ぱにっく87!合唱魔法!絶対領域・パーフェクトテリトリー!
午前九時から十一時までの二時間。進級式が行われた。
場所は校舎前通り。炎天下に晒されて式を行う。
組ごとに列になって並ぶ。全ての組が集まるとなると、かなりの人数になる。
一人一人が前に呼び出され、生徒手帳に判を押される。
軽く指で触れるだけなのだが、それだけで進級した証になるのだ。
むろん、一人の教員で全員を担当するのではなく、何人にも分けて対応するのだ。
大河は人混みの中で人一倍はしゃいでいる。これ見ろとばかりに生徒手帳を天に掲げながら。
「やったー! 遂にバカから脱出だ!」
神戸は大河の口を手で塞いだ。ふごふごと悶える大河。強引に手を離す。
「何するんだよ! いきなり!」
神戸は頭で周囲を見るよう合図した。
大河は周囲を見た。違った。
明らかに自分とは違う表情の生徒達が多数いた。
「何だろう? 嬉しくないのかな?」
「ここにいる全員が受かったとでも思ってるのか」
「あっ……」
そう、進級式は合否関係なく参加が義務付けられているのだ。
不合格者の場合、合格者の晴々しい姿を見なければならないので辛いのだ。
辛いとは言え、それを理由に参加拒否はできない。
その目で焼き付け、心に刻み、次への励みにするのだ。
大河は場の空気を察してか、生徒手帳をソッと後ろポケットに蔵った。
感情の縮図とでも言うべきか。進級式には様々な感情が集まる場でもあるのだ。
それを押し殺すことも大切なのだ。
一方、西洋学区でも進級式は行われていた。
人混みを掻き分け、キャッツは誰かを探していた。親友のブルーだろう。
そんな最中の出来事だ。
キャッツは驚愕した。
思わず、探す足を止めてしまった。
人混みの中で一際目立つ人物が居たのだ。
先程の大河のように、大衆に見せつけるように生徒手帳を掲げながら、清々しいくらいに無知を露呈しているような笑顔で踊っていた。
ホロが。
霊のように誰にも気付かれない存在だったホロだが、過去のトラウマを乗り越え、再び凡才組に戻って来れたため、元の性格に戻ったのだろう。
キャッツは関わりを持たぬよう、見て見ぬフリをした。
そんなこんなで両学区の進級式は何事もなく終了した。
この後の日程は新担任との顔合わせとホームルームだけだ。
ぞろぞろと校舎に足を運ぶ生徒達。
「――“合唱魔法“?」
大河と関西姉妹は足を進めながら、話をしていた。
神戸は得意気に話す。脇から虎鉄が顔を覗かせている。
「そう。二つの魔法を合わせて、一つの魔法として登録できるんだよ。凡才組は」
大河は疑り深い目をしながら、口にした。
「えー何かインチキ臭いなあ。どうせあれだろ。消費する魔力は二つ使った時と同じってオチだろ?」
「ちゃうちゃう。少しお徳になるんや!」
虎鉄は目を輝かせながら口にした。お徳という言葉に釣られた可能性が高い。
「単品で買うより、まとめ買いした方が安くなるみたいなのがあるだろ。あれと同じだよ」
「ふーん……まっ、俺には関係ないか。――で、もう何か合わせたの?」
ああ、神戸は鋭い眼差しを大河に向けた。獣が獲物を捉えた時に見せるそれと似ている。
「“絶対領域“――体育祭の時にでも見せてやるさ」
三人は凡才組へと進級した。
上位の生徒達と相合える時もいずれ訪れることだろう。
それに対抗するためには、相応の技能を身に付けることが要求されてくるのだ。
新たな舞台が始まった。
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