桃缶ぱにっく!(36/195)PDFで表示縦書き表示RDF


桃缶ぱにっく!
作:俺とキルマシーン



ぱにっく36!淫乱パーティー会場ですか?いいえ、ここはガッコーです。


 大河は、すぐさま病院に連行された。
 数多くの店舗が一直線に道を作る中、白い外装の病院が在った。
 コンビニより一回りほど小さいそこには三体のメイドがいる。
 診察をするメイド。診察を手伝うメイド。薬を渡すメイド。
 この三体だ。
 もちろん、中には手術を要する患者もいるので、その時は状況に合わせてメイドの数も増える。
 どうしても無理な時に限り、魔法が使われる。
 可能な限りは、魔法に頼らないようにしているようだ。
 そんなこんなで大河は今、病院内の診察室にいる。
 関西姉妹は同席を望んだのだが、授業が始まりますから、とメイドに無表情で対応され、あえなく断わられた。
 病院が開始するのは九時から、現刻は八時ちょっと過ぎくらいなので、まだ院内はがらんとしていた。
 アルファベットのJの形をした院内。曲がり角が受け付けで、そのまま真っ直ぐの所に薬の受け付けがあり、最後に診察室がある。
 診察室の前にはソファーが六台ある。一列三台ずつで二列になってだ。
 ソファーの周囲には雑誌や新聞などを置いたコーナーや自動販売機など、一般的な病院と何ら変わらないものが置かれている。
 その隙間をメイド達が掃除していた。ナースなのにメイド服を着ているというのが、斬新なコスプレにさえ思える。
 最近、数十体のメイド達が奇襲に遇い、データを初期化されてしまったのだ。
 データを初期化されると、最低でも復帰までに一日半はかかる。
 未だに復帰に時間を掛けている者もいるくらいだ。
 診察室の扉が開いた。
 ふらふらとした足取りで現れたのは、紛れもなく大河だ。
 そのまま連行されたせいか、寝間着が汗でびっしょりだ。
 大河は一番手前のソファーに座る。もうその動きは完全に最終ラウンドまで戦い抜いたボクサーみたいだった。
 はぁはぁ、と大河は生温かい息を吐いている。

「白衣大河様」

 感情のない声でメイドがそう呼ぶ。
 大河はその鈍重な体を持ち上げ、薬の受け付けに向かう。
 左右に体を揺らすその姿は、まるで極限まで減量したボクサーのようだ。
 大河は薬の受け付けに着く。
 メイドに白い紙袋――ではなく白い小瓶に入れられた薬を渡された。中身はピンク色だ。
 到底、風邪薬とは思えない。百歩譲っても幼児が飲むような風邪薬がいいところだ。
 白い小瓶に付いたラベルには『溺愛増幅液』と書かれていた。
 ……完全に風邪薬でないことは確かだ。
 大河は何の疑いを持たぬまま、いや、疑う余裕などないのか。
 その“風邪薬“をその場で開け、グビッと一気飲みした。少量なので一気飲みと言うほどのものでもないのだが。

「うぅ……ちょっと体が軽くなった気がするよ」

「それは良かったです。緊急時の為、今回はそれしか用意できませんでしたが、後ほど別のを持っていきます」

 大河は出入口に吸い込まれるように運ばれながら、

「うーん……ありがとうねぇ……」

 覇気のない声で礼を言った。
 悪夢は、この時既に始まっていた。
 相手が感情を持たない機械(メイド)だから効果が見られなかったが、大河が飲んだ薬。
 溺愛増幅液と称されたそれは、性別問わずに自分を性的対象として向ける効果を持つ。
 言うなれば、沢山の鯉がいる池に餌を投げ込むようなもの。
 たった一切れのパンの耳を賭けて、豪快に水飛沫を上げながら争奪戦を繰り広げる、あの鯉達だ。
 大河の長い一日は、ここから始まった。












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