ぱにっく58!とらとらとーら(?)
空間内にある全ての泡が破裂していく。空砲に似た音が連続して鳴り響く。
大河は目を閉じ、手で耳を塞いだ状態で、暗黙の中に独り閉じ籠る。
空間の現状も掴めない。神戸がどこに立っているのかさえも。
しばらくして、空間内にある泡は、一つを残して消えていた。
己に触れる破裂の感覚が消えたのを感知してか、大河はゆっくりと瞼を開いた。
瞳に白の明色が差し込む。一瞬、瞼が半開きになる。
空間には、一つだけ泡が残っていた。
人を軽く包み込む程の、巨大な泡。
半透明で、素材はゴム性のようだ。
巨大な泡の中には、神戸がいた。
「新しい魔法か?」
大河の問いに対し、神戸は首を横に振った。
タイプライターを見せつけながら、
「これを使ったんだよ」
と、得意気な口調でそう言ってきた。
別室で監視していたメイドも驚いているご様子だ。
薄暗い機械だらけ部屋の中央にでっかく構えられたモニター。角度別に分けられて映される、八分割の映像。
なるほど……、無機質な声でメイドは独り納得する。
「タイプライターで泡を風船に変え、それを膨らませて、隔離空間を作ったのですね」
「――タイプライターを?」
一方、大河は仕組みが理解できていないご様子だ。
凡才組の生徒なら理解できただろう。が、大河はバカ組の生徒だ。
神戸も徹夜で策を練って、ようやく凡才組の背中が見えたくらいなのだ。
根拠のない自信を抱えてぐっすりと鼾を掻いて寝ていた、大河とは根本的に話が違ってくる。
神戸は皮肉な笑みを交え、
「まっ、教えられるのはそこまでだ。わざわざ相手に策をバラすほどバカじゃないんでね」
風船を割った。
地面は水浸しだ。洗剤のような成分が含まれていなかったのが幸いと言ったところか。
大河は悔しそうに歯を噛み締めていた。
「それより、お前も早く魔法を使わないと合格点に足らなくなるぞ」
相手を気遣う余裕すらある神戸。どちらが優位に立っているかは明確だ。
「よ、余計なお世話だよ!」
大河は魔法を使えない。いや、厳密に言えば、使える。
だが、それは“切札“だ。
切札が活きるのは、それまでに何枚もの捨て札が投じられているからだ。
大河には、その捨て札がない。
「私には、まだ六個の魔法がある。対して、お前には一個しか魔法がない。――この差を埋めるのは至難の技だ」
大河は反論しない。できないのだろう。
少し間が空いた後、大河は固くなに閉ざしていた、その口を開けた。
「……、取引をしないか?」
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