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第230話-秘めた決意
 高速で森の中を駆け抜ける者達がいる。
 ルフィ達ではない。ウェイバーの使い方を知らない彼らは貝船でのんびりと雲の道を進んでいる。
 では何者なのか?
 その答えは一つではない。
 島の外からはシャンディアが、島の中央からは神兵が。それぞれを目指して動きつつあった。が。
 最初の戦闘は彼ら以外から始まった。

 「油断するな」

 そう口にするのは正しい。
 だが、実践は難しい。
 目前に対峙する敵がいるならば、それも可能だろう。
 だが、目前に脅威も何もなければ、常に緊張し続ける事は出来ず、結果として油断する。
 けれどもそれは悪い事ではない。
 常に緊張し続けるという事は余計な疲労を招き、状況を悪化させる。新兵などが戦場に初めて出た折、緊張して眠れない、緊張しすぎてまともに動けない、緊張で敵を見間違えるといった事は決して珍しい事ではなく、適度に緊張を緩める事が出来てこそ一人前の戦士だと言える。
 だが、もし、そこが。
 何もいないと思っていた場所は、蜘蛛の巣であり、敵は静かに彼らを見続けていたとしたらどうだろうか?
 きっと彼らは本当に美味しい獲物に見えたはずだ……。

 それに気付いたのはシャンディアの先頭近くを走っていたカマキリをはじめとする一同だった。
 
 『体が動きづらくなっている?』

 何かが引っかかったようなそんな感触。
 かすかな違和感に気付いたのは、彼らが優秀な証だったが、今は高速で移動している真っ最中だ。警戒を呼びかける事を考えた者もいたが、目の前に敵が来たのならばともかく、何も見えない状況でそれを発する事は自身が臆病者であるようで躊躇した。
 結果から言えば、それに気付いた時には手遅れに繋がった。
 ぎしり、と。
 突然そんな音を立てたかのような錯覚と共に全員の体が空中で停止した。
 
 「なんだ!?」
 
 誰もが叫ぶその中で。声が響いた。

 「クカカカカカ……ようこそ、シャンディアの諸君。……間が悪かったな。この神の島、少々前に状況が変わった……場所が変わってな。一足先に俺の試練は張り終わった」

 既に幾度か戦ったが故に、その声の主の正体に気付いたシャンディアは、その結果として現状自分達が陥った状況も把握した。

 「紐雲か……!」

 見えない程に細く、けれど鉄のように強靭な紐のような雲。
 それを島の入り口から手繰り寄せてきたとなれば、動けなくなるのも道理。
 一本一本は細くとも、束となれば鋼鉄のワイヤーロープにも匹敵する紐雲に絡まれれば、それは如何に屈強な戦士といえど、身動きが取れなくなるだろう。

 「ああ、シャンディアの諸君。荒い歓迎を許したまえよ?そう、紐雲だ……それをお前らはご丁寧に自分の体でかき集めてきた訳だ……動けまい」

 ここで、神官シュラは言葉を区切り、武器を構える。

 「ただ一人を除いてはな!」

 かっと目を見開き、空へ舞う。
 その視線の先にある姿はワイパー。ただ一人違和感に気付いて、咄嗟に進路を変更した男だった。
 空を舞いながらバズーカを放つ。
 だが、舞う鳥フザの機動はそれを易々とかわす。

 「馬鹿め!空で俺に敵うか!」

 実際、シュラの戦闘力は空という分野に限れば高い。
 高機動戦闘で真っ向立ち向かえるとしたら、射程の長い鉄の試練のモーム神官か、先代の神ガン・フォールぐらいのものだろう。
 ……ただ、それだけに油断したとしか言いようがない。
 突き出されるヒートジャベリンだったが……無造作にワイパーは武器も盾も捨てた。
 それが予想外で結果として、シュラはその穂先の狙いがずれ、ワイパーの肩口を貫いたに終わった。
 ワイパーの狙いは『肉を斬らせて骨を絶つ』。
 「馬鹿め、衝撃貝などで俺が……!」と喚くシュラに構わず、排撃貝を作動させる。
 衝撃貝の十倍に達するその一撃を受け、シュラは落ちていった。

 「悪いが、お前一人に付き合っている暇はない」

 排撃貝。
 ワイパーの狙いはそれに意識を向けさせる事にある。
 周囲が排撃貝を使った彼を非難する声を聞きながら、ワイパーの狙いは己で決着をつける事に意識を向けていた。
 確かにクリケットとの出会いで、彼は譲る所は譲った。
 だが。
 クリケットの子孫と出会えたからこそ、彼らがシャンディアの事を忘れず戦い続けて、ここに辿り着いたからこそ。ならば、シャンディアたる自分達も彼の一族との約束を、鐘を鳴らすのは己の力であらねばならぬと思うのだ。
 その為に障害となるのならば……神をも倒してみせよう。 
 その覚悟を持って、ワイパーは口に出すのは「これぐらいやらなくて、こいつら神官が倒せるたまか!」と怒鳴るだけで済ませた。
 そう。
 シャンディアの誇りにかけて、誓いにかけて。
 大戦士の子孫である自分が鐘を鳴らしてみせる。 
 自分の命を賭けても、だ。
 
 
ストレス溜まる日々です……

何もかも放り出せたら、気楽だろうなあ……
そんなのやりたければ、ジャンボ宝くじの一等でも当たらんと無理でしょうが


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