前にむさ苦しい、威厳もへったくれもない、威張るしか能のない自称「王様」が、これまたなーんの脈絡もなく、
「勇者よ、この国のため、世界のため、魔王を倒してまいれ」
 だってよ。
 あー、ポイントは、中世ヨーロッパっぽいのに、日本語だって事な。コレ重要。
 んで、
「そんな事、軍隊にでも任せたら?」
 って言ったら、
 この国の軍隊って、テンで弱くて使い物にならないらしいのよ。
 いやね、本人達は、そんじょそこらの国には負けないぐらいに強いって言ってるの。
 でもね。なんかこう、試しに手合わせ願うじゃない。
 相手が向かってきたら、適当に「ドラゴンスプラッシュ!(仮)」とか叫んで剣を振ると、何か出るのよ。剣からビームっぽい奴。そうそう。なんかゲームでよくある奴。
 ああ、魔王を倒しに行くって言う話も、たぶん向こうさん、ぜんぜんやる気無いよ。最初にね、武器もらったのよ。武器。ああ、この剣ね。なんかそこらへんの武器屋で売ってないの。品質悪すぎて。これから魔王倒そうってのに、街に売ってる武器すら与えてくれないのよ。そんなんでやる気になると思う?思わないよね。
 お金ももらったさ。金貨200枚。これで何が買えるか知ってる?さっきの武器屋の一番やっすい奴。なんだっけ、斧?こちとら命掛けようってのに、生命保険の掛け金にもなりゃしないよ。わかってるのかな。この人達。しっかし、200枚の金貨の価値が、斧一本って、金の価値どんだけ暴落してんのよと、ツッコミ入れたくなるよねえ。
 
「ノゾム様、お願いです。どうか、この国を救ってください、ノゾム様がいないと、この国は滅んでしまいます」
 
 この人も、仲間になったッぽいんだけど、この国の教会にいる尼さんで、レイチェルちゃん。
 なんでも、正義の神様を信仰してるんだそうだ。胡散臭いよね~
 歳は俺より二つ下。でも、教会で立派に働いてたんだって。日本じゃ児童ナントカ法に引っかかりそうだね。すごいね。
 あ、補足しとくけど、この国って、不細工な女がいねーの。みんな美人。いやマジ。ホント。

「レイチェルちゃん、別に、君がしゃしゃり出る必要、無いのよ。もっと大人の人に、ここは任せた方がいいんじゃないかと、俺は思うわけよ」
「私は、この国を救うと言われる勇者様にお仕えすると、神に誓いました。あなたこそ、伝説の勇者様。どうか、どうかこの国を」
「はいはいはい、しょうがないねえ。ことろでさ、聞きたいことがあるんだけど」
「…はい、何でしょう?」
「伝説ってさ、本か何かに載ってるの?」
「いいえ、我が教会に伝わるお話です。魔王の軍勢現るころ、異世界より勇者が現れる、と」
「俺が異世界より来たって、なんでわかるの」
 見た目はここにいる人間と全く変わらないしね。
「それは…」
「それは?」
「この国の軍隊の誰一人として、ノゾム様にかなう者はいなかったではないですか」
「まあ、そりゃ結果論。ひょっとしたら、単に強すぎるだけの人かもしんないじゃないか」
「いいえ、あなたは神に選ばれてるのです」
「神様?どこにいるの?」
「私には神の声が聞こえます」
 あー、そう。あれ。新興宗教の勧誘。家の中ズカズカ入ってきて「神様がこう言いました」とかナントカで壺とか売る奴。それといっしょ。カルトよカルト。キモッ。
「あーレイチェルちゃん、それたぶん、幻聴だから。病院行った方がいいと思うよ」
「病院?何ですかそれは」
 ああそうか。さすがに精神病院とか気のきいたモノはこの世界には無いか。

 あーでも、それ、神様の声聞こえるってのは、一応本当なのかもなあ。
 なんせこんなザマだから。
「スーパーウルトラグレートデリシャス(中略)サンダーボルトっぽいもの!」
 って叫んだら、ほら、向こうの家が大火災。

「なんと!勇者殿!」
「ん?ガイアのオッサンか」
「今すぐ火を消し止めくだされ!何をやっておいでですか!」
 あーちょっと暇つぶしを。面倒だなあ。
「たぶん火が消えて家が元通りになるような、そんな、呪文。(森本レオ風味)」
 ほら、元通り。

「遊んでいる暇は無いのですぞ、今こうやっている間にも、周辺の村々が魔王の軍勢に襲われているのです!」
「はぁ、しょうがねえなあ」

 まあこうして俺の旅は始まったらしい。
 あ、その前に、トイレ行かなきゃ。
 この街の家って、トイレも風呂も無いのよ。めんどくせえ。
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