ぱにっく59!その取引には乗らない。
「取引?」
神戸は疑念が入り混じった声でそう訊いた。ああ、と、大河は頷く。
自信満々のその表情。大河の中で確かなものがあるのだろう。
「交互に攻撃するんだ」
「……それで?」
「だから、交互に攻撃して、わざと当たらないようにして、ただひたすらに点数を稼ぐことに集中するってこと」
「……“ぐる“を組もうと?」
「まあ、そういうこと。名案だろう!?」
大河はもう既に取引を成功したかのような、生き生きとした表情をしていた。
だが対照的に、神戸は失念を露にするように、面を下に向けている。
返答は、ない。
無の間が淡々と流れていく中、それを遮るアナウンスが入った。
「試験者ナンバー11、23。不正行為発覚のため失格となりました」
大河は天井のあちこちを見渡す。
「試験者ナンバー、13、18。不正行為発覚のため失格となりました」
相次ぐ不正行為による失格。
神戸が静かに口を開く。
「――大河、お前が提案した取引の内容は、不正行為に当たる」
えっ、と大河は間抜けな声を漏らす。
そう、大河と同じ考えを持つ者が中にはいるのだ。
「もっとも、そうじゃなくても話には乗らなかったけどね」
ケケケ、と不気味で下品な笑い声が空間内に貫高く響き渡る。
鈍重な雰囲気のある風が緩やかに流れ、目をシャッフルする。
「ダイスロール」
神戸の生徒手帳が白い発光を放つ。静止していた面が目と共に揺れ動かされた。
不意の一撃に大河は地に手を着ける。
神戸は“氷“の中にいた。
シャッフルされる面。それに付着していた、複合魔法バブルリングの残片――水滴。
地に振り回された水滴が引き剥がされ、空中に舞う。
舞った水滴の一つをタイプライターで氷に変化させる。
神戸は、その氷の中にいるのだ。頑丈に固定された氷に揺れは通用しない。
対照的に大河は何も出来ずに地面を転がり回っている。
「ひいい〜目が回る〜」
大河が壁にぶつかる直前で、神戸はダイスロールを止めた。
神戸も氷の中にいるため、そう長くは持たない。
点数としては低いと言えよう。しかし、確実に点数が入っているのは事実だ。
神戸がタイプライターで氷をゼリーに変え、中から割って出てきた。
「うぇ〜……気持ち悪……」
そんなことを言いながら、大河は起き上がった。
斜線上に並ぶ、二人。
ダイスロールにより斜面に変わっていた。足場が不安定である。
「くそう……このままじゃ点数がもらえないぞ」
大河からすれば、なるべく早く魔女になって、女になる、という願いを叶えたいのだろう。
しかし、叶えようにも、まずはここで点数を稼がなければならない。
点数を稼ぐには、魔法を必要とする。
大河は無い知恵を搾り出す。
「……、っと」
足場が不安定だ。
確りとした足場が必要だ。
「……お、意外とイケるかもしれん」
大河は、生徒手帳を取り出した。
神戸は、それに気づく。
「たった一つしか魔法がないのに、どうやって複合するつもりだ?」
べー! 大河は舌を出して挑発する。
「誰が教えるか! 無い乳女!
――まっ、単発でも点数が稼げるってところを見せてやるよ」
生徒手帳が桃色に光輝く。
その名を、その魔法を口にする。
「マジックアンプリファイアー」
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