ぱにっく52!そうであってそうでないそれ。
インテグラは深い眠りに落ちた。その身を支えるものはなく、前に倒れていった。
恥夜はそれを片腕で背負い抱えた。態勢を立て直し、地面にゆっくりと膝を下ろす。
インテグラを地面に寝かせた。同時に召喚されていた植物達が、光が弾けたように姿を消していった。
薄暗い森に再び戻る。恥夜の木刀もだ。
木刀を脇に差し、生徒手帳を取り出した。
その生徒手帳に向けて、
「任務完了です。転送を願います」
と、冷静な口調で喋りかけた。一つ間を空けてからの返答。
「直接、学園室に送ります」
それは、シュプリンガーからの返答だった。
魔宵の森から、そこにいた全員の姿が消えた。
転送先である学園室に、三名の生徒と部外が一名いた。
大河とキャッツと恥夜、それとインテグラだ。
大河とキャッツの着衣していた体操着は完全に修復されており、新品同様の姿に変わっている。
シュプリンガーは偽りの姿ではなく、本当の姿で立っていた。
黒の三角帽子の下に黒のドレスとブーツを穿いた、細身の後ろ姿。
四角い枠の外を覗き、月明かりを顔に照らし当てていた。
インテグラは恥夜に抑え付けられていた。膝を立てた状態でいるインテグラの両手首を手錠で拘束していた。手錠は半透明な輪っかで形成されている。魔法の一種と見られる。
と、大河とキャッツが目を覚ました。周囲を見渡す。
ごつっ、と互いにぶつけ合った額から鈍い音が鳴る。
啀み合うより先に、前方に立つシュプリンガーの姿が目に入った。
「…………」
大河は呆然としていた。それもその筈だ。
シュプリンガーが手足を地に着けて、頭を下ろしていたのだ。
その心中を表すように、深く、頭を下げていたのだ。
それが学園長であると知っているのは、キャッツ以外の全員である。
キャッツはそのお辞儀の意味的なものがまるで解らなかった。
「申し訳ない」
一言、シュプリンガーの口からそう告げられた。
「どういうことですの? それに……あなたは一体?」
シュプリンガーが頭を上げることは無かった。
「私の名はシュプリンガー。私立月陽学園都市の学園長に当たる存在である」
キャッツの全身が震えた。あわあわ、と口をパクパク動かしている。
それが無礼とも知らず、いや、それに頭を回す余裕ないのか。キャッツはシュプリンガーに指を差しながら驚愕していた。
「あ、あなたが……がく、学園長……!?」
はっ! と指差していた手を引っ込めて口にする。
「学園長ともあろうお方にお辞儀をされるようなことをされた覚えはありません! とにかく顔を上げて」
ください。そう言い切る前に、シュプリンガーは『ならぬ』と一言、両断した。
「私は自分の犯した過失で、大事な生徒をあわや死に至らしめるところじゃったのだ」
「そんな別に……」
大河は下を向いていた。さっ、と、キャッツの顔の前に手を出す。
「自己満足に尽きると思われようとも構わぬ。じゃが、最低限の誠意の表明くらいは最後まで貫き通したいのじゃ」
大河は顔を上げた。
「――生きてるならそれでいいよ。それ以外は何もいらない」
照れ臭そうな笑みを浮かべ、腕を下ろした。
「まずはさ、顔を上げて話そうよ」
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