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非日常同居生活
作:ザード



第六話 「親睦会」


 ピピッ、ピピッ、という機会音目が聞こえてくる。

「もう朝か。冬は本当に朝がきついな……」

 ふぁっ、と大きなあくびが出る。目が覚めてからもしばらくは睡魔と戦闘だ。かなりの眠気を感じるが、とりあえずさっさと布団から出て着替えを済まし、朝食を作りに一階に降りる。

「今日の朝食は……眠いからお手軽作品でいいか……」

 食パンを2枚トースターに入れ、フライパンで目玉焼きを2つ作る。

「あ、亜衣の分忘れてた……まあ、いいや。親父の分をあいつにやろう。」

 朝食の準備ができたところで、フライパンとおたまを取り出した。いわゆるひとつのお約束、である。

「起きろ!!朝だぞ!!」

 おたまでフライパンを叩きまくる。漫画チックな感じがするが突っ込まないでくれ、所詮俺の日常は困難だ。

「浩介君……起こすときはもっと静かにやりなさい……!」

 親父が部屋からふらふらとした足取りで、眠たそうにしながらも若干怒り口調で出てきた。

「普通のやり方じゃ起きないからな。俺たちと違って親父は仕事があるんだから、さっさと起きてもらわないといけないんだよ。」

 親父はそのままふらふらとした足取りで席につく。そして二階からもすぐに亜衣がおりてきた。

「耳鳴りがするよ〜……」

「我慢しろ。叩いている本人はもっときつい。」

 未だに先ほどの騒音のせいで耳がガンガンするが、それは我慢してとにかく朝食を済ますために、亜衣をイスにすわらし俺自身もイスに座った。

「んじゃ、さっさと朝飯を食べようぜ。」

 俺はトーストにかじりつく。亜衣もトーストにかじりついた。が、親父だけはかじりつかない、いやかじりつけない。

「あの〜、浩介君、僕の朝ごはんは〜どこかな?」

「悪い。作り忘れた。」

 軽く気持ちのこもっていない謝罪を済ますと、すぐにまたトーストにかじりついた。周りに気を使う亜衣だったら、ここで何か言うのだろうが、まだ眠いらしく何の発言もしない。眠気ってすげえな、おい。

「ちょ、浩介君!それはあんまりだよ!嘘だといっておくれれよ!」

「だ〜、うるさい!朝からお前のテンションにあわせてられねえんだよ!少しは黙って食え!」

「食べるものもないのにその命令はひどくない!ねえ、そう思わない、浩介君!?」

「あ〜もう、うるせえ、うるせえ!俺の目玉焼きくれてやるからさっさと食って仕事へ行け!」

 親父の前においてあった何も乗っていない皿に俺の皿においてあった目玉焼きを置いてやった。

「ぶーぶー、こんなんじゃ仕事中もたないよ〜!」

「だあ!ガキみたいに駄々こねんな!うざいだけでなく気色悪い!年齢考えて発言しろ、お前は!」

 ああ、もうこいつとくだらない漫才するのもホントいやになってきたな。さっさと朝食を済まし、俺は自分の部屋に戻る。

『♪〜♪〜♪』

 ガチャ、と部屋の扉を開けると同時に、それを待っていたかのように着メロがなり始めた。

「なになに、親睦会の予定は、11時からカラオケ、7時から俺んちでいつものメンバーのみ晩飯、か……ん、なんだ、追伸?……『カラオケは浩介の知らない店でするので、案内しないといけないから10時にあたしの家に集合』か。10時からか。まだ2時間はあるな。」

 窓の外を見ると、親父が車に乗って家から出るところが見える。親父が家から出たことを確認できたところで、亜衣に親睦会の予定を伝えに一階に降りる。

「あ、浩介くん。昨日清田さんが親睦会するって言ってたけど、実行されるの?」

 どういう予定か、を聞くのではなく、本当にするかどうかを聞くとは、こいつ結構変わってるな。

「あいつのことを『さん』付けで呼ぶな、気味が悪い。本人が言ってたように、呼び捨てでいいんだよ。」

「う〜ん、でも……」

「学校で俺と一緒に行動してたら絶対あいつらとも親しくならないといけないんだ。なのにお前があいつのこと『清田さん』なんてよんだら、みんなひくぞ。」

「……ひくことはないと思うけど……」

「それでひくのがあいつらだ。」

 まあ、知り合ったばっかりで呼び捨ては正直難しいかもしれないが、俺のことはすぐに『さん』付けせずに呼べるようになったんだから、それくらいすぐにできるだろう。

「とりあえず予定はこの通りだ。」

 俺はさっき送られてきたメールを亜衣に見せる。

「2時間もあるから、ゆっくり用意しとけ。」

「うん。わかった。」

 亜衣は2階に上がり、自分の部屋に入り支度をはじめた。

 俺も自分の部屋に入り、支度をはじめた。

「持っていく物はMDウォークマンくらいだな。ディスクはBUMPでいいかな。」

 お気に入りのMDのディスクの中から1枚抜き取る。それをウォークマンに入れて机の上においた。

「なんかまた睡魔が襲ってくるな……まだまだ時間はあるし、ちょっと寝ようかな……」

 ベットにどかっ、と倒れこむと、すぐに意識が飛んでいった。










「…ん、……けくん、…介くん、浩介くん!!」

 ドアをどんどんと叩く音で目がさめた。

「まだ出なくていいの?もうすぐ10時だよ?」

 ……

 ………………

 ……………………………なんですと?

 時計に目をやると、短い針は10を指し、長い針はちょーど12を指していた。

「うおおおおおお、やべぇ!!」

 大変だ、遅れちまう!ここからあいつの家まで走っても10分はかかっちまう!

「まずい!急がねえと……」

 焦りながらドアノブに手を置いた瞬間、携帯が鳴り出す。まさかと思いながら、そろりと携帯を覗き込む。

『送信者 美咲』

 ……どこと泣く嫌な予感がするのは何でだろうな?

『遅刻。』

 不満メールを送りつけてくるの速くないか?……って、ん?よく見るとまだ下に何か書いてあるな。

『窓を開けろ、今すぐ、さっさと!』

 ……嫌な予感、上昇。ともあれ、逆らったら余計に嫌な予感がする。ここは指示通りに窓を開けて……って、下に誰かいるな。あれは、美咲と純?

「ふざけんじゃないわよ、馬鹿野郎!」

 下にいた美咲は、怒りの雄叫びをあげながら俺が開けた窓へと数個の爆竹を投げ入れ……

「っておい!ちょ、おま、待てやァァァァァァ!」

 冷静に分析してる場合じゃないぞ、俺!なにやってんだ!

 ドアを勢いよくバタン!!と開け、目の前にいた亜衣の手をひき階段を二段飛ばしで降りていく。

「きゃっ!わああああ!浩介くん、危ないよぉ〜!」

「悪い、ちょっと我慢してくれ!」

 玄関近くまで行ったところで、俺の部屋からあきらかに並みの爆竹数個じゃなるはずのないほどの超爆音が鳴り響く。多分、この前の学校の体育館での大爆音もこいつの作った特製爆竹が活躍してたんだろうな。

「おいコラ、美咲!」

「うるさい、馬鹿浩介!覚悟なさい、せめて選択権をあげるわ!無茶苦茶痛い鉄拳10回と、とてつもなく痛い鉄拳10発、どっちがいい?」

「ちょっと待て!その二つはどう違うんだ!?俺には違いがわからない!」

 などという俺の抵抗も空しく、美咲の全力の平手は俺の左頬を捉える。グハッ!滅茶苦茶痛い!

「ふん!今日のところは平手で勘弁してあげるわ!」

 全然勘弁できてねえよ。ほら、目にうっすらと涙が出てきやがった。

「浩介、ちょっと遅かったね。寝坊?」

「この季節だと、睡魔には勝てんかった。ところで孝昌は?」

「時間ギリギリまで難破……いや、ナンパだってさ。」

「まあ、いつものことだがな。ところでお前ら、何でここにいるんだ?集合場所は美咲の家だろ?」

「そんなことより、用意が終わったならさっさと行くわよ!あんたが遅刻したから、遅れるかもなんだから!」

 美咲は、「あんたが遅刻したから」という部分を強調して言った。なんで俺だけ?亜衣は?それ以前にさ、俺の質問にくらいは答えてくれよ。

「みんな歩いていくの?遠い場所なんだったら乗り物に乗ったほうがいいんじゃないかな?ほら、自転車とか。」

「……」

 しばし沈黙。

「普通に歩いたほうが健康のためなのよ!!」

「わかったわかった。お前が自転車に未だに乗れないのはよ〜くわかったから。」

「う……」

 悔しそうなうめき声をあげて俯く美咲。今更な話だが、こいつはかんなりの運動音痴。だってさ、自転車乗れないんだぜ?

「でもホント、未だに自転車に乗れないのって珍しいよね〜。ねえ、浩介?」

「正真正銘、超真極完全無欠のスーパー運動音痴だからな。来世になってもこの運動音痴は引き継がれることだろうな。」

 さっきのビンタの分、しっかり返させてもらわないとな。いまだにひりひりしやがるぜ、ぶたれた場所。

「こ、浩介くん、言いすぎだよ。私も運動苦手だから、たまに自転車とかうまく乗れないこともあるし……」

 ここで亜衣が軽く止めに入った。しかし、嘘丸出しだ。せめてもうちょっとうまく嘘をつけ、孝昌ほどうまくなくていいからさ。だが、そのセリフを聞いて、美咲の方は何か感銘を受けたらしい。俯いた顔をバッと挙げたかと思うと、目をウルウルさせて亜衣を見た。

「きゃ〜〜ん!亜衣ってば優し〜〜〜!」

 美咲は、いきなり叫びながら亜衣に抱きついた。亜衣は、当然のことながらおろそろしている。

「え、ちょっ、清田さん!?」

「も〜、そんな堅く呼ばずに、美咲でいいわよ!!」

 はたから見れば、結構ほほえましい光景だ。この調子で亜衣がみんなになじんでくれれば大助かりなんだがな。

「と、ところで美咲ちゃん、はやく行かなくていいの?」

「およ?ああ、そうだったわね。じゃ、行きましょっか。」

 機嫌を大分戻してくれたようだ。もし、亜衣があそこで美咲を哀れまなかったら、もう一発ビンタが飛んでいたかもしれなかったからな。あんだけいじってなんだが、俺は内心結構ホッ、とした。

「んじゃ、レッツラゴー!」

 美咲の先導のもと、俺たちはカラオケ店へと向かった。










 カラオケ店には、見知った顔の連中が十数人と、孝昌、樹のやろうがいた。

「え〜、これより、広瀬亜衣ちゃんの親睦会をはじめます!」

「おお〜〜!」

 美咲の掛け声で、みんなが叫んだ。

「んじゃ、カラオケBOXに突入〜〜!」

 わぁぁぁぁ、と、みんなが店内へ入っていった。部屋がわからなくなったら困るので、俺たちもそれを追いかけた。
 
「最初、誰が歌う!?」

 美咲が大声で尋ねると、みんなが俺を指差す。なんで?

「やっぱ初めは荒神だろ!!」

「お前BUMPとかの歌得意だろ!!」

 そういえば、カラオケを何回かしたことがあるが、毎回俺が最初だったな。まあ、いいや、歌ってみるか。

「んじゃ、BUMPの「ハルジオン」、よろしく!」

 俺だけ「だり〜」なテンションでも仕方ないので、俺もハイテンションになることにした。

「♪〜僕の中で揺れるなら〜折れることなく揺れる ゆるぎない信念だろ〜!!♪」

 結構熱唱した。点数は……

「うおっ、87点!」

「よっしゃ!」

 そんなに悪くはない、いや、むしろいい!俺の歌は、コンピューターにも支持されている!

「次、俺が歌うぜ〜!!」

 一人の男子が立ち上がった。マイクを渡してやると、マツケンサンバ2を熱唱した。いや、古っ!まだこれ歌う高校生いたのか!

「♪オレイ!!♪」

 全員乗り乗りで手拍子とかをしながら歌を聴いていた。点数は……

「82点!」

 これまた結構点数たかし。次にマイクを持ったのは……

「んじゃ、次は俺が歌うぞ。」

 孝昌だった。ここでみんなのとった行動は……

「みんな!死にたくなかったら耳をふさげ!」

「おう!」

 亜衣以外、己の耳をふさいだ。

「ちょっと、待て!!それはひどいぞ!!こうなったら、この前よりどれだけうまくなったか、聞かせてやらぁ!!」

 孝昌が歌いだした。スピーカーから出てくる声は、耳をつんざく死霊の歌声に聞こえた。言っておくが、私的な比喩表現とかしたつもりはないぞ。マジだからな、これ!

「みんな!!死ぬんじゃないぞ!!」

 必死にお互いを励ましあいながら意識を保つ。すでに亜衣はノックアウトしていた。

「点数、0点」

 当然だ。1点でもあったら、びっくり仰天だ。つーかあったら俺がこの機会を作った会社に苦情を出すっつの。

 まあ、わかったと思うけど、こいつはおぞましいほどの音痴なのだ。

「うわぁぁぁぁ、頭ガンガンするよ〜〜〜」

 亜衣はすでに正気を失っていた。その後も、孝昌以外の奴に順々にマイクが回り、長い時間をすごしていった。










 カラオケで騒ぎまくった後、解散すると、俺、亜衣、純、美咲、孝昌は俺の家に向かった。晩飯である。

「普段は外食で済ましてるのにな。」

「いいじゃん、たまにはさ。」

 純が俺の家の扉を開ける。それは俺がやるべきことじゃないのか?

「さて、じっくり味も染みてるかな?」

「え、浩介くん、何の事?」

 実はこんなこともあろうかと、チャーシューを鍋に入れて、ずっと煮込んでいたのだ。寝る前にこれだけは済ませといてよかった。

「スープはもとからあるから、すぐにでもラーメンが作れる。テーブルで待っとけ。」

「お〜、イエス!!」

 俺と亜衣以外は、全員リビングのテーブルのイスに座った。

「浩介くん、私も何か手伝うよ?」

「いいって。お前は、あいつらと話してこい。」

 少しためらいながらも、とてとてとテーブルに向かった。このまま、しっかりあいつらになじめたらいいな。


続く












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