ぱにっく34!大河、お前ってやつは……
シュプリンガーは後ろを振り向き、こう言った。
「おーい、シュプリンガー学園長」
無人の学園長室から返事は返ってこない。当たり前だが。
一つ、無言の間が空く。
直後、大河は冷静に真顔で突っ込む。
「いや、お前だろ」
また一つ、無言の間が空く。
直後、シュプリンガーが後ろを振り向かぬまま、
「まずは中に入るぞ」
と、ぎこちない口調で告げた。
大河はシュプリンガーの後をついていき、入室する。
ゆっくりと扉を閉めて、壁に寄りかかる。
シュプリンガーは反対側の壁に立ち、大河を見た。
「一応聞いておくが、いつから聞いていた」
「全部」
大河は間髪入れずに即答した。語尾に重なるくらいの即答っぷりだ。
シュプリンガーは大きく溜め息をついた。そこからは呆れた様子が窺える。
シュプリンガーは面倒くさそうな目を大河に向けた。
「いいか、今日聞いたことは誰にも言うな。そして忘れろ」
「おいおい、何で上から目線なんだい? まずは立場を把握しないと」
大河はいやらしい笑みを浮かべていた。
「……何が目的だ?」
「目的というか、君から貰った魔法あるじゃん? あれ、とっても不便なんだよねえ」
何故か大河は部下に悪口を言われてそうな上司の口調で話していた。とっても演技臭い。
「それはお前の使い方が悪いからだ。感情にブレが出てる証拠だわい」
「そうだとしても、何で服が破ける? お前は生粋のSか!」
「お前は魔法が使えないからのう。特別な対価で特別に魔法を使っている」
「そんなのが対価だったら魔法使う度に白衣大河の生ストリップショーが始まっちゃうじゃんか! お代は鉄拳制裁でお釣りが返せなくなるよ!」
「なーに、汚い物を見せたやつが天に滅された。それこそが何よりのお釣りだわい」
「お前だよ。その汚い物を付けた野郎は」
大河は曇った表情のまま妬み、睨み付けていた。
対するシュプリンガーはえらく楽観的だ。思うに彼女は少し真剣味に欠けている気がする。
「それで、結局お前は何が目的なんだ」
「だから、もう少し魔法を使いやすくしてくれよ。毎回ギターなんて持ってられないよ」
「ギターなら感情を表現しやすいと思って付けたのに」
シュプリンガーはブツブツと愚痴を呟いていた。
「じゃあ、何だったらよい? さっきのことを口外しないと誓うなら、や、やむえん……お前の好きな対価にしていい」
シュプリンガーは悩ましげにそう告げた。大河は勝ち誇った表情をしている。それがまたえらく腹立たしい表情をしていた。
「じゃあさ――――」
数十後。
大河はご機嫌な様子で学園室から出てきた。
その手には、生徒手帳が握られていた。
大河が帰った後、シュプリンガーは今日一番の大きな溜め息をついていた。
悩ましげに頭を指で押さえる。
「はぁ……一生の不覚だわい」
シュプリンガーは大河に言われた対価の内容を思い出す。
大河は『何でもいいんだな、ふふふ……じゃあ、胸を揉むことを対価にしてもらおうか』と告げていた。
大河は得意の胸揉みを対価にしていたのだ。何とも阿呆らしい発想である。
シュプリンガーは一度は否定したものの弱味を握られているため、泣く泣く了承したのだ。
ただし条件付きでの了承だ。
『魔法を一回使う度に、その……む、胸をだな……もゴホン! 胸を揉みなさい。生徒手帳に回数を記録するから』
胸を揉むこと。
それが魔法を一回使うための対価である。
何ともアホらしい対価になったが、大河は大いに喜んでいた。
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