ぱにっく66!スコティッシュフォールドは郡を抜いて可愛い!
何事もなく進む、日常。
誰も何も疑うことなく、食堂へと足を進めていた。
大河と恥夜は、唖然としながら棒立ちになっていた。
まるで隔離された空間に立たされているような、そんな心境に置かれている。
他愛もない話に花を咲かせていた。当然だ。大河と恥夜の二人以外は異端者の存在を知らない。
学園長の存在すらも。
大河は恥夜の元に駆け寄った。
「神乳……!」
恥夜は風穴の空いていた個所に目を落とし、奥歯で悔しさを強く噛み締めていた。
大河は近寄り難い威圧感を感じたのか、数歩手前で立ち止まった。
「神知……?」
顔を下に向けたまま、
「私は、弱い……!」
恥夜は力強くそう叫んだ。
大河の瞼が重く乗っかる。
叫び声に反応し、校舎前通りを歩いていた生徒全員が後方を振り向いた。
隣同士で首を傾げている。
頑に縛られていた涙腺がほどけた。恥夜は鳴咽していた。
「弱くない人間なんていないよ」
伏せていた顔を上げる。
頂点に立つということは、並大抵のことではない。
周囲の期待や印象を崩すような真似はできない。いや、鈍感な人間ならそんなのは気にすることでもないのだろう。
しかし、恥夜は違う。
確かに恥夜は天才だ。だが、天才である以前に一人の女性なのだ。
弱音を吐きたい時もある。
今、彼女の頬に流れるそれは、神知恥夜という一人の女性が見せた、弱い部分だ。
「皆、弱い部分をぶら下げてるんだ」
大河もそうだ。
大河も弱い部分をぶら下げている。
ただ、それを出さないだけ。
それを知っているから、笑う。笑えるのだ。
「思いっきり泣いたほうが気が楽になるよ。きっと」
恥夜は大河を一目見て、涙を拭った。
「……ふふ、貴方に慰められるなんて、――――そうですね、ありがとうございます」
恥夜は空を仰ぐ。
その表情に迷いは見られない。
「皆さん、聞いてください」
校舎前通りがざわめく。
「現在、ある事情により、学園長殿はいません」
ざわめきが一層増す中、大河は恥夜に耳打ちする。
「何で事情を話さないんだ? 言ったほうがいいよ」
「学園長殿の考えを察するなら、極力、私達に事情を知られたくないはずです。
知れば、自分の犯した過ちが火の粉となって振りかかりますから」
そっか……、と大河は独り納得した。
「事情は話せないのですが、とにかく学園長殿がいない今、我が学園には学園長代理が必要とされます」
恥夜は前進する。
生徒達の視線の横を毅然とした態度で歩く。
まさにそれは、頂点の名にふさわしい態度と言えよう。
「本来なら別の先生方に一任すべきではあるのですが――」
バッ、と勢いよく後ろを振り向く。
東洋学区に属する生徒全てを壮観する。
「私に任してはもらえないでしょうか」
賛否両論の意見が生徒達の中で飛び交う。
さすがに生徒兼学園長代理というのは受け入れ難いのだろう。
「――先生は適任だと思いますよ」
恥夜は後ろを振り向いた。
「亜理子先生……!」
そこには、バカ組の担任である、久能亜理子がいた。
「我が学園の長に求められるのはただ一つ。魔力です」
亜理子は清楚な微笑みを浮かべながら、こう言った。
「正直な話、教師の魔力より、生徒さんの魔力の方が格段に上回っています」
先生は嘘を吐きません。恥夜の疑いの目を振り払うように、亜理子は力強く口にした。
「事情は後で聞かせてもらいます。それでもいいと言うなら、前向きに検討させていただきます」
亜理子は恥夜の不安を掻き消すように笑った。
「ありがとうございます」
恥夜を深くお辞儀をした。
その誠意ある姿を見て、亜理子はホッと笑みを浮かべた。
話し合いの結果、負担を半分にすることで合意された。
西洋学区の学園長代理にスコティッシュ・アイ(キャッツの姉)を任命し、
東洋学区の学園長代理に恥夜が任命された。
そして、一学期最後の月となる、八月を迎えるのであった。
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