ぱにっく7!ダウンロード試験について!
――三日後。
「ということで、ローション相撲ではなく、ローションバレーになりました」
憎めない満面の笑みでそう告げたのは、バカ組担任の久能亜理子だ。
意見が完全に真っ二つとなり、教室内がどよめく。
そんな中、大河だけは人一倍喜んでいた。
「やったー!」
隣の神戸は放心状態となり固まっていた。が、妹の虎鉄は目を輝かせている。非常に興味のある感じだ。
どよめく室内に戸惑いながらも亜理子は話を続けた。
「ですが、ただのバレーではありません。通常のバレーは個別の種目としてあるため、ビーチバレーということになります」
虎鉄は挙手しながら立ち上がり、
「せんせー、うちの学園にはビーチなんてあらへんよー」
と、訊いた。
広大な敷地を有する私立月陽学園都市でも、さすがに砂浜はない。
ビーチバレーの醍醐味は炎天下の砂浜で楽しむことだろう。でなければ、ただのバレーと大して変わらない。
「大丈夫です。学園長が特別に敷地を作ってくれるようです」
敷地を作る。その意味を理解したのは、ほぼ全員と言っても過言ではないだろう。
そう、魔法だ。
大抵の生徒は関西姉妹と同じで『魔女になるため』ことを志望理由としている。
それを噛み砕けば、既に魔法の存在を知っているとも取れる。
「既にご存知の人がほとんどだと思いますが、月陽学園には“魔法“と言うものが存在します」
知ってる知ってる。大河は数十分前に得た知識をさも昔から知ってたかのように呟いていた。
神戸は呆れた目線を送っている。
「本格的に授業に取り組まれるのは六月中旬辺りからなのですが、今回に限り、特別に魔法の使用を許可します」
一斉に黄色い声が轟く。
静かに静かに。亜理子はそう呟く。もちろん誰にも聞こえてはいない。
魔法は彼女達にとっては、ある意味、アイドルのようなもの。
手の届かないものが手に届きそうな時、それはそれは歓喜に湧くことだろう。
なので、当然の反応と言える。
だが、それに付き合っていたら話が進まない。
亜理子は一枚のカードを取り出した。半透明のカードで中心に砂時計が書かれている。
「スリープシープ」
亜理子がそう呟くと、カードの上辺に筆記体でスリープシープという文字が浮き出た。
それが浮き出た直後、中心にある砂時計が百八十度回転した。
『now loading……』と浮き出る。
砂時計の砂が下に滑り落ちていき、やがて、上にあった全ての砂が下に溜った。
『orrdr select』と浮き出る。
亜理子は魔法名を告げる。
「スリープシープ」
カードから、雲のような質感をした白煙が放物線を描きながら打ち上げられた。
ちょうど真ん中ら辺に到達した時、白煙は生徒全員に降りかかるように分散した。
その軌道の間、白煙は徐々にある形へと変わっていった。
羊だ。しかし、通常の大きさと比べるとかなり極小化されている。
どうやら睡眠中のようで起きる気配は見当たらない。
野球ボールくらいの大きさのそれが生徒全員の頭上に行き渡った直後、羊が天使の輪を描くように回り始めた。
すると、先ほどまで歓喜に湧いていた生徒全員が深い眠りについてしまった。
室内が一気に物静かな空気に変わる。
亜理子は全員が寝たのを確認したところで両手を合わせて――
パンッ!
と、合図を鳴らした。
途端、頭上を回っていた羊達がシャボン玉が割れたように消え、それと同時に生徒達が長い眠りから覚めたように起きた。
隣の者の顔を見合いながら首を傾げている。
「今、一時的に催眠状態になりましたよね。これが魔法です」
亜理子の手に持っていたカードが初期状態に戻る。
「今日から本番当日までの間、自分の生徒手帳に魔法をダウンロードしてもらいます」
ダウンロードはどうやってするんですか? 一人の生徒が訊いた。
「西洋学区の新入生と模擬試験を行い、その試験に合格すれば、魔法管理委員会の人にダウンロードさせてもらえます」
ダウンロードした魔法は期間中にしか使えませんが、参加希望の方は先生に言いにきてくださいね。そう後付けしたところで、本日の朝礼は終わった。
西洋学区の生徒にそれが告げられたのは、夜九時を回った頃だった。
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