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人狼への転生、魔王の副官 作者:漂月

本編

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「クルツェ技官の報告書」

35話(クルツェ技官の報告書)


■第六次 定期報告書(甲種機密)■
提出者:竜火工兵隊特務技官クルツェ

 調査の結果がある程度まとまりましたので、不完全ではありますが御報告いたします。


■リューンハイトの状況
 リューンハイトの統治は、極めて良好です。治安および経済は高い水準で保たれており、混乱は全くありません。

 驚くべきことに、リューンハイト衛兵隊が治安維持に協力しています。彼らは建前上は中立を保っていますが、実質的には魔王軍と協力関係にあります。
 なぜこのようなことが可能なのか、技官たちの間で幾度も分析と討議を重ねましたが、まだ結論が出ておりません。

 住民感情も悪くなく、おおむね魔王軍に対して好意的でした。
 これは人狼隊と犬人隊がリューンハイトの法律と社会道徳を尊重していることが、特に大きいと思われます。

 太守アイリアの人物評価については、今後の調査を待たねばなりませんが、職務に忠実な人物であることがうかがわれました。
 追加の報告をお待ちください。


■トゥバーン攻略戦
 トゥバーン城門の強度が想定以上だったため、屍蝋兵と電撃魔法によって城門を焼失させる作戦は失敗しました。

 主力の人馬兵が市街戦を不得手としていること、もう一方の主力である骸骨兵が突撃を苦手としていることが、作戦の選択肢を狭めたことは否定できません。

 しかしヴァイト副官の第二案を実行に移したことにより、城門の突破に成功。軽微な人的被害でトゥバーンを攻略いたしました。

 ただしこの結果、「竜玉」に加工する前の「竜の息吹」の備蓄を全て失いました。ただちに追加支援を要請いたします。
 ヴァイト副官の行動には、以下の問題点がみられました。

・慎重な取り扱いを要する「竜の息吹」を運用困難な大樽に詰めさせる。
・事前の実験を行わない。
・安全な運用手順を確立させずに指揮官本人が使用する。
・秘匿兵器である「竜の息吹」を隠蔽工作なしに使用する。

 これらは技官と武官の思考的差異であると思われますが、今後の運用は技官に一任するよう、強く求めます。
 ただし、これは「竜の息吹」による城門破壊の初めてのデータであり、今後の兵器開発に大きな貢献をなすものと思われます。

 現在のトゥバーン市民はヴァイト副官に対して病的なまでの恐怖感情を抱いており、魔王軍に対する敵対行為は全くありません。

 なお、実験として捕虜の弓騎兵のうち三名に「ヴァイト副官が呼んでいる」と告げたところ、ただちに全員が激しい恐慌状態に陥りました。
 その後の鎮静と回復に若干の時間を要したため、人道的配慮の観点から、同種の心理実験は中止することとします。

 これに関連して追加の調査を実施した結果、ヴァイト副官がトゥバーン市民と衛兵から以下のように呼称されているのを、複数の技官が確認しました。

・四百人殺しのヴァイト
・皆殺しのヴァイト
・城門破りのヴァイト
・骸骨王ヴァイト
・人狼将軍ヴァイト
・落日のヴァイト

 最後の呼称については、過去に輝陽教司祭を使者として派遣したことが原因と推測されています。


■新型装備
 ヴァイト副官は「竜玉」の説明を受けると、当初明らかに落胆した様子でした。
 しかしすぐに、これが情報伝達用の兵器であることを看破。トゥバーン攻略戦で即座に実戦投入し、敵弓騎兵隊の奇襲を回避することに成功しました。
 これについては竜火隊技官たちの間でも高い評価を得ております。

 また試作品の望遠鏡につきましても、観測機器であることを即座に見抜いて適切に使用していました。
 洞察力と理解力に優れ、柔軟な思考が可能な人物と思われます。


■追記
 興味深いサンプルを採取いたしました。報告書に添付しておりますので、連絡技官よりお受け取りください。
クルツェ技官の苦情は、いただいた感想を元にしています。この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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