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第5話-対海賊
 海軍の島、マリンフォード。
 地理的条件こそが、そこを要所としてきた。
 海軍の要塞があるから、そこが重要なのではない。そこが重要だからこそ、海軍が要塞を置き、それが重要性を更に高めた、というのが正解だろう。
 
 今、我々はそこを目指していた。
 いた、と過去形な理由は単純だ。
 今、我々はというか、軍艦は進路変更しているからだ。
 
 『海賊』

 その一報が入った事により、軍艦はその進路を変えた。
 ゴール・D・ロジャーの処刑以来、急速に増加する海賊達。
 海賊というと、どんな連中を想像するだろうか?
 法に縛られる事なく、自由に航海するアウトロー?弱きを助け、強きをくじくヒーロー?
 残念ながら、そんな連中はほんの一握りにすぎない。
 原作でも、主人公である麦わらのルフィ、白ひげエドワード、赤髪シャンクス、過去の海賊だがルンバー海賊団もそんな雰囲気を持つ海賊だった。
 だが、初期に出てきた金棒のアルビダは恐怖でクルーを縛っていたし、道化のバギーは町一つを制圧し、奪っていた。
 ルーキーの中でもルフィを上回る賞金首だった海賊キッドは、自身の夢を馬鹿にしたという理由があったとはいえ、多数の命を奪ってきた。
 それが海賊だ。
 考えてみれば、当たり前の話だ。
 白ひげや赤髪のような大海賊ならば、『自分のシマ』という場所を支配し、そこから上がりを受け取る代わりに他の海賊からの保護を与えるという、昔風のヤクザみたいな真似も出来たのだろう。
 ルフィのように少数からなり、しかも強者の揃う海賊ならば、同じ海賊でも悪事を働く連中をぶちのめして奪うという手もあるだろうが、普通の海賊はただ奪うしかない。
 それもなるだけリスクを減らさなければ、下っ端がついてこないから、より容易な場所、すなわち平穏に暮らしている民間人を狙う、という事になる。
 『海賊は悪』。
 それは決して嘘ではないのだ。
 ……たとえ、今の海軍が多くの矛盾を含んでいたとしても。

 とりあえず、今回はそんな葛藤は必要ないらしい。
 賞金額七千万ベリーの海賊、『砲撃の』ハルード。
 とはいえ、今回の相手は悪魔の実の能力者ではない、らしい。
 原作ではポコポコ出てくるから忘れているが、悪魔の実は希少だ。
 事実、思い返してみれば、白ひげの隊長クラスでも、悪魔の実を使っているのはほんの数人だった。……まあ、漫画な以上分からんでもない。悪魔の実の方が戦闘見栄えするからなあ。
 で、問題となる賞金首の前には俺がいる。
 ガープさん曰く『やってみろ』、だそうだ。

 さて、問題は、相手がどういう攻撃手段を使ってくるか、だが……。
 というか、見れば分かるよな、大型の大砲を平然と構えてるのを見れば。
 確かに大柄だ。
 2mを越す身長に、みっしりと筋肉のついた肉体。
 そして、大砲にした所で元の世界の大砲とは比べ物にならないぐらい低性能な事は理解している。砲弾が丸い時点で予測はつく。
 だが……それでも大砲を個人の携帯火器としているのは矢張り非常識だと思うんだ。
 とか考えてる内に大砲を撃ってきた。……成る程、だから二つ名が『砲撃』か。
 『紙絵』でかわす事も出来たが、それをやると船が破損してしまう。つか、それまで考えてる可能性があるな……という訳で『鉄塊』の練習がてら、やってみた。
 うむ、見事にはじけたな……。

 今でこそ、こうして普通に戦闘出来ているが、初めてジャングルで戦闘した時は酷いものだった。
 当たり前だろう、俺は元々ごく普通の日本人だったんだ。
 現代の、普通の日本人が命がけの戦闘なんて、体験してる訳がない。
 実際、初めて猛獣と対面した時はすくんで体が動かなかった。俺が悪魔の実を食って、普通の攻撃が無効になっていなければ、当の昔にあの世逝きになっていただろう。
 やっとの事で兎みたいな動物を狩ったが、今度はそれを殺せなかった。
 つぶらな瞳でじっと見詰められていると、どうしようもなく罪悪感が浮かんできて……。
 結局、殺せず逃がしてしまった。
 それが、何時頃からだっただろうか……動物を殺せるようになったのは。
 殺意を向けてきたから殺す、自分が生きる為に殺す。
 当たり前の話だが、出来るようになるまでには随分とかかった。
  
 正直、今も人間相手という事で内心は不安で一杯だ。
 いや、不安とは違うか……どこかに未だ日本人としての感覚が大分鈍ってはいても残っているのだろう。

 『人を傷つける事』或いは『殺す事』

 日本に措いては、それは犯罪とされていた行為。
 けれど、こちらの世界では当たり前の行為。
 ましてや、相手は海賊。こちらを殺す気で攻撃してくる。
 漫画ではない、ゲームでもない。
 それが現実。
 そして、内心で躊躇を感じながらも、体は動く。これも数年間の狩りの賜物だろう。
 大砲を撃ちはなった海賊……ハルードは恐るべき速さで次の砲弾を込め、発射してくる。その速さと来たら、単発の筈の大砲がまるで連射式に見える程だ。
 しかも、その狙いは正確無比。
 成る程、大砲の反動を抑え込む筋力と、大砲の扱いの技量がこいつを高額の賞金首に押し上げた原動力か。
 そうは思いつつも、まだ隠し技あるんだろうなあ、と思いながら接近する。
 『鉄塊』には欠点もある。
 最大の欠点は使いながらの移動が出来ない、という点だ。
 不可能ではない。実際、原作でもCP9のジャブラはやっていたが、同時に彼は『出来るのは自分だけ』とも言っていた。少なくとも、彼が知る範囲では他に出来る者はいなかったという事だろう。
 まあ、それはそうだろう。筋肉を緊張させて、体を硬くしているのに、その状態で通常通り動ける方が普通はおかしい。
 
 自分の場合は、幸い食らっても何とかなる。
 だからこそ、思い切ってやる!
 『紙絵』でかわし、瞬間の隙をついて、『剃』で接近する……だが、攻撃の瞬間矢張り躊躇してしまった。

 『殴ったら、怪我をしてしまうのでは、当たり所が悪ければ死んでしまうんじゃ』

 そう思ってしまったのだ。
 その一瞬の躊躇が、相手の反撃を生んだ。
 
 脇から、『お前はベルセルクのガッツか』と言いたくなるような小型の大砲を取り出し、ぶっ放してきたのだ。
 まともに喰らう……それも、『鉄塊』のかかっていない状況で、だ。
 当たり前のように自分の体に大穴があいた。
 一瞬勝ち誇ったような相手の顔を見つつ、溜息をついて。
 相手の顔が驚愕に陥る前に連撃を叩き込み、吹き飛ばした。それで終わり。もう立ち上がってくる事はなかった。
 
 「ふむ、まだまだじゃな……とはいえ、破壊力は大したもんじゃ。後は経験じゃのう」

 ガープさんの言葉に頷く。
 結局、こういうものは慣れなんだろう。そして、慣れなければ、この世界では死んでいく。今のだって、相手は殺意を持って、こちらを殺す気の攻撃だった。……助かったのは、こちらの体が液体金属である水銀故に貫通していったからに他ならない。
 
 ……ちなみに、兄弟……いや、この際公開してしまうと、雌なんで妹か?グラン・タイガーのアリス(ア繋がりで名付けた)は普通に他の海賊達を倒していた。
 ……いや、だってさ。あっちは別に躊躇とかしないし……俺と生まれたての頃から鍛錬してたお陰か、剃と月歩と紙絵使いこなすんだよ……最近じゃ鉄塊、俺より先に使えるようになったし……そら、普通の海賊じゃ太刀打ち出来んよな。
とりあえず初の人間相手の戦闘
大分、相手をどうこうする事に対する意識は数年間の狩りのお陰でマヒしてますが、矢張り、まだまだ躊躇あり
とはいえ、悪人なら殺してもOKなのがこの世界なのですよね、物騒な世界です


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