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読んでいただけた方感謝です
とりあえず、休みの間に出来るだけ投稿して、後はちょこちょこと……
第2話-癒し
 時間だけはあった。
 時間しかなかったとも言う。
 まあ、何です。
 この世界に辿り着いてから、はや1年が過ぎました。
 幸い、遺されていた資料から食い物と水は確保出来るようになった。
 危険な動物達はいたが……悪魔の実のお陰で生き延びた。

 悪魔の実。メタメタの実、モデル水銀。
 これは想像以上に便利だった。
 水銀という常温・常圧で液体という唯一の金属だ。
 つまり何が言いたいかというと、通常攻撃を受けても、自然系並に攻撃が効かないのだ。液体に攻撃しても、飛び散るだけで、有効的な打撃は与えられない。打撃、斬撃、刺突。その全てが無効。
 加えて、原子番号が80という重さ。
 原子番号は質量数と密接に関係している。まあ、何だ、要は見かけによらず案外重いって思ってもらえばいい。水銀より原子番号が大きい=重いのとなると……放射性物質を除けば鉛とかごく僅かだった筈、だ。少なくとも金や鉄より重い。
 何が言いたいかというと、水銀を操っての攻撃は十分な破壊力を持てる、という事だ。
 こうした悪魔の実に関する話はまた後程語る機会も多いだろう。

 ただまあ、悲しかったのは……日本人なのに、風呂に入れなくなった事だな……いやね、抜けるんだよ、力が……やっとそれらしきものを作った風呂に入るとさ……あやうく風呂で溺れ死ぬ所だった。
 しょうがないので、最近は簡単なシャワーだ。
 どうやら死んだCPの人(名前とか身元が分かるようなものは全く残していなかった)も悪魔の実の能力者だったらしく、そうした設備とかもあったんだ。


 さて、こうして悪魔の実の使用が可能になってからは食料を確保して、肉も狩るのも楽になった。
 そうして必要数を確保し、調味料作りやら薪やらを得て、暇な時間は全て鍛錬に当てた。
 ……というより、何かしてないと気が狂いそうだったからだ。
 漫画の世界に入り込んだ、という事だけじゃない。
 これまでの全て、生きてきた人生はまだまだ日本人として考えるなら、先は長いとはいえ30年を越える。
 当然、親兄弟、友人や同僚……いる訳だ。
 これまで趣味とかで集めてきたもの、楽しみにしていた漫画や小説。
 ……全てと切り離され、今いるのは生きている人一人いない絶海の孤島。
 誰も傍にいない、一人ぼっちの世界。
 寂しさ、という奴が何もしていないと込み上げてくる。
 忘れる為にも死に物狂いで訓練を続けた。
 気付けば、まだまだ粗雑で改善余地が多いと自分でも分かるが、一応剃と月歩、嵐脚は覚えていた。まあ、実の所「剃」の修得に一番時間がかかって、それが出来た後は、後の二つは楽だった。
 つか、本当に規格外だな、この世界……理論はわかっても、元の世界じゃ不可能だろうに。何しろ、水に足を踏み出して、右足が沈む前に左足を……の世界だからだ。
 ……指銃や鉄塊、紙絵はどうしたのかって?
 ……紙絵は次に覚えようと頑張ってる。
 けど……後の二つが、ねえ……。
 実感が沸かないのだ、これが!
 鉄塊は、指銃はそれらしきものは簡単に出来たのだが……俺にはわからない。これが悪魔の実の能力で固体化したものなのか、それとも六式で出来るようになったのか……!
 多分前者だろう、初期からあっさり出来たし。
 多分、これ以上はきちんと六式を修めている海軍の人にでも見てもらわないと、その二つは無理だろう。
 
 ちなみに最近では某H&Hであった、感謝の正拳一万本なんてのもやっている。
 ……終わる頃にはかなり時間が過ぎるからね、ありがたい。

 さて、それはさておき……1年経った所でこうして日記を書いているのには理由がある。
 家族が出来ました!
 いや、人間じゃないけどさ。

 
 それはある日の狩りに出た時の事だった。
 基本、狩りは数日分纏めて必要なものを狩って、一部は干し肉にしている。これらは緊急用なので、大事に保存している。
 無事大物を仕留めて……というか、全長5m近い猪もどきを持って帰れる自分の筋力が恐ろしくなってきた今日この頃だ。本当にこの世界鍛えればどんどん上限がないみたいに上昇していくよな……まあ、帰り道で、だ。
 
 みゃう……みゃう……

 そんな鳴き声が聞こえた。
 動物とかの鳴き声に誘われて、下手に行くと危険な猛獣とかにバッタリだったり、って事も多い。まあ、今の自分なら大丈夫だが、それでも無用ないさかいは……と思っていたんだが。
 何故かその時は足を向けた。
 藪を越えたその先には……巨大な1頭の剣歯虎、そしてそれに巻き付くようにしている大蛇。その2体の…死体だった。腐乱していない所や周囲の折れた植物の様子を見ると、まだそう時間は経っていないだろう。
 
 『相打ちか』

 鳴き声の主を探すとすぐに見つかった。
 母虎だったのだろう、その腹の辺りですがりつくようにして鳴いている2匹の子猫、のように見える虎の子供。
 元は3匹だったのだろうが、1匹は……体の半分が潰されて、母虎の顔の付近で転がっていた。
 ……弱肉強食。
 自然界の掟だ。
 そうして、敗れたものの子供は、他のものの餌食となる……中には運良く成人する奴も混じっているだろうが、このサイズの猫のような虎が生き延びれる程ここの自然は甘くない。
 俺が近づくと……2匹は片方は俺に向って唸り声を上げ(とはいえサイズとかがあるから可愛いだけだが)、もう1匹も唸ってはいるんだが……こちらは少々臆病なのだろう、もう1匹の陰に隠れるようにして唸っている。
 
 ……寂しかったんだ。
 だから……。
 ひょっとしたら、と思う気持ちがあった。
 もし、この子達が未だ母虎の乳しか吸えないのなら、俺にはどうしようもない。
 だが、ひょっとしたら……。
 そう思った俺は水銀のナイフを生じさせると、肉を切り分けた。……ああ、無論水銀を肉に染み込ませるなんて真似はしない。
 そうやって切り取った肉を適当な小さめサイズにすると、それを子虎達の方へと放り投げた。
 一瞬ビクリとして、片方に至っては逃げかけたが……俺が、その場に座って、何もしないのを見ると、もう片方が恐る恐る近づいて……

 肉をさっとかっさらって、兄弟の方へと持ち帰り、二人で夢中になって食べ始めた。
 ……良かった、どうやら既に肉が食えるぐらいにはなっていたらしい。
 
 三日間かかった。
 三日の間、この場所を動かず(いや、正拳突きだけはやったけど)、肉を切り取り、周囲の果物や薪を水銀を伸ばしてもぎ取り……ひたすら餌付けをした。
 おそらくこの子達も母が既に動かないとわかってはいたんだろう。
 そして、俺が自分達に危害を加えたりしないって事も理解してくれたんだろう。
 三日が過ぎる頃には俺の傍で、手渡しで肉を受け取ってくれるようになった。片方だけ。
 もう片方は臆病というか警戒心が強いというか……もう1匹が呼んでもびくびくしてる。
 つか、元気な方は最初こそきつかったが、一旦慣れだすと凄く早かった。
 何しろ、今じゃ俺の膝の上で肉を食ってるぐらいだ。
 
 結局、更に一日が過ぎる頃にはようやくもう1匹も近づいてくれるようになって……俺は2匹を家へと連れ帰った。
 彼らも、しばらくは母虎の方を振り向いていたが……駆け戻ったりはしなかった。
 こうして、俺に家族が増えた。
 
 みゃうみゃう……

 朝に、昼に鳴き声を上げて、じゃれついてくる子虎達……ああ、本当に癒されるよ。
 後に振り返った時、もし、この子達に出くわさなければ、俺は発狂していたかもしれない、そう思うような日々に措ける出来事だった。

   
もう少し、孤島での話が続きます
……一応次回は更に数年が飛んで、某お人との出会いまで書く予定です


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