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ぱにっく69!囚われのお姫様と六つ目の巨人!
 潮風が海の香りを運び、鼻の中を透き通る。
 目前には遥か遠くまで広がった海がある。
 燦然と輝く陽射しが海面に無数の宝石を生んでいた。
 優雅に空を舞う鴎の鳴き声。
 海面を弾く水飛沫の音。
 女性達の(はしゃ)ぎ声。
 それらが一遍に入ってくる。

「くだらない理由で女にされたんだよねー……」

 大河が退屈そうな表情をしながら、面倒くさそうに話した。
 キャッツは退屈な表情を一変し、目を大きく開いた。

「されたって……、あなた。元から男の子だったのですか!?」

「あれ? 前に言わなかったっけ?」

 キャッツは半身起き上がらせ、下方に顔を向けた。
 大河は暑苦しそうに目を瞑っている。

「聞いてませんわよ! じゃあ、なんで女の子にされたのですか?」

「パパがね『女の子が産まれなかった』って理由で離婚しそうなったんだって。結局、俺が女の子にされたから離婚しないで済んだわけだけど」

「そうじゃなくて! 人の性別をすぐに変えれるわけないじゃないでしょ!? どうやって変えたの?」

「魔法」

 大河は淡白な口調で言った。まるでそれが当たり前であるかのように。

「俺が産まれて直ぐにママがシュプリンガーと出会って、その時に魔法で女にされた――って、ママは言ってた」

 キャッツは絶句し、目を泳がせていた。
 様々な疑問が頭の中を駆け回り、キャッツを混乱させているのだろう。

「……大河。あなた、今、何歳?」

「今? 十六歳だけどそれがどうかしたの?」

 キャッツは生唾を飲んだ。
 大河の言った事が仮に事実であるならば、それは一つの疑問に繋がるのだ。
 その疑問は別の疑問の答えである。
 だが、事実ならば答えは再び疑問に戻ることになる。
 それは、この学園の創立された年に関係するものだ。

「お姉様から聞いた話なんですけど、この学園が創立して今年で十年目になるらしいのよ」

「ふーん、それがどうかしたの?」

 キャッツは声を荒上げた。

「分からないのですか!? 大河が年齢が十六歳に対し、この学園の創立が十年ということは、その間に空いた六年間に学園長様は日本で何かをしていた――いえ、日本でしなければならないことがあったってことよ!」

 大河はあまり興味がないのか、ふーん、としか言わなかった。
 キャッツは調子を狂わされ、ガクッ、と肩を落とす。

「っ――、まあいいですわ。とにかくあなたの理由が聞けてよかったですわ」

 キャッツは大河から少し距離を置いた。急に男に見えたのだろう。

「……どうやら、学園長様も無駄に魔法を教えにきたわけではなさそうですね」

「――キャアアアアア」

 刹那、前方から大勢の女性達の悲鳴が聞こえた。
 水を弾いて走ってくる、生徒達の群。
 その背後に立つ、巨大な人影が一つ。
 全長五十メートルくらいの、人間を何倍にも巨大化させたような、溶岩のように赤黒い肌の色をした、六つ目の巨人がいた。
 その頭部。黒いドレスの下に黒のブーツを穿いた、一人の女性がいた。
 生気が全く感じられない、人形のように無機質な目をした女性。

「あの上に乗ってるのって……」

 思わず、大河は起き上がった。
 そして、それを見た。

「信じ難いことですが……、学園長様ですわね……」

 囚われのお姫様(シュプリンガー)を見た。


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