ぱにっく36!淫乱パーティー会場ですか?いいえ、ここはガッコーです。
大河は、すぐさま病院に連行された。
数多くの店舗が一直線に道を作る中、白い外装の病院が在った。
コンビニより一回りほど小さいそこには三体のメイドがいる。
診察をするメイド。診察を手伝うメイド。薬を渡すメイド。
この三体だ。
もちろん、中には手術を要する患者もいるので、その時は状況に合わせてメイドの数も増える。
どうしても無理な時に限り、魔法が使われる。
可能な限りは、魔法に頼らないようにしているようだ。
そんなこんなで大河は今、病院内の診察室にいる。
関西姉妹は同席を望んだのだが、授業が始まりますから、とメイドに無表情で対応され、あえなく断わられた。
病院が開始するのは九時から、現刻は八時ちょっと過ぎくらいなので、まだ院内はがらんとしていた。
アルファベットのJの形をした院内。曲がり角が受け付けで、そのまま真っ直ぐの所に薬の受け付けがあり、最後に診察室がある。
診察室の前にはソファーが六台ある。一列三台ずつで二列になってだ。
ソファーの周囲には雑誌や新聞などを置いたコーナーや自動販売機など、一般的な病院と何ら変わらないものが置かれている。
その隙間をメイド達が掃除していた。ナースなのにメイド服を着ているというのが、斬新なコスプレにさえ思える。
最近、数十体のメイド達が奇襲に遇い、データを初期化されてしまったのだ。
データを初期化されると、最低でも復帰までに一日半はかかる。
未だに復帰に時間を掛けている者もいるくらいだ。
診察室の扉が開いた。
ふらふらとした足取りで現れたのは、紛れもなく大河だ。
そのまま連行されたせいか、寝間着が汗でびっしょりだ。
大河は一番手前のソファーに座る。もうその動きは完全に最終ラウンドまで戦い抜いたボクサーみたいだった。
はぁはぁ、と大河は生温かい息を吐いている。
「白衣大河様」
感情のない声でメイドがそう呼ぶ。
大河はその鈍重な体を持ち上げ、薬の受け付けに向かう。
左右に体を揺らすその姿は、まるで極限まで減量したボクサーのようだ。
大河は薬の受け付けに着く。
メイドに白い紙袋――ではなく白い小瓶に入れられた薬を渡された。中身はピンク色だ。
到底、風邪薬とは思えない。百歩譲っても幼児が飲むような風邪薬がいいところだ。
白い小瓶に付いたラベルには『溺愛増幅液』と書かれていた。
……完全に風邪薬でないことは確かだ。
大河は何の疑いを持たぬまま、いや、疑う余裕などないのか。
その“風邪薬“をその場で開け、グビッと一気飲みした。少量なので一気飲みと言うほどのものでもないのだが。
「うぅ……ちょっと体が軽くなった気がするよ」
「それは良かったです。緊急時の為、今回はそれしか用意できませんでしたが、後ほど別のを持っていきます」
大河は出入口に吸い込まれるように運ばれながら、
「うーん……ありがとうねぇ……」
覇気のない声で礼を言った。
悪夢は、この時既に始まっていた。
相手が感情を持たない機械だから効果が見られなかったが、大河が飲んだ薬。
溺愛増幅液と称されたそれは、性別問わずに自分を性的対象として向ける効果を持つ。
言うなれば、沢山の鯉がいる池に餌を投げ込むようなもの。
たった一切れのパンの耳を賭けて、豪快に水飛沫を上げながら争奪戦を繰り広げる、あの鯉達だ。
大河の長い一日は、ここから始まった。
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