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人狼への転生、魔王の副官 作者:漂月

本編

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「バッザ公の便り」

336話(バッザ公の便り)


 ペトーレ、まだお元気? 奥様を大事にしてる?
 最後にお会いしたのは何年前だったかしら。確かあなたがまだ元老院とやりあっていた頃ね。
 あなたにそろそろ静月の安らぎが訪れる頃合いではないかと、ちょっと心配しているの。
 でも、そんなはずはないでしょうね。信じているわ。
 だってあなた、私より長生きしてみせるって豪語していましたから。
 グラスコの葬儀のときに、ガーシュちゃんを抱いて。


 それにしてもあなたたち、今回はとびきりの大物をよこしてきたものね。魔王の副官だなんて。
 ミラルディアはこの戦に乗り気ではないと思っていたから、少し驚きましたよ。
 でもとても嬉しいわ。ありがとう。
 沿岸諸侯たちは皆、ミラルディアの支援に勇気づけられています。
 ヴァイト卿ほどの大物なら、国王陛下も無視できないわ。すぐに使者を送ってみましょう。あの方、内心では他国の軍勢に怯えてらっしゃるのよ。


 あのヴァイトという殿方、とても涼やかで笑顔が素敵ね。それにとても礼儀正しいのよ。あなたの言っていた通り、いえ、それ以上かしら。
 私が素性を隠していたときもごく自然に接していたし、平素から裏表のない方なのでしょうね。
 だからこそ、あなたやガーシュちゃんも彼を信用しているのでしょう?


 そうそう、おみやげに「竜鱗玉」という貴重な宝石をいただきましたよ。北の帝国でしか採掘できないものですって。さっそく首飾りにでもしようかしら。
 そういえば、あなたたちの初対面のおみやげは何だったかしらね。
 確か海賊の首だったように思うのだけれども……。それとも、伝説の大鮫のヒレだったかしら? いつも臭いが染み着いて困るって、侍女たちがぼやいていたわ。
 あなたたち、蛇の抜け殻を拾ってきて見せびらかす男の子みたいな目をしていたわね。
 今となっては良い思い出です。


 でもあなたたち以上に華々しい戦歴を持つのに、ヴァイト卿はあなたたちよりもずっと落ち着いていて、控えめな方でしたよ。
 一見すると文官肌だけれども、それでもときどき戦場の風を感じさせるわ。鞘に収められた名刀、といった風情ね。
 戦神殺しという噂は本当かしら? あの穏やかさが逆に、そんな威圧感を感じさせるのよ。
 こちらでは皆、ヴァイト卿の実力を見たくてそわそわしていますよ。
 彼の実力を一番見たがっているのは、たぶん傭兵隊の子たちでしょうけどね。


 配下の人狼隊が変身するところも、一度見てみたいものね。きっと恐ろしいのでしょうけれど。
 頼もしい味方を得られたこと、とても感謝していますよ。
 あなたはやっぱり、ここぞというときには義に篤い方ね。
 普段はロクデナシ……いえ、何でもありませんよ?


 またバッザに遊びにいらっしゃいな。昔のように派手な船長帽を被って、舳先で腕組みをして。
 うちの侍女たちはいつも「落ち着きのない船首像ですね」って笑っていましたよ。懐かしいわ。
 お互い、あと何回会えるかわからない身ですからね。
 私も生きているうちに、厄介事は全部片づけてしまいましょう。
 後に続く子たちのために、道は均しておかないと。ね?
※次回「カルファルの受難」の更新は10月3日(月)の予定です。
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