桃缶ぱにっく!ブレイク・オブ・クロニクル!(59/167)PDFで表示縦書き表示RDF


桃缶ぱにっく!ブレイク・オブ・クロニクル!
作:俺とキルマシーン



ぱにっく59!その取引には乗らない。


「取引?」

 神戸は疑念が入り混じった声でそう訊いた。ああ、と、大河は頷く。
 自信満々のその表情。大河の中で確かなものがあるのだろう。

「交互に攻撃するんだ」

「……それで?」

「だから、交互に攻撃して、わざと当たらないようにして、ただひたすらに点数を稼ぐことに集中するってこと」

「……“ぐる“を組もうと?」

「まあ、そういうこと。名案だろう!?」

 大河はもう既に取引を成功したかのような、生き生きとした表情をしていた。
 だが対照的に、神戸は失念を露にするように、面を下に向けている。
 返答は、ない。
 無の間が淡々と流れていく中、それを遮るアナウンスが入った。

「試験者ナンバー11、23。不正行為発覚のため失格となりました」

 大河は天井のあちこちを見渡す。

「試験者ナンバー、13、18。不正行為発覚のため失格となりました」

 相次ぐ不正行為による失格。
 神戸が静かに口を開く。

「――大河、お前が提案した取引の内容は、不正行為に当たる」

 えっ、と大河は間抜けな声を漏らす。
 そう、大河と同じ考えを持つ者が中にはいるのだ。

「もっとも、そうじゃなくても話には乗らなかったけどね」

 ケケケ、と不気味で下品な笑い声が空間内に貫高く響き渡る。
 鈍重な雰囲気のある風が緩やかに流れ、目をシャッフルする。

「ダイスロール」

 神戸の生徒手帳が白い発光を放つ。静止していた面が目と共に揺れ動かされた。
 不意の一撃に大河は地に手を着ける。
 神戸は“氷“の中にいた。
 シャッフルされる面。それに付着していた、複合魔法バブルリングの残片――水滴。
 地に振り回された水滴が引き剥がされ、空中に舞う。
 舞った水滴の一つをタイプライターで氷に変化させる。
 神戸は、その氷の中にいるのだ。頑丈に固定された氷に揺れは通用しない。
 対照的に大河は何も出来ずに地面を転がり回っている。

「ひいい〜目が回る〜」

 大河が壁にぶつかる直前で、神戸はダイスロールを止めた。
 神戸も氷の中にいるため、そう長くは持たない。
 点数としては低いと言えよう。しかし、確実に点数が入っているのは事実だ。
 神戸がタイプライターで氷をゼリーに変え、中から割って出てきた。

「うぇ〜……気持ち悪……」

 そんなことを言いながら、大河は起き上がった。
 斜線上に並ぶ、二人。
 ダイスロールにより斜面に変わっていた。足場が不安定である。

「くそう……このままじゃ点数がもらえないぞ」

 大河からすれば、なるべく早く魔女になって、女になる、という願いを叶えたいのだろう。
 しかし、叶えようにも、まずはここで点数を稼がなければならない。
 点数を稼ぐには、魔法を必要とする。
 大河は無い知恵を搾り出す。

「……、っと」

 足場が不安定だ。
 確りとした足場が必要だ。

「……お、意外とイケるかもしれん」

 大河は、生徒手帳を取り出した。
 神戸は、それに気づく。

「たった一つしか魔法がないのに、どうやって複合するつもりだ?」

 べー! 大河は舌を出して挑発する。

「誰が教えるか! 無い乳女!
 ――まっ、単発でも点数が稼げるってところを見せてやるよ」

 生徒手帳が桃色に光輝く。
 その名を、その魔法を口にする。

「マジックアンプリファイアー」












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