ぱにっく76!台風が過ぎた翌日に台風が直撃!?
身体中のあちこちに光の粒子が触れる。
一瞬にして光は消え、残滓一つ残さずに姿を消す。
巨人は掻き消された。が、大河は目前に残っていると思っているのか、キャッツを背で隠しながら守りに徹していた。
胴と手足が震えている。力一杯に目を瞑っている。
その間にも穴が戻っていく。残り二メートルくらいだ。人が上れる高さではある。
しかし、大河は居るはずもない架空の巨人の幻に脅かされ、それに気付いていなかった。
やがて、穴は完全に無くなり、大河とキャッツの二人とシュプリンガーが地上にいた。
黄金色に輝く砂浜と赤黒い油の様なものに澱んだ海が見える。
今さっきまでの出来事が嘘のような静けさだ。全て波が流してくれたようにさえ思える。
数名が擦り傷程度の軽傷を負ったようだが、ほとんど生徒達は無事に入れたようだ。
「大河……!」
関西姉妹の二人が声を合わせ、大河の元に駆け寄って来た。
砂浜に安定感を弄ばれながらも、大河の元に駆け寄る。
それより先に、大河は砂浜に倒れた。
目前で倒れた大河を見た瞬間、関西姉妹の目が大きく開いた。
「大河……!!」
倒れた大河の横に関西姉妹が立ち、その場で膝を着きながら座る。
神戸はキャッツを、虎鉄は大河の心音を手で確認した。
心音は正常に鳴っている。
二人は安堵の息を漏らす。
どうやら過労で倒れてしまっただけのようだ。
いずれにせよ。キャッツは危険な状態である。
大河はただの過労だが、キャッツはそれに加えて魔力も尽きている。
神戸はキャッツの生徒手帳を取り、時間を確認した。
11時25分。
下唇を噛み締める。辛辣な表情をしながら再び時間を確認する。
何度見ても変わらない。
天才二人組が来るのは、まだ三十分以上もある。
最後の頼りでもあるシュプリンガーも気絶したままだ。
現状。魔法を使える者は一人もいない。
誰一人としてだ。
「どうしよう……」
突如、晴天が曇天に変わった。灰色に染め上げた空が唸りを上げる。
雷を予兆させるような怪しい唸りが鳴り続ける。
関西姉妹は空を仰いだ。
まるで自分達の心情を写し取ったかのような空を仰ぐ。
「雨か……?」
「魔法で作られたんやから降らないやろ〜?」
空の中心。腸のような形をした不気味な雲が捌けていった。
やがて、空には巨大な空洞が空いた。
薄暗い雲の断層は上に行くにつれて色濃くなっている。
天辺は真っ暗で何も見えない。
だが、そこに小さな光が確認された。
白い光が。
「皆さんの墓碑を作るよ。“エクスカリバー“」
瞬間、硝子が割れたような音が貫高く響き渡った。
音と共に現れたのは、巨大な魔法陣だった。
半径二十メートル程の魔法陣だ。妖艶な紫を発光しており、複雑怪奇な文字が並べられている。
その中心を突き刺すように、天空より白い光が降り立つ。
空に、巨大な十字架が浮かび上がった。
咄嵯の反応だった。
関西姉妹は大河とキャッツを壁側に運んでいった。
途中まで過ぎた時だ。
後方にそれが突き刺さった。
強大な風圧が背中を押す。砂の礫が体を打つ。
虎鉄はその場で倒れてしまった。少し前を走っていた神戸が後方を振り向く。
「虎て…………」
神戸は見てしまった。
虎鉄よりも先に見てしまった。目に入ってしまった。
目に入れるなと言うのが無理な話だ。
何故なら、砂浜に倒れる虎鉄の後方には、
「いてて……笑いの神がうちに悪戯したんかな〜? まあええや」
先ほどの巨人の倍はある、超巨大の剣が突き刺さっていたのだ。
白い光に包まれたその剣の頂点には、女性が一人いた。
紫色のコートを羽尾ったその女性。背丈は百四十センチくらいと小柄な体格をしている。
口元を覆うように白いマフラーを巻いている。
何故か、うつ向き加減な目をしていた。
砂浜に突き刺ささる十字架に似た白い発光の剣。
まるで巨大な墓碑のようだ。
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