ぱにっく4!白衣一家の一人娘というか漢!
白を基調とした食堂の中は、典型的な社員食堂と造りは同じで、前方にカウンターと後方にテーブルが並べられている。
計五十個も並べられているのだが、その全席が人で埋めつくされていた。
こうも人が多いとカウンターが大変だと思うかもしれないが意外とそうでもないのだ。
カウンターには常に二十人以上の人がおり、注文を受けて数分足らずで渡せるのだ。
だが、厨房は都心のレストランと同じくらい多忙である。
大河と関西姉妹は入口に一番近い場所に座っていた。
既に食事を終えていた大河。関西姉妹はまだ食事中である。ちなみに食しているのはカルボナーラだ。
大河はお手洗いに向かった。
入口までの通路の途中にお手洗いはある。大河ほど早食いな者は少なくともこの学園にはいないようでお手洗いは誰も使用していなかった。
奥まで個室で縦列されたそこは桃のような匂いが漂っていた。
大河は適当に選んだ個室に入り鍵を閉める。
蓋がされた状態のまま、大河は便座に座った。
スカートのポケットからケータイを取り出し、電話帳からある人物を選ぶ。
白衣小鳥。
大河の母である。
呼び鈴が三回鳴った後、小鳥は電話に出た。
「ふぁーい、大河ちゃん〜、おはよ〜」
寝起きの小鳥が間抜けな声で電話に出てきた。普段から子供っぽいところがある小鳥だが、今日もそれは健在のようだ。
大河は調子を狂わらせながらも返事をする。
「あぁ、おはようおはよう」
「どうしたのん? 大河ちゃん」
大河は悩ましげに頭を抱えるも、それを振りきって何とか向き合っていた。
「いやさー……アレが生えたんだよね」
「アレって?」
大河の顔が赤くなる。
「その……アレだよアレ。男のアレ」
あ〜、小鳥は言葉の意味を理解したのか深々と頷いた。
「そういえば、そろそろ効果が無くなるころかしら」
大河は聞き逃さなかった。効果が無くなるという言葉を。
大河の眉根に皺が寄る。地団駄を踏みながら、冷静に話を続けた。
「効果って何かな? ママー?」
電話越しからでも小鳥の呑気な雰囲気が伝わってくる。
「実はねー、大河ちゃんは本当は“男“なの」
大河の額に血管が浮き出る。
「ふーん、それでそれで?」
「でねー、パパはどうしても女の子が欲しいって言ってて、女の子じゃなかったら死んでやるーって言われて、結果的に大河ちゃんが男として生まれたから――」
「ふむふむ」
「魔法を使って女の子に変えてもらったの」
大河の呆れた怒りは絶頂に達していた。奥底から込み上げてくるそれを堪えるので精一杯だったが、もう我慢する必要はない。
「アホかァァァー!!!!!」
通路を越えて食堂にまで行き届くほどの叫び声だった。
しかし、食堂の賑やかさには負ける。
「だって〜」
同情を訴えかけるような甘い声で小鳥がそう言うが、
「だってじゃなーい!」
当然のことながら大河には通用しない。
「パパもパパだがママもママだ! どこの世界に魔法で子の性別を……」
と、ふと自分の口にしている言葉の異変に気づく。
「魔法? 魔法ってあの魔法?」
「そうよ〜、トラクエとかでも出てるあの魔法よ。大河ちゃんのいる学園にも魔法があるはずよ?」
「えっ、マジ?」
大河の声は完全に裏返っていた。
バカ組一年生が魔法の存在を知るのは六月中旬であるため、大河は何も知らないのだ。
だが、大抵のバカ組一年生は魔法の存在を知っている。
学園案内書を見る際、MPを持つ者は存在を知ることができるのだ。
残念ながら大河にはMPがなく、学園案内書も普通にしか映らない。
「――うん。だって、大河ちゃんに魔法をかけたのは、私立月陽学園都市の“学園長“なんだから」
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