桃缶ぱにっく!ブレイク・オブ・クロニクル!(87/160)PDFで表示縦書き表示RDF


桃缶ぱにっく!ブレイク・オブ・クロニクル!
作:俺とキルマシーン



ぱにっく87!合唱魔法!絶対領域・パーフェクトテリトリー!


 午前九時から十一時までの二時間。進級式が行われた。
 場所は校舎前通り。炎天下に晒されて式を行う。
 組ごとに列になって並ぶ。全ての組が集まるとなると、かなりの人数になる。
 一人一人が前に呼び出され、生徒手帳に判を押される。
 軽く指で触れるだけなのだが、それだけで進級した証になるのだ。
 むろん、一人の教員で全員を担当するのではなく、何人にも分けて対応するのだ。
 大河は人混みの中で人一倍はしゃいでいる。これ見ろとばかりに生徒手帳を天に掲げながら。

「やったー! 遂にバカから脱出だ!」

 神戸は大河の口を手で塞いだ。ふごふごと悶える大河。強引に手を離す。

「何するんだよ! いきなり!」

 神戸は頭で周囲を見るよう合図した。
 大河は周囲を見た。違った。
 明らかに自分とは違う表情の生徒達が多数いた。

「何だろう? 嬉しくないのかな?」

「ここにいる全員が受かったとでも思ってるのか」

「あっ……」

 そう、進級式は合否関係なく参加が義務付けられているのだ。
 不合格者の場合、合格者の晴々しい姿を見なければならないので辛いのだ。
 辛いとは言え、それを理由に参加拒否はできない。
 その目で焼き付け、心に刻み、次への励みにするのだ。
 大河は場の空気を察してか、生徒手帳をソッと後ろポケットに蔵った。
 感情の縮図とでも言うべきか。進級式には様々な感情が集まる場でもあるのだ。
 それを押し殺すことも大切なのだ。
 一方、西洋学区でも進級式は行われていた。
 人混みを掻き分け、キャッツは誰かを探していた。親友のブルーだろう。
 そんな最中の出来事だ。
 キャッツは驚愕した。
 思わず、探す足を止めてしまった。
 人混みの中で一際目立つ人物が居たのだ。
 先程の大河のように、大衆に見せつけるように生徒手帳を掲げながら、清々しいくらいに無知を露呈しているような笑顔で踊っていた。
 ホロが。
 霊のように誰にも気付かれない存在だったホロだが、過去のトラウマを乗り越え、再び凡才組に戻って来れたため、元の性格に戻ったのだろう。
 キャッツは関わりを持たぬよう、見て見ぬフリをした。
 そんなこんなで両学区の進級式は何事もなく終了した。
 この後の日程は新担任との顔合わせとホームルームだけだ。
 ぞろぞろと校舎に足を運ぶ生徒達。

「――“合唱魔法“?」

 大河と関西姉妹は足を進めながら、話をしていた。
 神戸は得意気に話す。脇から虎鉄が顔を覗かせている。

「そう。二つの魔法を合わせて、一つの魔法として登録できるんだよ。凡才組は」

 大河は疑り深い目をしながら、口にした。

「えー何かインチキ臭いなあ。どうせあれだろ。消費する魔力は二つ使った時と同じってオチだろ?」

「ちゃうちゃう。少しお徳になるんや!」

 虎鉄は目を輝かせながら口にした。お徳という言葉に釣られた可能性が高い。

「単品で買うより、まとめ買いした方が安くなるみたいなのがあるだろ。あれと同じだよ」

「ふーん……まっ、俺には関係ないか。――で、もう何か合わせたの?」

 ああ、神戸は鋭い眼差しを大河に向けた。獣が獲物を捉えた時に見せるそれと似ている。

「“絶対領域(パーフェクトテリトリー)“――体育祭の時にでも見せてやるさ」

 三人は凡才組へと進級した。
 上位の生徒達と相合える時もいずれ訪れることだろう。
 それに対抗するためには、相応の技能を身に付けることが要求されてくるのだ。
 新たな舞台(ステージ)が始まった。












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