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ぱにっく95!激突!打ち破られたリバースアンプリファイアー……!
 息衝く間も与えず、紫電の大玉が大河を襲った。
 重々しい質感があり、おぞましい吸引音を唸らせている。
 軽々しく大河を飲み込み、未知の空間へと誘った。
 水飛沫が周囲に飛び散り続け、残る三割の柱を砕いていく。
 ラインヒルドは宙よりその様子を見下ろしていた。
 冷静に、眉を微塵も動かさずに。
 瞬間、眉が僅かに動いた。
 眼下に映る光景に変化が見られた。

「……“アレ“は」

 黒い大玉が崩れていく。
 まるで孵化する様子を見ているようで、黒い大玉に亀裂が入り、割れていくのだ。
 隙間から白い発光が。
 一本に足らず、二本三本と次々と直線上の光が姿を露にする。
 黒い大玉が全壊したその時、大河は壁に背もたれしながら生徒手帳を構えていた。
 衣服は水に濡れ、下着の色が透けてしまっている。
 生徒手帳は光輝いていた。
 ブーケは驚きを隠せないご様子だ。無理もない。前情報では大河は魔法を使えない筈なのだから。

「タイガ……それ……」

「リバースアンプリファイアー」

 大河はその名を口にし、ブーケの方を向かずにぎこちない笑みを浮かべた。

「今みたいなヤバい時しか使えない魔法なんだけど、少しは役に立たそうかな?」

「タイガ……」

 宙から見下ろすラインヒルド。その表情が神妙に変わっていた。

「分解と再構築の魔法……この人も持っているんだ」

 ラインヒルドは再び、六つの魔法陣を展開した。
 妖艶な紫を発光し、点滅する中、紫電の電流が音を立てて炸裂していた。
 大河とブーケはそれに気付き、再び生徒手帳を構えた。

「タイガ……!」

「大丈夫だ。何度でも分解してやるさ!」

 ラインヒルドはぶつぶつと呪文でも唱えるみたいに独り言を呟いていた。
 当然、大河とブーケには聞こえていない。

「厄介な魔法ですが、威力は重力魔法(ブラックボール)と同じみたいですね」

 重力魔法を展開させる最中、ラインヒルドは空中を軽やかに舞った。
 しなやかな指先に発生したのは、黒い稲妻だ。
 規模は小さく、しかし、両手全て使用し計十発の稲妻が発生していた。
 いや、十匹だ。十匹に“なった“。
 黒い稲妻はその姿を変貌させ、黒い竜と化した。
 実体の見えない、まさに影のような雰囲気をした黒い竜。
 牙と瞳だけが赤く、言葉は喋らないが、常に牙を露にしている。
 重力魔法の魔法陣から紫電の電流が流れ、前方の一点に集束し、先程の大玉を形成していく。
 大河も態々直撃するつもりはない。
 ラインヒルドの真下に向かって走り出す。
 水飛沫を散らしながら、直進する。
 それを見計らって、ラインヒルドは重力魔法を大河に向けて落とした。
 黒い大玉が重々しく落ちてくる。

「何度でも分解してやる!」

「――ええ、どうぞ“好きなだけ分解してください“」

 ラインヒルドは笑っていた。
 大河は虚勢を張っているだけだとでも思ったのだろう。
 力強い眼差しを向けたまま、生徒手帳を真上に構えた。
 突発的な黒い発光が地を差し込む。
 その中で小さく主張している白い光。
 黒と白の二つの光が激突した。
 地鳴りのような轟音が室内を揺るがす。

「十五の兵より、一の王なんですよ」

 思わず、ブーケは叫んでしまった。

「タイガ! 上……!」

 十匹の黒い竜がその凶々しい牙を晒しながら、縦横無尽に襲いかかる。
 大河の手は一杯だ。
 ほぼがら空きの状態。絶好の的になってしまった。
 ブーケは果敢な眼差しを上空に向け、ラインヒルドに向かって飛んで行った。

「ブーケ……!」

 大河の肩にブーケの姿はなかった。


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