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人狼への転生、魔王の副官 作者:漂月

本編

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「リュッコとパーカーの秘密作戦」

248話(リュッコとパーカーの秘密作戦)


 オレは下水道の通気口をよじ登りながら、袋の中の兄弟子に声をかける。
「パーカー、生きてるか?」
 袋の中から楽しそうな声がする。
「死んでるに決まってるじゃないか」
「あんたって結局、生きてるのか死んでるのかどっちなんだよ?」
「どっちなんだろうねえ」
 どっちでもいいか。


 通気口は人間には狭いが、オレにはちょうどいい。穴はいいな、落ち着くぜ。
 ちょっと臭いけど。
「それにしても、なんで通気口なんか空けてるんだろうね。街が臭くなるじゃないか」
 袋詰めになったパーカーがそう言うので、オレは教えてやる。
「腐った匂いってのは、火を近づけると燃えることがあるんだよ。特にクソの匂いはな」
 火気の取り扱いは注意が必要なので、オレも最低限のことは知っている。


 よいしょよいしょと縦穴を登りながら、オレは説明を続けた。
「ヴァイトが教えてくれたんだけどよ。どっかの街の下水に煙草の火を落としたバカがいてな、下水口のあちこちから火が噴き出したんだとよ」
「そいつは壮観だねえ」
 しかしオレにはひとつだけ、気になってることがある。


「でもそれがどこの街かは、あいつも教えてくれなかったんだよな。オレが知る限り、ミラルディアの街じゃなさそうなんだが」
「君に場所を教えたら実験しに行くからだろう?」
 まあな。
 新しい武器のネタにできそうだし。


 そんな話をしているうちに、オレは通気口の出口にたどりついた。地面に突き出した煙突から、オレはよっこいしょと降りる。
「なんだよ、こんな町外れかよ」
 城壁近くの広場だ。衛兵たちの練兵場だな。もう日が暮れた後だから、今は誰もいない。
 オレは背負い袋を逆さに振って、中身を取り出す。
「うわっ、いててて……痛くないけど」
 パーカーの部品がバラバラ落ちてきた。
 勝手に組み立ててくれるから楽でいいな。


「君といいヴァイトといい、兄弟子への敬意がまるで感じられないんだけど」
「別にそんなもん求めてねえだろ?」
「うん」
 嬉しそうに言いながら、パーカーはコキコキと骨を鳴らす。
「さてと、うまい具合に空き地だね」
「まあ、クソの臭いが湧き出してくる場所だからな。こんなとこに住むヤツはいねえよ」


 するとパーカーはこう言った。
「では少し、本気を出すとしようかな。先生と共同開発した、僕の奥義をお見せするよ」
「おう、やってみろやってみろ」
 どうせ死体を呼び出すぐらいだろ?
 案の定、パーカーはいつも通りに骸骨どもを呼び出す。


「暗きゲヴェナの門より来たれ、我が友よ」
 だがなんだかいつもと様子が違う。
「おいおい、今日の骸骨はなんだか偉そうだな」
 ボロボロの法衣をまとったのや、壊れた王冠を被ったのが、ぞろぞろ湧いて出てきやがった。
 待てよ、こいつらなんか見覚えがあるぞ?


「なあおい、こいつらもしかして死霊術師じゃねえのか?」
「ああ、そうだよ」
 パーカーは空き地に召喚した数百体の骸骨どもを数えながら、オレを振り返った。
「僕は死者を即座に召喚できるけど、さすがに数百体が限界なんだ。魔力が枯渇しちゃうからね」
「十分すげえよ」
 まず骸骨どもを即座に召喚できる時点でおかしいんだよ。


 パーカーは印を結びながら、こう続けた。
「でも呼び出した死者たちに骸骨兵を召喚させたら、僕個人の魔力なんか関係ない。さあ始めろ、我が友よ。卓越した技を見せろ」
 パーカーが手をサッと振ると、骸骨の死霊術師どもが不気味な唸り声をあげ始めた。複雑な身振りも伴っている。
 もしかして、こいつら死んでも死霊術が使えるのか?


 やがて空間のあちこちが歪んで、骸骨兵どもがガシャガシャと現れた。古王朝時代の古めかしい甲冑を着込んだ連中だ。
「おいおい、こいつらも骸骨を即時召喚できるのかよ」
「なんせ古代の達人たちだからね。最前列左から順番に、密葬師ウィクリア、キルゴール悪霊公、汚泥のペデドトク、骸骨王ユグスフォリトス……」
「魔術書に載ってる有名人じゃねーか。しかも若干アレな連中ばっかりだぞ。これ全部そうなのか?」
「説得するのに苦労したよ」
 普通は説得どころか、呼び出すこともできねえよ。


 オレは完全に呆れ果てて、このイカレポンチの見本市を眺める。
 地獄の釜から蘇った悪霊どもは、後から後から骸骨兵を召喚しまくっていた。
 広場に入りきらない分が表の道路にまで溢れ、あちこちから悲鳴が聞こえてくる。そりゃ驚くだろうよ。
「もう軽く千は超えてるぞ。まだ呼ばせるのかよ」
「そうだね、一万ぐらいは呼びたいかな」
「帝都が骨で溢れちまうぞ」


 パーカーは肩をすくめてみせた。
「なんせ、帝都を大混乱に陥れる必要があるからね。まだまだやるよ」
「おいおい」
「心配しなくても、攻撃命令は出さないから」
「そういう問題じゃねえだろ」
 やべえ、こいつはちゃんと見張っとかねえと大変なことになる。
 オレは袋から自分用の魔撃銃を取り出し、安全装置を解除した。


「あのクソ外道どもは、ちゃんとお前の言うことを聞くんだろうな?」
「もちろんだよ。徹底的に力の差を見せつけておいたからね」
 何をしたんだ、何を。
「ああでも、支配下に置いているというよりは友人として招待した感じかな? かなり無理を言って集まってもらってるから、あんまり何度も使える術じゃないんだ、これは」
 何度も見たい光景じゃねえよ。


 道路に溢れ出した骸骨兵のせいで、そこらじゅうが大騒ぎになっている。
 だがパーカーのやつは平然として、骸骨兵に指示を出してやがった。
「第一隊は北門への陽動攻撃、第二隊は宮殿を包囲せよ。第三隊は南門を攻略する。第四隊、第五隊は市街に散開し敵を混乱させろ。進め!」
 こいつ、兵の扱いに妙に手馴れてんな。
 もしかして生前は貴族か軍人だったのか?


「さてと、南門を占領しに行くとしようか。内側からなら簡単に開くから、楽でいいね」
「まあそうだろうな……」
 まさか骸骨一匹がこんなに増えるとは、誰も思ってなかっただろうな。
 オレも思ってなかった。


「おいパーカー。ヴァイトのヤツは、この作戦を許可してるんだろうな?」
「もちろんさ。市民や味方の兵士を傷つけるなと、しつこく言われてるけどね」
「あいつらしいな」
 オレが笑うと、パーカーもカタカタと笑った。


「でも誰がボリシェヴィキ公の手下なのか、僕には見分けがつかないからね。骸骨兵に攻撃してきたとしても、職務熱心なだけの衛兵かもしれない。だから人間には一切攻撃しないよう命じてある」
「じゃあ反撃せずに、数の力で城門を開くつもりなのか?」
「骸骨兵も、素手で人間を取り押さえるぐらいはできるからね。邪魔する人間は拘束させてもらうよ」


 パーカーはそう言って、骸骨の死霊術師どもに高らかに命じた。
「もっとだ、もっと呼び出せ。冥府を空にしろ。今宵は亡者の宴、死霊術の祭典なるぞ。生者の都を死者で満たすのだ」
「やっぱお前怖いよ!」
「ははは、君やヴァイトたちがいてくれる限りは大丈夫さ」
 本当にこれ大丈夫なんだろうな、ヴァイト?
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