ぱにっく5!学園生活開始!
小鳥の言葉を胸に蔵い、ただただ呆れんばかりの怒りを押し殺し、大河は食堂に戻った。
疲労困憊な表情を重く引きずったまま、関西姉妹のいるテーブルに戻る。
関西姉妹は両者共に食事を終え、食器等の後片付けも済ましていたため、すぐにでも出れる状態だった。
今にも風に飛ばされそうな大河に虎鉄が声を掛けた。
「どないしたん? 大河?」
「腹でも下したか?」
続けて神戸が声を掛けたが、大河は無言のまま椅子に下ろし、空っぽになった机上に突っ伏した。
突っ伏した大河の横顔を虎鉄が同じ角度で覗き込む。
「おーい〜、大河〜」
そうこうしている内に他の生徒達が次々に食堂を後にしている。
そう、もうそろそろ朝礼の時間なのだ。
三人も直ぐにでも行かねばならないのだが、いかんせん、全くと言っていいほどに大河が動けそうにない。
「大河、調子悪いんか?」
「私達は先に行くけど……大河は寮で寝てたほうがいいな」
「……う」
と、大河がボソッと何かを呟いた。
突っ伏していた顔を面にし、無様なその泣き顔で訴えかける。
「魔法っでなにざー?」
涙が声質を狂わせ、おかしな発音になっていた。
厚化粧をした女性が泣いた時のように化物顔になっていた大河に対し、関西姉妹は異様な恐怖を感じていた。
「お、落ち着け、とりあえず顔洗ってきなさい」
そんなこんなで数分後、朝礼も間近に迫っているため、とりあえず食堂を出て校舎に向かいながら話を聞くことにした。
「大河、お前ここに魔法目当てで入ったんじゃないのか?」
神戸は前傾姿勢でうつ向いた大河の背中を擦りながら言った。
虎鉄は落ち着きがなく、二人より少し先を歩いている。
校門前、白と黒を基調としたメイド服を着た人型ロボットがいた。手に持つ竹菷で地面を掃除していた。
虎鉄はそのメイドと戯れている。
「学費は不要って書いてあったから」
後設備もいいし食事も美味しそうだし……。大河は数々の欲を口にしていた。
呆れた視線を向ける神戸。気を取り直して話を続ける。
「ま、まぁ……志望理由も人それぞれだからな。私達は魔女になるために入ったんだ」
「魔女?」
そっ、校門付近で虎鉄と再び合流し、三人は無事に校門を抜けた。
円状の噴水が中心に位置する庭園。彩り豊かな花が昇降口へ向けて道を導いている。そこだけで巨大な迷路のようだ。
「月陽は季節の変わり目、早い話は夏休みとか冬休みとかの前に“レベルアップ試験“ってのがあってそれにクリアして、一定の経験値に達すると魔女になる権利が与えられるんだ」
「魔女になるとなー、一つだけ願いを叶えられるんや」
一つだけ願いを叶えられる。大河はその言葉を聞き逃さなかった。
「レベルアップ試験の他にも、球技大会とか体育祭とか学祭とか、色んなイベントで経験値を稼げるよ」
大河が興奮し震える頭を上げた。
昇降口前、決意を掲げるように腕を上げる。
「なるぞー!! 魔女なってやるー!!」
魔女になって完全に女性になる。大河は心中でそう叫ぶ。
神戸は大河を凝視しているが、虎鉄は大河の真似をし元気よく腕を上げていた。
二人のスカートの隙間からスパッツが顔を出す。
こうして大河は一つの目標を持つことになったのだった。
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