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召喚されといてなんだけどおうち帰りたい  作者: かんむり
第2章 災禍の渦と勇者の伝承
18/80

17話 『メルオンVS.アレル』★

 ―前回までのあらすじ―

 アレル君がご乱心です。


 ――キイィン!


 メルオンとアレルの剣が交わり、荒野に火花が散る。

 互いにに剣と眼をらみ合わせながら、アレルは膝をメルオンの脇腹に繰り出し、メルオンは片手を放してそれを受け止める。

 そして剣を弾き、距離を取ってはまたぶつかり合う。

 少しばかりメルオンがおし込むと、アレルは重心をずらして耐性を崩させ、内側に入り込んでみぞおちを蹴り上げる。

 メルオンはその足をすかさずつかみ、一回転させてアレルを腹から地面に叩きつける。


 そんな互角の攻防がしばらくの間続く。

 神官は二人の戦闘を離れたところでじっと観察していた。


挿絵(By みてみん)



「ゼェ……ハァ………」


 そして次第に体力面での差が出始める。


「おいおいどうした勇者さんよ。そんなもんじゃオレには到底勝てねえぜ?」


「ハア……―――ニッ」


 メルオンが煽るように言うと、アレルは歪んだ笑顔を見せ、剣を投げ捨てて突進していく。


「は!?」


 ヤケにでもなったか!?

 不意を突かれたようにメルオンは目を見開くと、さっきまで息切れしていたのが嘘かのような速さでメルオンの目の前までアレルが迫ってくる。

 メルオンは「やべっ」と咄嗟にその両手剣を盾のように構えようと手を動かすが、力の入っていなかったそれは簡単にアレルの拳に弾かれてしまう。


「―――ッ!!」


 本気の殺気を感じたメルオンはカッと目を見開く――が

 直後、殺気と共にアレルの姿が目の前から消えた。


「・・・はぁ。あの若造め、一体何を考えておる」


 神官のその言葉と同時に右側に気配を感じると同時に、何か右手に触れた感触。

 ――彼の右手側にはアレルが握手をして立っていた。


「ツえーぇなあオマエ!」


 アレルは握った右手をブンブン振り回しながら笑顔でそういう。

 息切れも嘘のようになくなっていた。


「な……なんだってんだよ……おい」


「――いた!!」


「「「!!」」」


 状況が飲み込めない様子のメルオン達のところに、ネーア達3人が合流してくる。


「町の外に出たらすごい音がしたので急いできたんですけど……一体何があったんですか?」


 一番近くにいた神官にネーアが問いかけた。

 神官は「フム」と呟いてからメルオン達を指さすと、後発3人は驚愕の目てメルオンとアレルを見る。


「二人ともキズだらけ……!魔物でもでたんですか!?」


 ネーアが神官に再び問いかけると、神官はため息でそれに応えた。


「たった今まで、あの二人がやりあっとった。何故かは聞くな……わしも知らん」


「なんでなのさ!?」


「………」


 メリィがそう言って神官ににらまれる。

 一方グルッドはまだ握手をしているメルオンとアレルの方へ近寄っていき……アレルの頭にげんこつを与えた。


「って!なにすンだァ!」


「なにすんだじゃない。お前、その癖直さないと最悪追放するぞ」


「癖だと……?」


 手が自由になったメルオンはグルッドにそう問う。

 グルッドはネーア達も呼び寄せて、アレルの頭を掴むと一緒に頭を下げた。


「すまなかった。こいつはなんというか……言ってしまえば戦闘狂でな、〝アザ持ち〟であるメルオンの力を試したかったのだと思う」


「……アザ持ち?」


 ネーアが不思議そうにそう呟く。

 するとメリィがネーアの横に駆け寄って自慢げに語りだした。


「アザ持ちっていうのは、世界で10人しかいない剣の達人たちのことなのさ。みんな顔にでーっかいアザを持ってるからそう呼ばれてるんだよさ。グルッドもアザ持ちだよさ」


「……なんかおっかない呼び名だね」


「ああ、私もあまり好きな呼び名ではないな。おかげで初対面の時、陛下の目の前にもかかわらずこいつに勝負をふっかけられたもんさ」


 グルッドはアレルの頭をぽんぽんと叩きながら答えた。


「ちょ、痛イっての!グルッドさン」


「しかし、そいつ本当に勇者なのか?その感じじゃグルッド、お前も手抜いてただろ。俺らにこのザマじゃ、ほかのアザ持ちになんて手も足も出ねえぞ」


「メルオン、残念ながらこいつは本物だ。確かに力じゃまだまだ及ばんだろうがこいつの潜在能力は計り知れん。マ素を取り込むというのも本当だったしな」


「ザンネンっつーな!」


 そっぽを向いてむくれるアレル。

 そこに神官が寄ってきて治癒術を施しながら彼に言う。


「おぬしが勇者だというならわしらは協力しよう。だがしかし、ひとつ言わせてもらうぞ。ぬしの行動は奇怪極まる。ひとつトラップを仕掛けさせてもらうがよいな」


 神官はアレルの首筋に右の人差し指と中指を添えると、そこに小さな魔法陣が形成され、首の中へ消えていく。


「な、何しやがるジジイ!!」


「それは一種の爆弾のようなモノ。何、今のままなら発動せんようにはしておる。しかしおぬしがこれ以上道を外れればその時は…………くれぐれも、用心することじゃ」


 そう言って治癒を終えた神官はメルオンも治そうとそちらへ寄っていく。

 首筋を抑えてじっと神官を睨みつけるアレルの目は、どこか不服ながらも尊敬のまなざしを向けているようにも見えた。



 =========


「……こんなもんかの、もう動いてもいいぞ」


「感謝します、神官殿」


 負傷した二人の治癒を終えた神官は、一息つくとグルッドに顔を向けて頷く。

 それを見たグルッドは5人を先導して穴倉がある方角へ立った。


「では、少し予定が遅れてしまったが穴倉へ向かう。くれぐれも、俺からはなれないようにしてくれ……とくにアレル、お前は監視対象だからな」


「チッ。へーいへーイ……」


 そうして一行は穴倉に向かっていった。





 ===[グレン荒野] 竜の穴倉===


 穴倉入り口は王の伝令が伝わっていたのか既に開いていて、すんなりと中に入ることができた。


「………ホム、えらく暗いの」


 神官はあたりを見ながら言う。

 グルッドは手に持っているランタンを上に向けて、壁掛けのたいまつが消えていることを確認して言った。


「ここは風がよく通りましてね、灯りをつけてもたちまち消えてしまって大変なんですよ……しかし経費削減のため、致し方なしとしている状態です。この辺りは探索もすんでいるので常時灯りは付けていません」


「何ジジイ、暗ぇのこわいのカァー?なっさけね!……いてっ」


 アレルが茶化すようにそう言うと、神官は後ろを歩く彼の頭を杖でどついてから先を見る。


「まあ、そう言うことでもいいわい。しかし……これは、おぬしの部下に捕まったのも正解だったかもしれんの。グルッドよ」


 神官がそう言うと、グルッドはすこしビクついてしまう。

 そして捕まったというフレーズに反応したメルオンは、最後尾からグルッドを睨みつけて言う。


「捕まった……とは、どういうことだ」


「まあまあ、抑えんか単細胞め。城におったのも捕まったのも全部わしがアホしでかたせいじゃ。ちゃんと説明するからきいとれ」



 神官はメフィルに行く前。グレン荒野での一連を彼らに説明する。



「どうやらここに探索を入れること自体が極秘じゃったようでな。表向きは穴倉の地質調査…じゃったかの。世界の果てがそこにあるのを知っとったせいで、この王家の証も相まって即捕まってしもうたわけじゃよ。弁明は大変じゃったぞ?四世のヤツがわしを知っててよかったわい」


「本来なら、貴方様の様な伝説級の王を知らないはずはないんですけどね……私も初めて知りました。ルーダス二世といえば、それこそ多くの戦史に残る大召喚術士です。なのになぜか、その顔を示すものが一切遺されていなかったのですよ。孫の陛下ですら、一目ではわからなかったくらいですから」


「本当に情けない話じゃよ。表舞台から外してはや数十年……まさか肖像画すら残っとらんとは」


 補足説明を入れるグルッドの後に、やれやれとする神官。

 そして少しばかり灯りが見える深部まで到達した頃、メルオンは前を歩くネーアに躓いてその異変に気が付く。


「ん………嬢ちゃん、どうかしたのか」


「いえ、少し気持ち悪いですが……大丈夫です。ごめんなさい」


 よく目を凝らしてみると、辺りには薄いが黒い靄が蔓延しているように見えた。




 つづく

 3章以降勇者と魔王のキーワードは出てくる頻度がかなり落ちると思います。

 ガッツリ出てきはしますが、この作品が勇者と魔王の物語というわけではありません。

 あくまで勇者と魔王というのが存在する世界ですよ、というのを提示する章となっています。

 さてさて次回18話、謎のあいつが再び おたのしみに!

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