桃缶ぱにっく!ブレイク・オブ・クロニクル!(65/160)PDFで表示縦書き表示RDF


桃缶ぱにっく!ブレイク・オブ・クロニクル!
作:俺とキルマシーン



ぱにっく65!そして、太陽が月に変わったのだった。


 シェリルの人差し指。その指先に光の粒子が集束していく。
 大気を飲み込むような騒騒しい吸引音が轟く。
 やがて光の粒子は一つの稲妻と化し、指先で暴れ捲る。
 鉄を熱で溶かした時のような、焦臭い硝煙の臭いが鼻につく。
 大河はその形成までの流れを、片時も離すことなく目に焼き付けていた。

「撃つ気か? そんなもん俺の魔法で防いでやる!」

 力強い眼差しでシェリルを睨む。――が、その時だ。
 大河を包み込んでいた桃色の球体が消えた。シャボン玉が割れたように、ほんの一瞬で。
 シェリルの指先にはまだ魔法がある。大河はポケットから生徒手帳を取り出し、魔法の残量を確認した。

 『0』

 希望を打ち砕く、数字。
 絶望が大河を襲う。
 我を疑うように弱々しい声で呟く。

「そんな……だって百回近く回数はあったはずなのに」

 0。何度確認しようが0だ。
 先程の巨人の拳を防いだ時。その時に残っていた回数全てを使い切ってしまったのだ。
 早い話は、ブランド品と同じだ。
 大河の魔法はあくまで偽物(コピー)であり、本物ではない。
 本物より質の落ちた物。それが偽物だ。
 本物ならあの程度の拳を難無く防げただろう。しかし、偽物は何十枚も重ねて、ようやく本物と同等の効力を発揮できるのだ。
 発揮してしまった今、大河は無防備だ。

「魔法を弄んだ罪は主の命より重い」

 人差し指が大河の方に向けられた。指先でほとばしる稲妻。

「――冥に滅されよ。現世の(むすめ)よ」

 大河は力強く目を瞑った。
 無駄だと分からずに、両腕で壁を作っている。
 シェリルの指先から稲妻が放出された。

「リミッターリミテッド!」

 直前、大河でもシェリルでもない女性の声が響いた。
 校門前で息を切らしている、シュプリンガーがいた。
 シュプリンガーが叫んだそれは、時間を止める魔法名だった。
 リミテッドと付くからには、止められる時間も限定されているのだろう。
 しかし、その時間内なら時間を止めることが可能だ。
 毅然とした態度でシュプリンガーは前進する。
 何も言わずに、ただ前進していく。
 シェリルの横を通り過ぎ、大河の元に近寄る。
 大河が持っていた生徒手帳を軽く指先で叩く。魔法の回数表示が消えた。
 シュプリンガーはその足で恥夜の元に近寄る。風穴の空いた脇腹に温かい光を当てた。
 傷口が、みるみる内に塞がれていく。
 シュプリンガーはその温かい光を周囲にも撒き散らした。
 軋んだ衝撃により作られた建物の傷に、光のベールが優しく包み被さる。
 傷を負った全てが修復されていく様を見て、シュプリンガーは安堵の笑みを浮かべた。
 しかし、それはほんの一瞬の笑みだった。
 シュプリンガーはシェリルに歩み寄る。
 小声で呪文のような何かを呟く。すると、空間に亀裂が入り、シェリルが訪れた時と同じ、深い闇の空間が現れた。
 シュプリンガーはシェリルを脇に抱え、生徒達に目を向けることなく、その深い闇の中に足を踏み入れた。
 ゆっくりと亀裂が元に戻ろうとしていく。
 ゆっくりと、ゆっくりと。

「楽しかった。ありがとう」

 亀裂が元に戻った。
 魔法が切れ、時間が動き出す。
 そこに、シェリルはいなかった。


 レベルアップ試験編はこれにて終了です。
 少し後味の悪い終わり方だったのですが、今回は事が事だけに、いつものように残ることができないので、そこを察してもらえるとありがたいです。
 で、次はお約束の海!……なんですが、その前に短編を書きます。
 『桃ぱに!の同人誌!』というやつ。
 最近ずっとエロが書けなかったので、これで限界突破します(笑)
 ちなみに桃ぱに!の同人誌はノクターンで掲載します!
 本家で書ける内容じゃないので(爆)
 というわけで、しばらくコメディモードになります。
 さて、唯一の魔法すら無くなった大河はどうなるのか?











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